【解説】林芳正氏はなぜ閣外へ出たのか?「アンケート白紙」の意図と、来年総裁選に向けた“反高市”結集の動き

高市早苗総理による自民党役員・閣僚人事が行われた。今回の人事では、小泉進次郎氏や小林鷹之氏らが留任する一方、林芳正総務大臣が閣外に出ることになった。
高市総理の人事に見えた「らしさ」
この人事についてジャーナリストの青山和弘氏はポイントは、3つあるとして「1つは今までやってきた積極財政、責任ある積極財政路線というのは堅持していく。『私のやってきたことは間違ってないんだ』ということ。もう1つは国会対策がいまいちうまくいかなかった。私の思う通りになっていない。つまり、ずっと予算委員会に縛られたり、高市氏から見ればあまり意味のない集中審議に呼ばれたり、そういった国会対策の責任者である国会対策委員長をすごく若い人に変えた。そして参議院で国会対策を担ってきた参議院幹事長を変えた。こういったところが非常にわかりやすかった。あとは総裁選のライバルをうまく取り込んでいくということ」と解説。
その上で「そんな中で例えば小泉(進次郎)氏や小林鷹之氏は留任した。ただ1人だけ、林総務大臣が外に出た。総務大臣は今度、藤井比早之氏に変わった。つまり林氏だけは野に放つことになった。ここが大きなポイントになった」と続けた。
元衆議院議員の宮崎謙介氏は「すごく高市氏らしい色が出ている」と分析。「高市氏は今、結局国会対策がうまくいかなかったという部分はあると思うが、基本的に見たらほぼ100点に近い状態でやれていたのではないか。つまり骨格のところはうまく回っているので、麻雀で言うとあがり続けているような状況で、下手に攻め方を変えなくていいんじゃないか」と語った。
「留任も結構多かったと思う。それと同時に、結構主要なポストに私の当選同期が今回5人入る。法務大臣の山下(貴司)氏は2回目だが、もともと警察官なので法務省もすごく詳しい。国交省の井林(辰憲)氏も国交官僚だったので、そういう古巣でやっていたり。あとは笹川(博義)氏も環境副大臣をやっていた。それから農水大臣の簗(和生)氏は、農林部会長をやっていた。みんなそれぞれわかっている人たちを安定的に、かつ若手を入れているというところも、高市氏らしさがある。国会対策委員長の村井英樹氏も私の同期だが、非常に能力が高くて、高市氏の意向を汲んで動ける男なので、そこもはめ込んできたなというところ。林氏が出されたのも、まさに喧嘩上等という感じなのかなという、高市氏らしさが出ている感じがする」(宮崎氏)
役職希望アンケートを「白紙」で提出
青山氏は「林氏については、最初から出したかったわけじゃないと思っている」として「高市氏は来年9月に総裁選がまたある。高市氏は今、野党の状況を考えても選挙はあまり怖くない。怖いのは中。自民党内で自分を変えるという動きが起こること。この閣内や役員に入れておくと、やっぱり批判はできない。総理大臣は自分の上司だから。そういうところに置いていくというのが定石だったから、林氏も入れておこうとした」
一方で、今回の人事では全議員を対象に役職希望アンケートが行われたとして「何を希望するか第5希望まで書いてくださいと。国交大臣とか農水大臣とか。しかも理由もちゃんと書くように言って、それを全部読み込むということをやった。それで林氏が何をしたかというと、白紙で出した」と説明。
林氏が希望を出さなかった背景については「来年の総裁選挙に出るためには、そろそろ距離を置いたほうがいい。例えば高市氏は、石破(茂)氏に総務会長になってくれと言われて断って、外にいて、外側から批判的な立場にいたから今総理になっている。林氏はそろそろ外に出たいと思っていた」と言及。
「ただ、自分から『出してください』というのは、やはり総理大臣の顔をつぶすことになるし、それは喧嘩を売った形になる。なので林氏は白紙で出して、最後の人事権者は総理なので『最後はお任せします』と。高市氏は白紙で出てきたので、慌てて『希望を出してください』と電話かけた。その時に『私は希望は出しませんが、最後は高市さんの判断にお任せします』と言って、高市氏が悩むことになるわけだ」
「やっぱり抱え込んだ方が来年の総裁選は無投票の可能性もある。しかし白紙で出すような人を残すと筋が変わっちゃう。今回、全部希望調査を見て決めたんだ、残留になった例えば小泉氏や小林氏も『第1希望です』と言って残すことにしたんだと、会見でも言っている。そのため結局林氏に慰留しなかった。結果的に林氏が外に出ることになった」(青山氏)
反高市集結の可能性
青山氏は「多分、林氏は来年の総裁選挙に出てくる。よほどのことがない限り。今、自民党内には今回、国会対策の方で外された前参議院幹事長の石井準一氏と、石破茂氏、森山裕氏といった前石破政権の幹部や、今回減税反対を明言した河野太郎氏、インナーをやめた小渕優子氏、稲田朋美氏、野田聖子氏といった、高市氏と距離のある、割と中堅の大物議員たちがいっぱいいる。こういう人たちが林氏のもとでまとまると、来年の総裁選、今の(高市政権の)支持率が続いていれば安泰だとも思うがどうなるかわからない。結構火種を残した形になったなというのが、今回の人事の一つの印象でもある」と、来年の総裁選をめぐる党内の動きについて言及した。
宮崎氏は、林氏の動きについて「高市氏としても一番嫌だと思う。実際に例えば、鹿児島の森山裕氏は地元でセミナーを開いて、そこの講師に林氏に来てもらったりしている。そうすると『鹿児島県連は林氏でいく』みたいなメッセージになったりする。そういった戦いがあちこちで起こっているので、林氏も議員票を取りに行かなきゃいけないというのがある一方で、地方票をいかにとるのかというのが総裁選では大事なので。ここから次の総裁選挙までの間に地方行脚をされたら、やっぱり高市氏としては具合が悪い」と指摘して「閣内にいるとご自身がされていた省庁の中の仕事に関しては注目されるけど、ほかの発言で言えば、基本的に高市氏の批判なんかできな。閣内にいれば」と語った。
青山氏は「特に林氏も消費税減税には反対。財政再建派なので。また、親中派とも言われている中で高市氏には批判的だが、やはり総務大臣で外交とか財政のことの批判は絶対にできない。閣内不一致を言われてしまうので。そういう意味では今回距離を置いたことで、そういう存在にもなってくる」と指摘。
小泉氏と小林氏については「(次の総裁選は)やめる可能性が高くなったと思う。ただやっぱり、高市氏がものすごく支持率が下がって、国民からも結構厳しいねという状況になってきたら、出てくる可能性はあると思う。ただ、先ほど言ったように、閣内にいると批判もできないし、基本的に高市氏が言った政策を遂行する立場なので、次は出にくくなったのは事実」として「そういう意味で逆に林氏に反高市的な人たちがぐっと集まってくる可能性が出てきたかなとも思う」と続けた。
青山氏は「林氏は明らかに高市氏と政策が違う」と指摘。「消費税減税は、これで日本の財政は大丈夫なのか。今、日本は予算をいくらでも使うところがある。防災も防衛も医療費もガソリン補助金も。そんな中で減税もして大丈夫なのか、というのが林氏の考え方」「例えば中国とも大変厳しい状況になっている。日中関係。林氏はもっと日中関係を大事にしたい」と分析。
「つまり高市氏の方向性を変えたいという人。変えるためには自分が(総理に)ならなきゃいけないという形で出てくる。例えば高市氏が石破氏の代わりに出てきた時もそういう変え方。つまり自民党の中での政権交代。それを狙うので、それには大義がある、というのが林氏の考え方。だから自民党内というのは、今野党がちょっとだらしなくなってる中で、自民党の中で違う政治が起こる。それの旗頭になりたいというのが今回の動き」と解説した。
(『ABEMA的ニュースショー』より)
