スタイルは優雅、中身はストイック フェラーリの2+クーペ『アマルフィ』は単なるエントリーモデルに非ず【スーパーカー超王が斬る】
フェラーリ・デザインセンター、近年ベストの作品
現在フェラーリのプロダクションモデルラインナップでベーシックラインを担っているのは、2+クーペの『アマルフィ』と、そのオープントップバージョンとなる『アマルフィ・スパイダー』の両車だ。
【画像】スタイルは優雅、中身はストイック!2+クーペ『フェラーリ・アマルフィ』 全153枚
クーペがデビューしたのは2025年7月、スパイダーはそれからやや遅れて今年3月に発表されている。今回はデビューからほぼ1年という時間を経て、待望の日本上陸が実現したクーペをオンロードへと持ち出し、その魅力を探ってみたい。

フェラーリのベーシックラインを担う、2+クーペの『アマルフィ』。 佐藤亮太
アマルフィというモデルを見て、まず誰もが感じるのはそのエクステリアデザインの美しさだろう。
二次元でしかそのデザインを表現し得ない写真では、どうしてもフェラーリとしてはやや控えめな造形としか映らないアマルフィのボディだが、実際に見るそれは実にダイナミックな、そして繊細なライン構成で官能的ともいえる美しさを主張しているのが分かる。
前作のローマと比較すると、フロントグリルが廃止されたことで、ノーズの長さ、そして鋭さがさらに強調されているのもアマルフィの特徴。
実際のデザインはもちろんフェラーリのデザインセンターによるものだが(2+FRではポルトフィーノ以降が、同センターによってスタイリングされている)、個人的には美しさと、そしてもちろんエアロダイナミクスに象徴される機能を、ここまで巧みにバランスさせたアマルフィのデザインは、近年の彼らの作においてはベストと評したい。
ドライビングへの没入感を高めるコクピット
キャビンのフィニッシュもまた素晴らしかった。フェラーリ試乗車の例に漏れず、このモデルにも様々なオプションが装備されており、ベーシックな姿を想像することは不可能に近い。
しかし、高級感やホールド感では完璧の一語に尽きるホワイトを基調とするフル電動バケットシートや、カーボンファイバー製ステアリングホイール、同素材のインストゥルメンタルメーターパネルといったアイテムで包み込まれるコクピットは、これもまたラグジュアリーな雰囲気でありながら、ドライビングへの没入感を大きく高めてくれるから嬉しい。

ステアリングホイール上などに備えられるスイッチの多くが、物理スイッチへと回帰している。 佐藤亮太
そしてローマからアマルフィへのモデルチェンジで大きく変わったのは、ステアリングホイール上などに備えられるスイッチの多くが、確実な操作が可能な物理スイッチへと回帰したこと。一部スイッチはまだ以前の静電容量式のまま残るが、使い勝手が大幅に高まっていることは確実だ。
フロントの3.9L V型8気筒ツインターボエンジンをスタートさせ、まずはややトラフィックの多い市街地の道でアマルフィの走りをチェックする。
V8エンジンのパワー&トルクスペックはそれぞれ640ps、760Nm。最高出力は7500rpmで、最大トルクは3000~5750rpmでフラットに発生する。最大トルクはローマから変化はないが、ローストップが多く低速での走行に終始する場面では、やはりアマルフィの持つ豊かなトルクと、ほぼショックを感じさせずにシフトアップを続ける8速DCTの洗練された動きに好印象を受ける。
まさにグランツーリスモのような感覚
アマルフィで選択できるドライブモードはウエット、コンフォート、スポーツ、レース、ESCオフ。市街地や高速道路をリラックスしてクルージングするにはもちろんコンフォートがベストで、まさにグランツーリスモのような感覚で優雅な時間を過ぎすことができる。
高速道路上でドライブモードをスポーツへと変更し、そのままワインディングロードを目指す。その瞬間に驚かされるのはアクセルペダルの微妙な動きに対してもエンジンレスポンスがさらなる鋭さを増すことで、ここでレブリミットまでの加速を試してみると、+2クーペとはいえそれはやはりフェラーリの血統を受け継ぐモデルであるのだということを瞬時に思い知らされることになる。

3.9L V8ツインターボは最高出力640ps、最大トルク760Nmというスペック。 佐藤亮太
パドルを使ったマニュアルシフトを繰り返せば、そのドライビングの楽しさはさらに高まる。フェラーリ自身がゼロラグコンセプトと呼ぶ、ほとんどターボラグを感じさせない独自エンジニアリングと、選択したギアに合わせてトルクカーブを最適化するバリアブルブーストマネジメントが、感動的なまでに素晴らしい仕事を行っているのだ。
ストイックなまでのエンジニアリングへのこだわり
ドライサンプの潤滑方式を採用し重心低下を図り、さらにエンジンをフロントミドシップするアマルフィは、コーナリングでも完璧といえる動きを見せる。
ワインディングでもボディの大きさを感じさせないのは、マグネライドサスペンションシステムを持つサスペンションと、正確無比なステアリング、そして絶対的な安心感と自然なフィールに徹するカーボンセラミックブレーキが常にベストに機能し、いわゆるマンマシンの一体感を最高のレベルで生み出しているからにほかならない。

アマルフィは、日常的な使用にも抵抗なく使うことができる。 佐藤亮太
もちろんさらにそのエンジニアリングを検証するのならば、アルミニウム製スペースフレームに、さらに軽量な素材を組み合わせ高剛性な基本構造体を完成させたこと、あるいは重量配分の最適化などに、その根本的な理由はある。
フェラーリのストイックなまでのエンジニアリングへのこだわりは、その優雅なスタイルからは想像できないほどなのだ。
最後に日常的な使用にも抵抗なく使うことができる、アマルフィの実用性について触れておこう。2+と称されるだけに、アマルフィには2名分のリアシートが備わるが、これは実際には短時間の移動用、もしくはラゲッジルームと考えるべきだろう。
リアトランクとのスルー機構を持つのは試乗中に気づいた意外な発見で、それを考え合わせれば、ドライバーとパッセンジャーのふたりで短期間の旅行といったシチュエーションには十分に使えるレベルだ。
自動緊急ブレーキやレーンキーピングアシストなど、現代が要求する最新世代の運転支援システム(ADAS)も、もちろんこのアマルフィでは万全の備え。アマルフィはただ単にフェラーリのエントリーモデルとして語られるモデルではない。それを確信した今回のドライブだった。
撮影協力:東京国際交流館

