定年まであと1年だった

写真拡大

「週刊新潮」が詳報した特捜検事の「乱倫」など、次から次へと明るみに出る検察の不祥事。この2年間、そんな“伏魔殿”のトップを務めたのが最高検察庁の畝本直美前検事総長(64)である。8月12日に退任した彼女は、一体何を成し遂げたのか。

 ***

【写真を見る】検察の不祥事といえば……捜査対象と男女関係&愛人と二重生活 「乱倫エース検事」の不倫デート

袴田事件で「到底承服できない」

 就任早々、存在を印象付けたのは、再審で無罪判決が出た袴田事件についての談話だろう。「到底承服できない」などと、袴田巌さんを犯人視するかのような耳を疑う発言に及んだのだ。

 元東京地検特捜部副部長で弁護士の若狭勝氏が言う。

「検察としては、裁判経緯を踏まえ、無罪判決をそのまま受け入れるべきでした。それなのに“本来ならば控訴して争うべきだけれど、袴田さんが高齢であるのを考慮してあえて控訴しない”との談話は、無罪を争うニュアンスをにじませた。組織として、また総長として、市民感覚への配慮が致命的に欠落しています」

定年まであと1年だった

「総長の器では……」

 さる検察OBは、

「この2年間、検察にとって難しい問題が多発しましたが、彼女は検事総長としてのリーダーシップを発揮しなかったように見えます」

 こう前総長を総括する。

「私は数回会ったことがある程度ですが、際立った特色のある人材という印象はありませんでした。なぜわざわざ女性初の総長に据えようとしたのか就任当初から疑問でしたが、案の定ほとんど無為無策だった。総長の器ではなかったと思わざるを得ません」(同)

 元大阪地検検事正の北川健太郎被告による性的暴行事件の被害者、ひかりさん(仮名)は、畝本氏に一縷(いちる)の望みを抱いていたという。

「同じ女性として期待していましたが……」

 女性検事として畝本氏の“部下”だったひかりさんが悲痛な胸の内を明かす。

「畝本氏が就任した当初、同じ女性として性被害の問題に理解を示してくれるのではないかと期待していました。でも、その期待は裏切られました。彼女がトップにいる間、私は復職できないばかりか、辞職にまで追い込まれたのですから」

 ひかりさんを待ち受けていたのは、あまりに無情な現実だった。

「トップである検事総長は、職員の勤務環境の安全を確保する義務を負っています。重大なハラスメントや性被害が起きた際、被害者がどのように傷ついているかを把握し、主治医や産業医などの専門家と連携して、復職まで支援するのが最低限の義務のはずです。しかし私に対してそのような支援は一切行われませんでした」(同)

 庁内ではひかりさんへの心ない誹謗中傷も横行した。

「私は説明を求めて、畝本氏に何度も書面を送り面会を望みましたが、一度もかないませんでした。心配してくれたOBは、部下だった畝本氏の夫に手紙を書いて、彼女との面会を実現させようと骨を折ってくれたのですが、冷淡な拒絶にあっただけでした」(同)

 かくも残酷な“裏切り”の原因を、ひかりさんはこう推し量る。

「女性の幹部であれば、女性の痛みが分かるはずだと思われるかもしれませんが、検察という極端な男社会では違います。幹部へと上り詰めていく過程で、女性も強烈な“男性思考”を身に付け、男社会の論理に過剰に同化してしまうケースが非常に多いのです」

 そういう女性たちは、

「ハラスメントが起きても“あの子が大げさに騒いでいるだけ”と考えます。畝本氏の対応は、そうしたゆがんだ組織の体質をそのまま表したものでした」(同)

 検察の不祥事について、退任会見で「申し訳ない」と述べた前総長。その言葉のなんと空々しいことか。

「週刊新潮」2026年9月10日号 掲載