内閣改造でも留任した赤沢経済産業大臣と小泉進次郎防衛大臣(撮影:長谷川新)

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中東で、日本のエネルギー供給を揺るがしかねない事態が相次いでいる。9月10日、サウジアラビア東部の油田地帯から紅海沿岸のヤンブーへ原油を運ぶ、全長約1200キロの「東西パイプライン」がドローン攻撃を受け、稼働を停止。3カ所のポンプステーションが損傷したことが確認されたのだ。

「政府は今年の8月末時点では、原油の代替調達が進み、10月には再び前年並みを超える調達水準に戻るとの見通しを示していました。しかし、その後に東西パイプラインが稼働を停止したことで状況が大きく変わってしまったのです」

そう話すのは、エネルギー問題に詳しい境野春彦さん(コネクトエネルギー合同会社CEO)だ。

こうした事態を受け、赤沢亮正経済産業相(65)は会見で、東西パイプラインが停止していても、10月に日本へ到着する原油の大半はすでに出航していることなどから、備蓄を追加放出する必要はないとの見方を示した。11月以降については、パイプラインの復旧状況や原油の調達状況を見ながら判断するとしている。パイプラインの完全復旧には5~6週間かかるとの見方がある一方、早期の部分再開を目指す動きもあり、先行きは不透明だ。

ホルムズ海峡に続き“頼みの迂回路”も寸断

しかし境野さんは、11月以降も見据えれば楽観はできないと指摘する。

ホルムズ海峡を原油タンカーが事実上通れなくなるなか、東西パイプラインは海峡を避けて紅海側へ原油を運び出す重要な迂回ルートでした。イラン戦争後は世界全体の原油供給量の約4~5%に相当する日量400万~500万バレルを運んでいたとされます」

ところが、紅海側でもイエメンの親イラン武装組織フーシ派による脅威が高まり、東西パイプラインで紅海へ運んだ原油を、日本などアジア市場へ向けて外海に運び出すバブ・エル・マンデブ海峡の航行リスクも増していた。

「そのため、出光興産などは東西パイプラインでヤンブーまで運んだ原油を、バブ・エル・マンデブ海峡を避け、アフリカ南端の喜望峰を回って日本へ運ぶルートに切り替えていました。

ただ、喜望峰を回れば大幅な遠回りになります。パイプラインが攻撃される前に出た原油は時間差でこれから日本に到着しますが、今度はその原油をヤンブーまで運ぶパイプライン自体が止まった。つまり、政府がこれまで想定していた供給見通しの前提が変わってしまったわけです」

■頼みの米国産原油も世界的な争奪戦に

米国がイランを攻撃する今年2月末まで、日本は原油輸入の9割以上を中東に依存していた。その後は米国などからの代替調達を急速に増やしてきた。

しかし、米国産原油への依存を強めることにもリスクがあるという。

「米国の戦略石油備蓄は9月11日時点で約2億8500万バレルと、歴史的な低水準にあります。そんななかで各国が米国産原油に殺到すれば、世界的な争奪戦になります。日本だけに優先して出してくれるわけではありません。日本にはまだ備蓄がありますから、すぐに石油がなくなるという話ではないが、いま一番怖いのは、さらなる価格の高騰です」

中東情勢の緊迫化で、原油価格だけでなくタンカーの運賃や保険料も上昇している。

「遠いところから高い原油を買えば、運賃も保険料も上がる。そこに円安も重なります。この状況が続けば、どれだけ物価が上がるのか。本気で考えなければいけません」

9月15日には、欧州で取引される一部の現物原油が1バレル130ドルを突破。18日現在、指標となる北海ブレント原油先物は約104ドルとやや下落したものの、イラン戦争前と比べ約5割高い水準が続いている。

境野さんは、原油高を補助金で抑え続ける政策にも疑問を投げかける。

「いつまでガソリン補助金による支援を続けるのか。原油価格がさらに上がれば、価格を抑えるための財政負担も膨らみます。それをいつまで続けられるのかという問題です」

■「大丈夫」ではなく、節約を呼びかけるべき

一方で赤沢経済産業相は、「仮に東西パイプラインの復旧に一定の時間を要しても、10月の供給には対応できる」との見方を示している。

パイプラインが早期復旧したり、中東情勢が緩和したりする可能性もある。一方、境野さんが訴えるのは、“最悪のケース”も想定した危機管理だ。

「政府は楽観的な見通しを語るだけでなく、本当の状況をきちんと伝えるべきです。1973年の石油危機では、省エネ意識が広がり、それが省エネ技術の発展にもつながりました。

ガソリンを節約する。在宅勤務を増やす。公共交通機関を積極的に利用する。それぐらいは政府が呼びかけてもいい。

危機をおくびにも出さず安心感を与えるのではなく、いま何が起きているのかを共有し、エネルギーを大切に使う方向へ社会を変えていくべきだと思います」