【宮本 建一】営業利益220億円が4年で消えた…本業の「人材派遣は黒字」なのに、なぜパソナは「2期連続赤字」に陥っているのか

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パソナを襲う「2期連続赤字」の波乱

2022年5月期に220億円あった営業利益が、2026年5月期には11億円の赤字に--。「ニジゲンノモリ」や「HELLO KITTY SMILE」が立ち並ぶ淡路島プロジェクト、そして本社機能の一部移転でも大きな話題を呼んだ、パソナグループ(以下、パソナ)。いま、その決算が波乱を迎えています。

ただし、主力事業が不振なわけではありません。人材派遣・BPOは直近期も約100億円の営業利益を稼ぎ、キャリアソリューションも約42億円を確保しています。それでも連結では、2期連続の営業赤字に陥っています。

しかもパソナは2024年、稼ぎ頭だった連結子会社「ベネフィット・ワン」を第一生命ホールディングスに売却し、約1120億円もの株式売却益を計上しました。手元資金は潤沢です。それでも、赤字なのです。

なぜ、利益を稼ぐ子会社を手放したのか。得た1100億円はどこへ向かうのか。そして、各事業が稼いだ利益は、どこで消えているのか?

本稿では、複雑に絡み合うパソナの収益構造と、ベネフィット・ワン売却の経緯、「淡路島の地方創生事業」の現在地を紐解きます。

営業利益220億円が、わずか4年で「赤字」に転落

コロナ禍における特需に子会社の売却、その後の連続赤字とパソナの直近5期の業績は波乱に満ちています。ただし、メインである人材派遣においては順調に推移しています。では何が業績を悪化させているのか、以下で見ていきます。

パソナグループの業績は、この数年間で大きく変化しました。

2022年5月期は、前期からの企業や官公庁からのBPO需要を取り込み、売上高は前期比9.4%増の3660億円。BPOの増収やコスト抑制もあり、営業利益は10.7%増の220億円、最終利益は27.1%増の86億円となりました。

翌2023年5月期も、BPOやアウトソーシング、地方創生、海外人材サービスなどが伸長したため、売上高は前期比1.8%増の3725億円となり、過去5期では最高水準となりました。

一方で営業利益は143億円へ減少します。新型コロナ関連業務の終了や再就職支援需要の減少に加え、旧JTBベネフィットとのサービス統合に伴う重複コスト、大型プロモーション費用、東京オフィス移転に伴う費用などが利益を圧迫しました。

2024年5月期も減収減益となり、売上高は3567億円、営業利益は67億円まで低下。コロナ対策関連の特需縮小などが影響しました。もっとも、同年の最終利益は958億円へ急増しています。これは後述するベネフィット・ワンの株式売却による巨額の特別利益が要因です。

そしてベネフィット・ワンが連結から外れた2025年5月期は、売上高3092億円、営業損失12億円。2026年5月期も売上高3084億円、営業損失11億円となり、2期連続の営業赤字となりました。2022年5月期に220億円あった営業利益が、数年で赤字に転じたことになります。

主力の人材派遣は順調…利益はどこへ消えたのか

直近2期において、営業利益が赤字計上をしていますが、実は人材派遣では順調に利益計上を行っています。パソナの営業赤字は、主力の人材事業が不振だから生じているわけではありません。

2026年5月期にはBPO・人材派遣をあわせた事業では約100億円を、キャリアソリューションも約42億円の営業利益を確保しています。

一方、地方創生・観光事業では約15億円の営業損失を計上し、加えて、グループ管理費用や新規事業のインキュベーションコストなどを含む調整額が約146億円に達しており、連結において約11億円の営業赤字となっています。

つまり、各事業で稼いだ利益が、地方創生事業の赤字や全社コストによって相殺され、連結では営業赤字に陥っている構図となっています。

利益率20%超の“ドル箱”をなぜ手放した? 「ベネフィット・ワン」売却の真相

パソナは2024年3月に、高い収益力を持っていた連結子会社である株式会社ベネフィット・ワン(以下、ベネフィット・ワン)の株式を売却しています。

「ベネフィット・ワン」と社名を聞いても、すぐにはピンとこない読者もいるかもしれません。しかし、勤務先の福利厚生サービスとして「ベネフィット・ステーション」を使った経験がある人なら、身近に感じるかもしれません。

ベネフィット・ステーションは、企業が従業員向けに導入する総合福利厚生サービスです。飲食店やレジャー施設、ショッピングの割引だけでなく、eラーニング、育児・介護、引っ越しなど、生活のさまざまな場面で利用できる優待を提供しています。

この売却は業績不振によるものではなく、事業ポートフォリオの見直しや企業価値向上を目的とした判断です。ここでは、ベネフィット・ワンの成り立ちと業績、売却に至った背景、ならびに、ベネフィット・ワンの現状を確認します。

パソナが生んだ「最強の優等生」

株式会社ベネフィット・ワンは、パソナが外部から買収した会社ではありません。

企業の従業員向けに各種サービスメニューを割引価格で提供する会員制の福利厚生代行サービス等を行うことを目的に、パソナ内のベンチャー制度により「株式会社ビジネス・コープ」として1996年3月に設立されました。

2001年に現在の社名へ変更し、2004年にはJASDAQへ上場。その後は福利厚生にとどまらず、ヘルスケアやインセンティブ、購買・精算代行などへ事業領域を広げ、2022年には総会員数が1000万人を突破しました。

業績面でも高い収益力を維持しており、2022年3月期には売上高383億円、営業利益127億円を計上し、営業利益率は33%を超えていました。

売却直近期である2024年3月期は売上高389億円、営業利益76億円まで低下したものの、営業利益率はなお20%近くを確保していました。

このように、パソナにとってベネフィット・ワンは、長年育ててきた、高い収益性を持つ重要な連結子会社だったといえます。

エムスリーと第一生命の争奪戦

しかし、パソナは2024年5月23日に、第一生命ホールディングス株式会社(以下、第一生命)にパソナの保有するベネフィットワンの全株式を売却します。

実は、最初から第一生命ホールディングスへの売却が決まっていたわけではありません。

2023年11月、パソナはエムスリー株式会社(以下、エムスリー)によるベネフィット・ワンへのTOBに対して、保有株式を応募する契約を締結しました。当時の公開買付価格は1株1600円でした。

ところが、その後、第一生命が対抗提案を提示します。最終的な公開買付価格は1株2173円。ベネフィット・ワンの完全子会社化を前提とした取引スキームなども含めて検討した結果、第一生命案が採用されました。

パソナは第一生命からの提案について「経済合理性が認められ、当社の企業価値向上に資する」と判断したと説明しています。2024年5月23日に株式譲渡が成立し、ベネフィット・ワンは連結対象から外れました。

この売却によって、パソナは1120億円の関係会社株式売却益を計上しています。

売った側は赤字、売られた側は絶好調

最後に、第一生命傘下となったベネフィット・ワンの業績はどのように推移しているのかについて見ておきます。直近2期の業績は以下の通りです。

パソナが売却した後も、ベネフィット・ワンの収益力が崩れたわけではありません。第一生命傘下入り後の同社は、順調に推移しているといっていいでしょう。

2025年3月期は売上高、利益とも前期を下回っていますが、翌2026年3月期は譲渡時近くまで回復し、あわせて会員数が1000万人を超えています。

高収益子会社を売却したパソナは、2期連続営業赤字、一方で、売却されたベネフィット・ワンは引き続き高収益を維持といった好対照な業況となっています。

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【つづきを読む】キティちゃん、ゴジラ投入で売上は倍増したが…それでもパソナの「淡路島」事業が赤字から抜け出せないワケ

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