【堀田 和義】全人口のたった0.3%でも所得税収は24%…知られざるインドのエリート集団「ジャイナ教」

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〈虫一匹〉、それどころか〈微生物〉でさえも殺してはならないという不殺生の教義を持つ「ジャイナ教」の信者たち。ストイックすぎるユニークな戒律、その背景となる思想とは…!?

歴史、教義から一般信徒の生活まで、興味尽きないユニークな宗教の〈実態〉日本における研究の第一人者が解説!新書初の本格的ジャイナ教の解説書!!

(本記事は、堀田和義『ジャイナ教』の一部を抜粋・編集しています)

ジャイナ教の社会的影響力

ジャイナ教という宗教は、今から2500年ほど前にインド北東部(現在のビハール州あたり)で誕生した。ジャイナ教が誕生した時代と地域は、日本人に馴染みの深い仏教とほぼ同じである。

仏教はアジア各地に広まったが、インドでは13~14世紀頃に衰退してしまった。ジャイナ教の伝統は、白衣派(白い衣を身に着ける者たち)と空衣派(空間を身に着ける者たち、すなわち裸形の者たち)の二派に大きく分かれ、さらなる枝派を生みながらインドで途絶えることなく受け継がれてきたが、インド以外の地域にはほとんど広まることがなかった。

2011年のインドの国勢調査によれば、インドの全人口に対して、ヒンドゥー教徒が79・80パーセント、イスラム教徒が14・23パーセントを占め、キリスト教徒の2・30パーセント、シク教徒の1・72パーセント、仏教徒の0・70パーセントに続いて、第六位のジャイナ教徒は0・37パーセントとなっている。

その数は、イギリスの植民地支配からの独立後にアンベードカルが復活させた仏教徒の約半分であり、インドの宗教の中では圧倒的な少数派に属している。その一方で、ジャイナ教の社会的影響力は非常に大きいと言われている。

識字率94% ジャイナ教徒が示す知識の力

例えば、インドの全人口の0.37%に過ぎないジャイナ教徒が、インドの所得税収全体の24%を納めているといった報道もしばしば見かける。このような現象の背後にある要因のひとつとして、ジャイナ教徒の識字率が、インドの他の宗教と比べて突出している点も注目に値する。

インド全体の識字率が64.8%であるのに対し、ヒンドゥー教徒は65.1%、イスラム教徒は59.1%、キリスト教徒は80.3%、シク教徒は69.4%、仏教徒は72.7%となっている。

それに対して、ジャイナ教徒の識字率は94.1%で群を抜いており、その数字は平均を大きく上回っているのみならず、第二位のキリスト教徒をも大きく引き離している。

ジャイナ教において古くから学問や知識が重視されてきた点が大きく影響しているであろうし、商業などに携わる者が多いことも、識字能力を重視する姿勢を後押ししただろう。他に、ジャイナ教徒の女性の就学率が高いことなども考慮するならば、少数派が社会で生き残っていくうえで、教育の重要性にいち早く気づいていた可能性が考えられる。

非暴力の思想家ガーンディーを生んだ地域の秩序

また、インド独立運動の英雄ガーンディーは、イギリスの植民地支配に非暴力(アヒンサー)によって立ち向かったことで有名だが、それにはジャイナ教の大きな影響があったと言われている。ガーンディーが生まれたグジャラート州は、インドの中でもジャイナ教徒が最も多い地域のひとつとして知られている。

ガーンディーがジャイナ教の影響を受けたことは、自伝の記述からも確かめられる。彼は自らが大きな影響を受けた人物として、ロシアの文豪レフ・トルストイ、イギリスの思想家ジョン・ラスキンと並んで、ジャイナ教の神秘主義者・改革者であるラージャチャンドラの名前を挙げている。

彼らのストイックさと経済的な成功の間には、逆説的な親和性があると考えられる。ジャイナ教の在家信者は、不殺生を中心とする戒律を厳格に守るため、殺生の機会の少ない職業に就くことが好ましいと考えられている。そのため、企業家や商業・金融業、近年では、IT産業などに従事する者が比較的多いとされる。

そして、「真実を語り、偽りを語らない」という不妄語の戒律を遵守することで信頼を得て、それぞれの分野で成功し、財を成す者も多い。さらには、所有財産を一定量に制限すること、布施することも戒律の中に含まれている。ジャイナ教の聖地などに見られる壮麗な寺院建築の背後には、このような戒律の存在があると考えられる。

ジャイナ教の大きな影響力は、現代だけの話ではない。インドの長い歴史においても、王族などの有力者の中にはジャイナ教に共感を覚えた者が多くいたため、インド社会において非常に大きな位置を占めてきたのである。

インドの全人口のわずか0.37パーセントという少数派にもかかわらず、インドの所得税収入全体の24パーセントを占め、インド社会において特異な存在感を示すジャイナ教教徒。

本書の引用元『ジャイナ教』では、歴史、教義から一般信徒の生活まで、興味尽きないユニークなジャイナ教の実態を徹底解説している。

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