近年は良好な口腔(こうこう)環境の維持が健康と密接に関わっていることがわかっており、健康な歯の本数が良好な健康状態や死亡リスクの低下と関連しているとの研究結果や、歯が少ない人は認知機能の低下リスクが高いとの研究結果が報告されています。新たに九州大学の研究チームが発表した研究では、60歳以上の高齢者を10年間追跡して歯周病認知症との関連性を調査しています。

Periodontal Status and the Risk of All‐Cause Dementia, Alzheimer's Disease and Vascular Dementia in a Community: The Hisayama Study - Furuta - Journal of Clinical Periodontology - Wiley Online Library

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jcpe.70185

Bleeding Gums Linked to 61% Higher Alzheimer's Risk in 10-Year Study : ScienceAlert

https://www.sciencealert.com/bleeding-gums-linked-to-61-higher-alzheimers-risk-in-10-year-study

近年はワクチンや感染症が認知症の発症リスクに関わっていることが知られています。たとえば2023年には「帯状疱疹(ほうしん)ワクチンが認知症予防に効果的かもしれない」との研究結果が報告されたほか、2025年の研究では「ワクチン接種や抗生物質の服用」が認知症リスクの低下と関連していると報告されました。また、重度の感染症で入院治療を受けた人は、その後の人生で認知症になるリスクが高いとの研究結果も報告されています。

重度の感染症になった人はその後の人生で認知症になるリスクが高いとの研究結果 - GIGAZINE



九州大学の歯学研究者である古田美智子准教授らの研究チームは、福岡県に住む60歳以上の被験者1396人を10年間追跡調査して、歯茎からの出血や歯肉の退縮といった歯周病の症状と、認知症の発症リスクとの関連性を調査しました。

被験者の内訳は男性が622人、女性が774人で、いずれも2007~2008年のベースライン時点では認知症を発症していませんでした。10年間の追跡調査中に男性102人、女性165人の合計267人が認知症を発症したことが確認されています。

被験者の歯の健康状態と認知症の発症リスクを分析した結果、歯茎からの出血が最も多い上位25%の被験者は、出血が最も少なかった下位25%の被験者と比較して、10年以内にあらゆる原因の認知症を発症するリスクが56%高いことが判明。歯茎からの出血が最も多い被験者は、アルツハイマー病を発症するリスクも61%高いことがわかりました。

また、あらゆる原因による認知症の発症リスクは歯肉の退縮が最もひどい被験者で59%高く、歯と歯茎の隙間が最も深い被験者で72%高いことも報告されています。日本における歯周病の罹患(りかん)率は15~24歳で20%、25~34歳で30%、35~44歳で40%、45~54歳で50%、55歳以上で55~60%に達していることを考えると、これは深刻な事態です。



なお、今回の研究はあくまで観察研究であり、「歯周病認知症アルツハイマー病の原因である」という因果関係を証明するものではありません。その上で研究チームは、「これらの研究結果は、歯周病の悪化が認知症の発症に何らかの役割を果たしている可能性を裏付けるものです」と述べ、歯周病の改善が認知症リスクの軽減に役立つ可能性があると主張しました。