「テレビで見せる姿とは別ですね」森本レオさん死去後、SNSで真偽不明の“体験談”が急拡散…故人への名誉毀損は成立する?
著名人が亡くなると、その功績だけでなく、生前の評判まで掘り起こされることがある。では、真偽を確かめられない話が急速に広がった場合、投稿した人や拡散した人はどこまで責任を問われるのか。故人の名誉をめぐる法律上の扱いを弁護士に聞いた。
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真偽不明の評判がSNSで拡散
俳優でナレーターの森本レオさんが9月4日、83歳で亡くなった。所属事務所が11日に発表した。
所属事務所によると、死因は「原因不明の突然死」。葬儀は家族のみで執り行われ、お別れの会などは予定していないという。
森本さんは、ドラマ『ロングバケーション』『ショムニ』(ともにフジテレビ系)など数多くの作品に出演。アニメ『きかんしゃトーマス』やバラエティー番組『クイズプレゼンバラエティー Qさま!!』(テレビ朝日系)などでナレーションを担当し、穏やかで親しみやすい語り口でも広く知られていた。
訃報が公表されると、SNSには森本さんの死を悼む声が相次いだ。一方で、生前の言動に関する否定的な投稿も次々と現れた。
過去の報道を紹介するものに加え、北海道のレストランでホールスタッフとして森本さんを接客した際の体験談や、高円寺の中華料理店でアルバイト中に接客した際の体験談なども投稿されている。
ほかにも、高円寺駅周辺で遭遇したという投稿や、アルバイト先での対応を振り返る投稿、知人から聞いた話を紹介する投稿などが相次いだ。
これらの投稿に対し、「テレビで見せる姿とは別のイメージですね」「人は見た目や雰囲気じゃわからんものですね」と、内容を事実として受け止めた反応が寄せられている。その一方で、「誰も真偽を疑わないのが怖い」と、投稿を額面通りに受けとる状況を懸念する声もある。
確かに、森本さんをめぐっては、過去にも女性関係をめぐり、当事者が実名で告発した記事が週刊誌に掲載されたことがある。訃報をきっかけに、それらの報道が改めて注目された面もあるだろう。
生きている人と故人での“名誉棄損”の扱い
しかし、現在SNSに書き込まれているのは、過去に報道された内容だけではない。投稿者と森本さんとの接点を第三者が確認できない個人的な体験談や、「知人から聞いた」とする伝聞まで広がっている。
その真偽を確かめることは難しく、本人はすでに亡くなっているため、反論したり事情を説明したりすることもできない。
「亡くなった途端に、何を言ってもいいのか」と疑問視する声がある一方、「亡くなったからといって、生前の問題を語ってはいけないのか」という意見もある。
では、法律上、故人の名誉はどのように扱われるのだろうか。弁護士の阿部由羅氏に聞いた。
阿部氏によると、故人の社会的評価を低下させる内容をSNSに投稿した場合、「投稿によって摘示した事実が虚偽である場合に限り、投稿者は『名誉毀損罪』によって処罰される可能性があります(刑法230条2項)」という。
生存している人に対する名誉毀損罪は、投稿内容が真実でも成立する場合がある。ただし、公共の利害に関する事実について、公益を図る目的があり、真実性が証明された場合などは、刑法230条の2により処罰されない。一方、故人の場合は、虚偽の事実を示した場合でなければ処罰されない。故人と生存者とでは、投稿内容の真偽の扱いが異なるのだ。
ただし、死者についてなら誰も責任を追及できないわけではない。
名誉毀損罪は、被害者側の告訴がなければ起訴できない「親告罪」だが、本人が亡くなっている場合、その親族または子孫による告訴が認められている。
また民事上も、投稿者が遺族に対して慰謝料の支払義務を負う可能性があるという。
「遺族が個人に対して有する敬愛追慕の情は、人格的利益として保護に値すると解されているためです」
問題のある内容を自ら書き込まなくても、それをリポストして拡散した場合はどうか。
阿部氏は「名誉毀損に当たる他人の投稿を再投稿しただけでも、再投稿をした者に対して不法行為に基づく損害賠償を命じた裁判例があります」と説明する(大阪地裁令和元年9月12日判決など)。
リポストしただけでも法的責任を問われる可能性
特に、中立的または批判的なコメントを付けずに再投稿した場合は、本人に賛同する意思がなくても、元の投稿に賛同したものと受け止められ、不法行為が成立する可能性があるという。
亡くなったからといって、生前の問題までなかったことになるわけではない。ただ、本人が反論できない以上、SNSに流れてきた体験談や伝聞を、そのまま事実として受け取るのは危うい。真偽不明の“悪評”を本当に広げてよいのか、ボタンを押す前に一度立ち止まって考えたい。
取材・文/集英社オンライン編集部

