「もっと早く帰省すればよかった」…父の四十九日から10ヵ月後、息子が驚愕した〈年金月12万円〉79歳母の異変
夫を亡くし、ひとり暮らしになった79歳の母。遠方で暮らす息子は母の「大丈夫よ」という言葉を信じていました。ところが、夏の連休に久しぶりに帰省した息子は、母の変わり果てた様子に絶句します。10ヵ月の間に起きていた“異変”とは?
綺麗好きだった母が…認知症とは違う「別の原因」
「最初は認知症になったんじゃないかと思いました。でも、違ったんです」
東京で暮らす亮介さん(53歳・仮名)の父が亡くなって約1年。79歳の母・和子さん(仮名)は、地方にある実家でひとり暮らしをしていました。
電話やLINEでは、定期的に連絡を取っていたといいます。
「何か困っていることはない?」
「大丈夫よ。元気だから」
母はいつもそう答えていました。仕事もあり、遠方ということもあって、亮介さんが実家に帰ったのは父の四十九日が最後。母の言葉を信じ、「ひとまず大丈夫なのだろう」と思っていました。
しかし夏の連休、約10ヵ月ぶりに実家へ帰省した亮介さんは驚愕しました。
父の遺品が手つかずのまま残り、郵便物や書類、買い物袋などがテーブルや床に積み重なっています。以前はきれい好きで、身なりに気を配っていた母の髪は整えられておらず、服もくたびれ、瘦せたように見えました。
「母さん、病院で見てもらう」
直感的に認知症を疑った亮介さん。問診や認知機能の検査を受けましたが、医師からは「現時点で認知機能に大きな問題はみられません」と説明されました。
ほっとした亮介さんでしたが、母の異変が解決したわけではありません。改めて母に尋ねると、ぽつぽつと話し始めました。
「お父さんが亡くなってから、お金のことばかり考えるようになっちゃって……」
預貯金については、息子も具体的な金額までは把握していませんでした。家計は長年、父が管理していたからです。父の死後、母が受け取れる年金は月12万円ほどに。さらに通帳を確認すると、残っていた預貯金は約300万円だったといいます。
「それでも遺族年金があるから、何とかなると思っていたの。でも、こんなに少ないなんて」
夫が亡くなったからといって、夫が受け取っていた年金がそのまま妻に引き継がれるわけではありません。遺族厚生年金の金額は、原則として亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3をもとに計算されます。
また、65歳以上で自身の老齢厚生年金を受け取っている場合には、遺族厚生年金との調整もあります。さまざまな条件により、夫婦2人分の年金で暮らしていた世帯では、夫が亡くなったあと、年金収入が大きく減るケースもあるのです。
「貯金も少しずつ減ってきてしまってね。この先どうやって暮らしていけばいいんだろうって考えていたら、何もする気になれなくなっちゃったの……」
経済的な不安が重なり、母は心にも生活にも余裕を失っていました。
「もっと早く帰っていれば」…母と一緒に始めた“家計の整理”
事情を知った亮介さんは、なぜもっと早く帰らなかったのかと、後悔しました。
「大丈夫」と言い続けていた言葉の裏には、「心配をかけたくない」という母心があった。来ようと思えば来れたのに、母の言葉を楽観的に受け止めていたことに気づいたのです。
「よし、母さん。毎月いくら入ってきて、いくら出ていくのか一緒に整理してみようか」
そう言って、母の通帳や請求書などを一つずつ確認していきました。まず不要な保険を解約し、通信契約も見直すことに。そして、食費は3万円、光熱費は1.5万円、医療費は1万円、日用品は5,000円など、年金の範囲内に収められるよう、予算を立てました。
「予算が決まっていれば、そのなかで頑張ろうと思えるわね。……なんとかやっていけるかしら」
母は少しだけ表情を和らげました。
さらに、地域包括支援センターや年金事務所にも相談し、現在受け取っている年金の内容や、利用できる制度について確認しました。そのなかで知ったのが「年金生活者支援給付金」です。
年金生活者支援給付金は、所得が一定基準以下の年金受給者を対象に、年金に上乗せして支給されるもの。老齢年金生活者支援給付金の場合、65歳以上で老齢基礎年金を受給し、世帯全員が住民税非課税であることなどが主な要件です。
「少しでも使える制度があるなら、ちゃんと調べてみよう」
亮介さんは母と一緒に確認しながら、一つずつ手続きを進めていくことにしました。
それでも、きっと母は我慢してしまうこともある。貯金が減ることを恐れて、病院に行くのを迷ったりすることもあるかもしれない--。そう感じた亮介さんは、母が住み慣れた家で暮らし続けられるよう、毎月数万円の仕送りすることに決めました。
そして、以前よりこまめに連絡を取り、3ヵ月に一度は帰省することを約束したのです。
「電話では元気そうだったので、安心してしまっていました。もっと早く帰っていれば、と思います」
亮介さんはそう振り返ります。
親は、子どもに心配をかけたくないという思いから、「大丈夫」と言うことがあります。直接様子を見れたらベストですが、仕事や距離などの事情で頻繁に帰省できない人もいるでしょう。その場合は、自治体の相談窓口などを頼るという方法もあります。すべてを家族だけで抱え込む必要はありません。
「大丈夫」という言葉の裏で、親がひとりで不安を抱えていないか。生活費や年金のことも含め、元気なうちから話せる関係をつくっておくことが、離れて暮らす親を守るための備えになるのかもしれません。

