〈「割烹こめを」78人食中毒〉秋の大型ラーメンイベントへの影響は? 「冷やし=危険」なわけではない…識者が語る“安全の条件”

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麻布十番納涼まつりで起きた78人の集団食中毒。原因食品は「冷やし蟹ラーメン」だった。これから本格化する秋の大型ラーメンイベントを前に、屋外提供のリスクと安全対策を専門家に聞いた。

【画像】年間600杯のラーメンを食べる識者が今も印象に残っているという屋外イベントの冷やしの一杯

麻布十番まつりで78人食中毒…秋の大型ラーメンイベントへの影響は?

8月22、23日に東京都港区で開催された「麻布十番納涼まつり」で、格闘技イベント「BreakingDown」への出場でも知られる“闘う料理人”として知られるこめお氏が料理長を務める「割烹こめを」が販売した「冷やし蟹ラーメン」を原因とする集団食中毒が発生した。

港区は9月3日、原因食品を8月22、23日に調理し、イベント会場で販売された「冷やし蟹ラーメン」、原因物質をサルモネラ属菌と特定。食品衛生法第6条第3号に違反するとして、「割烹こめを」に9月3日から9日まで7日間の営業停止を命じた。公表時点の患者数は78人だった。

さらに港区は9月7日、今回の食中毒を受け、体調不良者を対象とした専用の健康相談窓口を設置したほか、被害に遭った人が弁護士に無料で相談できる臨時の法律相談窓口を設けると発表した。

区によると、営業停止命令後も、みなと保健所が店舗の営業停止状況を継続的に確認し、従業員への食品衛生講習会を実施。事業者側にも、体調を崩した人への誠実な対応を求めているという。

一方、今回の一件をもって「冷やしラーメンそのものが危険」と考えるのは早計だ。

秋は全国各地でラーメンイベントが開催されるシーズンでもあるが、今回の集団食中毒によって、これから本格化する屋外型の大型ラーメンイベントに影響はあるのだろうか。

ラーメンライターの井手隊長は、今回のケースと、通常の大型ラーメンイベントを分けて考える必要があると話す。

「ラーメンイベントにおいては、主催者側が出店においての注意事項をしっかり伝え、お店側がそれをしっかり守れるか、というシンプルな話です。毎年恒例の『ラーメンEXPO』や『東京ラーメンフェスタ』や『大つけ麺博』といった大型ラーメンイベントにおいてはその点はかなり慎重に行われているので、安心して足を運ぶようにしてほしいです」

もちろん、大型イベントであること自体が食品の安全を保証するわけではない。東京都も屋外イベントでの食品提供について、食材の温度管理や衛生的な保管、設備などの要件を定めている。

今秋も、11月21日から大阪・万博記念公園で西日本最大級のラーメンイベント「ラーメンEXPO」が開幕し、全国から計60店舗が集結する。

東京でも10月30日から11月3日まで、駒沢オリンピック公園で全国のご当地ラーメンや人気店が集う日本最大級の屋外ラーメンイベント「東京ラーメンフェスタ2026」や10月10日(土)から11月15日(日)まで新宿・大久保公園で「大つけ麺博 presents ラー1グランプリ2026」が開催される。

「冷やしラーメン=危険」ではない…本当に重要なのは衛生管理

屋外イベントでは、通常の店舗とは異なる設備や環境で、多数の料理を短時間に提供することになる。そのため、主催者側が衛生管理や調理工程についてルールを定め、出店者側がそれを守ることが安全なイベント運営の基本となる。

今回、原因食品となったのが「冷やし蟹ラーメン」だったことから、「冷たいラーメンは屋外イベントに向いていないのではないか」と感じる人もいるかもしれない。

しかし、「冷たい」というだけで食中毒の危険性が決まるわけではない。そもそも屋外のラーメンイベントで、冷やしメニューを提供すること自体は難しいのだろうか。

「シンプルな冷やし中華、冷やしラーメンにおいては規則を守っていれば問題なく提供できると思います。ただ、使う食材に対する知識はお店側が持っておくべきであり、リスクのないように提供してほしいと思います」

重要なのは「冷たいか、温かいか」という二者択一ではなく、どのような食材を使用し、それをどう保存し、どのような工程で調理・提供するかだ。

今回、港区が原因物質として特定したサルモネラ属菌は、鶏や豚、牛などの動物の腸管のほか、自然界にも広く分布している。港区によると、感染すると6~72時間の潜伏期間を経て、腹痛や下痢、おう吐、発熱などを引き起こすことがある。

一方、屋外イベントで冷やしラーメンが提供された例もある。井手隊長に屋外イベントで食べた中で印象に残っている冷やしメニューを聞いた。

「『中野ラーメン祭2025』で食べた「ゴールデンタイガー」のAKM(アブラかけめん)ですね。あと、2024年の「中野いってらっしゃいフェス THE冷やしラーメン」が冷やし限定でかなり珍しかったですが、イベントで冷やしを食べることは基本的にまれです」

大型のラーメンイベントでは、温かいラーメンが中心となるケースが多く、冷やしメニューはまだ珍しい存在だという。

麻布十番納涼まつりで起きた今回の集団食中毒は、多くの人が集まる屋外イベントにおいて、食品衛生管理がいかに重要かを改めて示す出来事となった。

ただし、一つの事故を理由に「屋外のラーメンイベントは危険」「冷やしラーメンは危ない」と一般化するのは適切ではない。

主催者が衛生管理のルールを明確にし、出店者が使用する食材の特性やリスクを理解したうえで、そのルールを確実に守ること。

当たり前に見えるその積み重ねこそが、多くの客が安心して一杯のラーメンを楽しむための大前提となる。

取材・文/集英社オンライン編集部