「お義母さん、もう援助は結構です」…〈世帯年収880万円・35歳主婦〉住宅購入に孫の祝い金、“お金を出す親”から距離を置いたワケ
親からの金銭的な援助は、家計にとってありがたいもの。ところが、「お金を出しているのだから」と夫婦の家計や子育てにまで口を出されれば、話は別です。善意だったはずの援助が、思わぬ家族間の亀裂を生むことも--。
夏休みを前に割れた夫婦の意見「節約したい」「旅行に行きたい」
京都に住む綾乃さん(仮名・35歳)は、夫の亮介さん(仮名・37歳)と5歳と3歳の子どもの4人暮らし。亮介さんは会社員で年収560万円、綾乃さんは時短勤務で320万円。住宅ローンを月12万円払いながらの生活です。
義母との関係は良好でしたが、以前から夫や子育てに対する「過干渉ぶり」が気になっていました。
住宅購入の際にはまとまった援助を、孫の誕生日や入学の節目にはお祝いをくれる。子どもの衣服やおもちゃもたびたび買ってくれ、「何かあったらいつでも言ってね」と声をかけてくれます。
綾乃さんも、義母の親心には感謝していました。だからこそ、多少の口出しには言い返せず、飲み込んできたのです。
しかし、夏休みを前に夫婦で予定を話し合っていたある日、長年の“違和感”が一気に表面化します。
子どもの教育費やローンを見据えて節約したい、今年は近場で過ごそうという綾乃さんに対して、夫は「家族で海外旅行に行きたい。困ったら母さんが援助してくれるって言っている」と譲りません。
「親に頼る前提で家計を考えるなんておかしいと思う」--綾乃さんはそう言いましたが、その日の口論は平行線のままでした。
ところが翌日、義母から電話がかかってきたのです。
「私がお金をあげるから」義母からの電話に、積年の違和感が爆発
「旅行くらい行きなさいな。私がお金をあげるから。仕事で頑張っている亮介を、家でも責めたらかわいそうよ」
夫が自分との話を母親に話したのだ--。そう察した綾乃さんは、怒りより先に、なんとも言えない疲労感を覚えました。
夫婦の間の話が、また義母に筒抜けになっている。そして、義母が「お金を出してあげる」と言えば、夫はそれを当然のように受け入れる。綾乃さんは、これまで胸の奥にしまってきた言葉を、ついに口にしました。
「いつも助けてもらって感謝はしています。でも、私たち夫婦の問題に口を出すのは別ではありませんか?」
すると義母は、少しも悪びれることなく言いました。
「家族なんだから、心配して口を出すのは当たり前でしょう。お金だっていつも援助しているし、そのくらい言う権利はあるはずよ。あなただって助かっているだろうに、どうして今回はそんなに突っぱねるの?」
その言葉を聞いて、綾乃さんは、はっとしました。お金を出してくれたことと、私たちの家庭に口を出していいことは、本当に同じなのだろうか、と。
これまで助けてもらったことを否定するつもりもありません。しかし、援助を受けたからといって、夫婦の家計や子育て、夫婦喧嘩にまで介入されることを受け入れなければならないのでしょうか。
綾乃さんは夫にはっきり伝えました。
「これからは、私たちでやっていける範囲で生活を楽しんでいきたい。お金をもらっているから、私は何を言われても我慢しなきゃいけない、という関係にはなりたくない」
自分たちの家計は夫婦で考える。自分たちの家庭のことは、自分たちで決める。そのためには、義母からの金銭的な援助には甘えられません。
「お義母さん、もう援助は結構です」
--これが綾乃さんの決断でした。
「援助」と「介入」は別の問題
住宅購入や出産、子どもの教育など、まとまったお金が必要になるタイミングで、親から資金援助を受ける家庭は多く、それ自体は悪いことではありません。
総務省の「家計調査(貯蓄・負債編)」によると、2025年、世帯主が65歳以上の無職世帯の貯蓄現在高は平均2,494万円。親世代の中には、子世代を経済的に支援できるだけの資産を持つ世帯もあります。
自分たちには余裕があるから、子や孫に使ってあげたい--。それが親切から始まった気持ちでも、「お金を出したのだから、こうしたほうがいい」「私が援助しているのだから、家計について知るのは当然」と思うようになれば、援助は「家族の意思決定に口を出す権利」に変わってしまいます。
一方で、援助された側が「援助は受ける。でも、口は出さないでほしい」と一方的に求めれば、親側が「助けているのに、なぜそんな態度を取られるのか」と不満を抱くのも無理はありません。
だからこそ、親から援助を受けるのであれば、「何のためのお金なのか」「どこまで頼るのか」を夫婦で話し合い、援助と家庭への介入は別のものだと線引きしておくことが大切です。
援助への感謝は忘れず、それでも自分たちの家庭のことは自分たちで決める--その距離感を、お金を出す側と受け取る側の双方が意識する必要があるでしょう。

