放置は危険?“早期診断”を妨げる「陰茎がん検査」見逃しの落とし穴【医師監修】

「陰茎がんかもしれない」と感じたとき、病院ではどのような検査が行われるのでしょうか。問診・視診・触診から始まり、生検(組織の一部を採取する検査)や画像検査を経て病期が評価される流れを詳しく解説します。検査の内容を事前に知っておくことで、受診への心理的なハードルを下げることができます。

監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)

長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科

陰茎がんの検査・診断の流れとリスク評価

「陰茎がんかもしれない」と不安になって病院を受診した際、どのような検査が行われ、どのように診断が確定するのか、具体的な流れを知っておくと精神的なハードルが大きく下がります。

視診・触診から生検(せいけん)まで

陰茎がんが疑われる場合、泌尿器科の専門医によって以下のような手順で段階的に検査が進められます。

問診と視診・触診(初期診察)
医師がいつから症状があるのか、痛みや出血の有無、過去の病歴や喫煙歴などを問診します。続いて、プライバシーに配慮された診察室で陰茎の視診(目視での確認)と触診(手で触れて確認)を行います。病変の部位、大きさ、形、硬さ、色、ジュクジュクの程度、そして太ももの付け根(そけい部)のリンパ節が腫れていないかを慎重にチェックします。経験豊富な泌尿器科医であれば、視診と触診の時点でかなりの確率でがんの可能性を推測できます。

生検(せいけん:確定診断のための精密検査)
見た目だけで「がん」と断定することは医学的に不可能です。確定診断を下すために、生検(皮膚生検)が必須となります。
生検では、病変の部位に局所麻酔(注射による麻酔)を行い、痛みを感じない状態にしてから、病変組織の一部(数ミリ程度)をメスや専用の器具で切り取ります。採取した組織は「病理医(病理組織の専門医)」に送られ、顕微鏡を使って細胞の形や並び方を詳細に観察します。これにより、「本当にがんであるか」「がんの種類(多くの場合は扁平上皮がん:へんぺいじょうひがん)」「悪性度(がん細胞の顔つきの悪さ)」「皮膚のどのくらいの深さまで達しているか」が正確に診断されます。

画像検査(進行度・転移の評価)
生検で陰茎がんと確定した場合、次に行うのは「身体のどこまでがんが広がっているか」を調べる画像検査です。

超音波(エコー)検査: 陰茎内部への浸潤の深さや、そけい部リンパ節の腫れを簡易的に調べます。

CT検査(コンピュータ断層撮影): 骨盤内や腹部、胸部の断面画像を撮影し、リンパ節への転移や肺・肝臓など遠くの臓器への転移がないかを調べます。

MRI検査(磁気共鳴画像法): 磁気を使って陰茎内部の海綿体や尿道への浸潤度合いを非常に鮮明に描き出します。手術で陰茎を温存できるかどうかを判断する際に極めて重要な情報となります。

リスク評価と治療方針の決定

すべての検査結果が出揃った段階で、国際基準である「TNM分類」に基づいた病期(ステージ)の決定とリスク評価が行われます。

T(Tumor): 原発腫瘍(陰茎の病変)の大きさと、海綿体や尿道など奥深くまで侵入している度合い

N(Node): そけい部や骨盤内のリンパ節への転移の有無と、腫れているリンパ節の数や大きさ

M(Metastasis): 肺や骨など、遠くの臓器への遠隔転移の有無

このTNMの組み合わせによって決定されたステージをもとに、患者さんの「年齢」「持病や全身の健康状態」「性的機能や排尿機能に関するご本人の強い希望」などを総合的に考慮し、主治医から最適な治療計画が提案されます。

陰茎がんの手術は、解剖学的な知識と高度な技術を要するため、セカンドオピニオン(別の病院の専門医に意見を求めること)を利用することも一般的な選択肢です。納得して治療に臨むために、不明な点や不安な費用面については遠慮なく質問することが推奨されます。

まとめ

陰茎がんは、早期に発見して適切な治療を受けることで、治癒を目指せる可能性がある疾患です。初期症状のサインを見逃さず、気になる変化があれば早めに泌尿器科を受診することが何より大切です。リスク因子を持つ方は定期的な自己確認を習慣とし、不安な点があれば医療機関に相談することをお勧めします。治療費についても高額療養費制度などの支援制度を上手に活用することで、経済的な負担を軽減できます。「早めの受診」と「専門の医師への相談」が、陰茎がんから身を守るための確かな選択です。

参考文献

国立がん研究センター がん情報サービス「陰茎がん」

厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」

国立がん研究センター がん情報サービス「がんの統計」