生理の異常はサイン?「女性」が知るべき“子宮内膜がん”4つの初期症状

リンチ症候群では、大腸以外の臓器にもがんが発生する可能性があります。特に女性にとっては、子宮内膜がんの早期サインを把握しておくことがとても大切です。また、胃や泌尿器、卵巣など、ほかの臓器に現れる症状についても知っておくと、いざというときに早めの行動につながります。このセクションで、各がんの初期症状を整理してご紹介します。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

リンチ症候群の初期症状:子宮内膜がん・そのほかのがんに現れるサイン

リンチ症候群では大腸以外のがんにも注意が必要です。特に女性では子宮内膜がんの初期症状を知っておくことが重要です。このセクションでは、大腸以外のがんに関連する初期症状と、早期発見のための行動について解説します。

子宮内膜がんの初期症状と見逃しやすいサイン

子宮内膜がんは、幸いにも初期段階から身体のSOSサイン(症状)が出やすいがんのひとつです。早期発見のために最も注意すべき症状は「不正出血」です。

具体的には以下のような症状に注意してください。

・不正性器出血:月経(生理)以外の時期に出血がある。あるいは、茶色っぽいおりものが長く続く。

・閉経後の出血:すでに閉経して生理が終わっているはずなのに、少量の出血やおりものがある(閉経後の出血は子宮内膜がんの最も典型的なサインです)。

・月経周期・経血量の異常:生理の期間が極端に長くなった、あるいは経血量が急激に増えた。

・下腹部痛や性交時痛:進行すると下腹部に重い痛みが現れることがあります。

若い世代の女性では、「生理不順かな」「ストレスによるホルモンバランスの乱れだろう」と見過ごされてしまうことが少なくありません。しかし、リンチ症候群のリスクがある女性で不正出血が見られた場合は、年齢に関係なく速やかに婦人科を受診し、「子宮内膜体診(体がん検査)」や経膣超音波検査を受けてください。

そのほかのがんに現れる初期症状と受診の目安

リンチ症候群では、大腸や子宮以外の臓器にもがんが発生する可能性があります。それぞれの初期サインを頭に入れておくことで、素早い対処が可能になります。

・胃がん:みぞおちの痛み、胃のもたれ、胸やけ、食欲不振。定期的な胃カメラ(上部消化器内視鏡検査)でのチェックが有効です。

・腎盂・尿管がん・膀胱がん:最も典型的な症状は「無症候性肉眼的血尿(痛みを伴わない赤い尿)」です。痛みがなくても尿に血が混じった場合は、すぐに泌尿器科を受診してください。

・卵巣がん:初期はほぼ無症状ですが、進行すると「お腹が張る(腹水貯留)」「靴が履きにくくなる」「下腹部にしこりを感じる」などの症状が現れます。

リンチ症候群と向き合う上で大切な基本原則は、「症状が現れたら放置せずに専門医を受診すること」、そして何より「自覚症状がまったくなくても、決められたスケジュールで定期検診を受け続けること」です。

自分や家族がリンチ症候群かもしれないと感じたら、まずは全国のがん診療連携拠点病院などに設置されている「遺伝診療外来(遺伝子診療科)」や「遺伝カウンセリング外来」に相談してみることを強くおすすめします。専門の医療スタッフが、あなたやご家族の健康を長期間にわたって手厚くサポートしてくれます。適切な知識と定期的なケアがあれば、過度に恐れる必要はありません。

リンチ症候群に伴うがんは、DNA修復機能の低下によって「マイクロサテライト不安定性が高い(MSI-High)」という特徴を持っています。この種類のがんに対しては、免疫チェックポイント阻害薬(ペムブロリズマブなど)が非常に高い治療効果を示すことが臨床試験で明らかになりました。

従来の抗がん剤治療で効果が得られにくかった進行がんに対しても、免疫の力を利用してがん細胞を攻撃するこの新しい治療法が有効な選択肢となり、患者さんの生存率や生活の質の改善に貢献しています。日本国内でもMSI-High固形がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の使用は保険適用となっており、リンチ症候群関連がんの治療戦略は大きく変わりつつあります。特に女性においては、大腸がんと併せて子宮内膜がんや卵巣がんへの適切な予防・早期発見アプローチが欠かせません。自分や家族がリンチ症候群かもしれないと感じた方は、まずは消化器内科や遺伝外来に相談することから始めてみてください。

まとめ

「血縁者に若い年齢でがんになった人がいる」「家系内に同じがんの人が複数いる」という場合は、決して一人で抱え込まず、遺伝外来や消化器内科、婦人科などの専門機関にご相談ください。定期的な内視鏡検査や婦人科検診、場合によってはリスク低減手術などの選択肢を持つことで、がんを予防し、万が一発症しても早い段階で治療を開始できれば、治癒の可能性を大きく高めることが期待できます。 正しい知識と医療ケアを取り入れ、大切な健康を守る第一歩を踏み出しましょう。

参考文献

国立がん研究センターがん情報サービス「リンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸がん)」

一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会「遺伝性腫瘍ハンドブック・ガイドライン」

国立がん研究センターがん情報サービス「大腸がん」

国立がん研究センターがん情報サービス「子宮体がん(子宮内膜がん)」

厚生労働省「がん対策推進基本計画」