がんの「治療費」を大幅軽減?高額な支払いを抑える“あの公的制度”とは
治療費の負担を軽減するために活用できる公的制度として、高額療養費制度や医療費控除があります。また、傷病手当金や民間の医療保険・がん保険を組み合わせることで、治療中の生活をより安定させることも可能です。経済的な不安を和らげるための制度と備え方について、ひとつずつ丁寧に説明します。
監修医師:
大津 和弥(医師)
三重大学医学部卒業。三重大学附属病院で研修。市立四日市病院、三重大学附属病院などに勤務後、国立がんセンター東病院研修。三重大学附属病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科 講師を務め、小松病院で一色信彦、田邊正博の音声外科医師の指導の下音声外科手術を研鑽。市立ひらかた病院耳鼻咽喉科部長、市立ひらかた病院耳鼻咽喉科主任部長、音声外科センター長などを歴任。大阪医科薬科大学臨床教授。現在は大津耳鼻咽喉科・ボイスクリニック 院長。
治療費に関する支援制度と経済的な備え方
このセクションでは、鼻腔がんの治療費に関する公的支援制度と、民間の保険を活用した備え方について解説します。治療費の負担を軽減するための仕組みを事前に理解しておくことで、治療に専念できる環境を整えやすくなります。
高額療養費制度の活用
この制度は、1ヶ月(月の初日から末日まで)に病院の窓口で支払った医療費の自己負担額が、所得に応じた「上限額」を超えた場合、超過した金額が払い戻される仕組みです。
例えば、年収約370万円~約770万円(一般的な現役世代・3割負担)の方の場合、1ヶ月の自己負担上限額は約8万円~9万円程度となります(算出式に基づく)。どれだけ高額な手術や抗がん剤治療を受けても、1ヶ月あたりの実際の負担はこの上限額付近に抑えられます。
※あらかじめご加入の健康保険(協会けんぽ、市町村の国保など)へ申請して「限度額適用認定証」を取得しておくか、マイナンバーカードを保険証として利用する「マイナ保険証」を提示して窓口で同意すれば、最初から上限額までの支払いだけで済み、一時的なまとまった現金の用意が不要になります。
また、確定申告時に1年間の医療費を申告する「医療費控除」を活用することで、納めた所得税の一部が還付される場合もあります。領収書は大切に保管しておきましょう。
公的制度ではカバーできない「差額ベッド代」「通院交通費」「治療中の収入減少」に備えるためには、民間の医療保険やがん保険、傷病手当金などの活用が有効です。
医療保険・民間保険との併用と事前の備え
公的な高額療養費制度だけでは、入院中の生活費や差額ベッド代、交通費など保険が適用されない費用はカバーできません。そのため、民間の医療保険やがん保険との併用を検討することも、治療中の経済的な安定を図るうえで選択肢のひとつとなります。
民間の医療保険は、入院日数に応じた給付金の支払いや手術給付金などが含まれる商品が多く、保険適用外の費用の一部を補う役割を果たすことがあります。がん保険は診断一時金として一定額が支払われるタイプや、治療の実費を補償するタイプなど、商品によって内容が異なります。加入を検討する場合は、保険の内容をよく確認したうえで自分の状況に合ったものを選ぶことが大切です。
治療中には仕事を休まざるを得ないケースもあります。会社員の方の場合、健康保険から「傷病手当金」(しょうびょうてあてきん)が支給される制度があります。傷病手当金は、病気やけがで仕事を休んだ場合に、1日あたりの標準報酬日額の3分の2相当額が支給される制度です。自営業の方は対象外となるため、収入が途絶えた場合の備えをあらかじめ検討しておくことが望まれます。
また、就労と治療を両立させるための支援として、がん相談支援センターが全国の医療機関(がん診療連携拠点病院)に設置されています。費用に関する相談や福祉制度の案内、就労に関するサポートなど、さまざまな相談に対応しています。治療を進めるなかで生じる不安や疑問は、一人で抱え込まず、医療ソーシャルワーカーなどの専門職に相談することを検討してください。
治療費の不安を早期に解消し、治療に集中できる環境を整えることが、回復に向けた大切な一歩となります。
まとめ
鼻腔がんは初期症状が軽度であり、一般的な鼻炎や副鼻腔炎と見分けがつきにくいため放置されやすい疾患です。しかし、「片側だけの長引く鼻づまり」「繰り返す鼻血」「片方のにおいが分からない」といったサインがある場合は、迷わず早めに耳鼻咽喉科を受診することが何より重要です。また、高額療養費制度や傷病手当金といった公的制度を活用することで、治療に伴う経済的負担を大きく和らげることができます。一人で悩まず、専門医や医療機関のサポートを活用して早期発見・適切な治療へとつなげていきましょう。
参考文献
国立がん研究センター がん情報サービス「鼻腔・副鼻腔がん」
厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
国立がん研究センター がん情報サービス「がんと仕事のくらしのサポート(傷病手当金など)」
厚生労働省「傷病手当金について」
国立がん研究センター がん情報サービス「がん相談支援センターを探す」

