【闘病】ラジオ出演中に突然ろれつが回らなくなり… 「話す仕事」を襲った『脳出血』

木村さんは2026年、地元のラジオ番組にゲスト出演中に突然ろれつが回らなくなり、救急搬送の末に脳出血(脳の血管が破れて出血する病気)と診断されました。左半身に麻痺(まひ)が残る中、講師への復帰を目標に、独自の「するリハビリ」を工夫しながら回復期のリハビリテーション(リハビリ)に励んでいます。木村さんに発覚から診断、リハビリ、現在に至るまでの経緯を聞きました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2026年6月取材。

体験者プロフィール:
木村美季さん

1971年生まれ、大阪府在住。講演家・研修講師として活動していた2026年、ラジオ出演中に突然ろれつが回らなくなり、救急搬送の後、脳出血と診断される。左半身の麻痺などの後遺症と向き合いながら入院中。2027年度の現場復帰を目標に、日々回復期のリハビリに励んでいる。

スタジオで起こった異変… 脳出血の発症から診断まで

編集部

病気が判明した経緯を教えてください。

木村さん

地元のラジオのコーナーにゲストで出演中に発症しました。笑顔で受け答えしているとき、顔がつっぱって戻らなくなり「あれ?」と思っていると、パーソナリティーからの質問に答えようとした瞬間にろれつが回らなくなったんです。はっきりと話せないことを自覚したため、最後は早々に話を締めくくりました。
コーナー終了後に椅子から立ってお辞儀をし、歩いてスタジオを出ようとしたのですが、動作がまったくできませんでした。椅子から立ち上がれずオロオロしていたところ、スタッフが数人駆け付けてくれて、抱えられてスタジオを出ました。今までにない体調の変化から「これは絶対に脳の異常だ」と気付いたため、一生懸命「脳梗塞かもしれないので救急車を呼んでください」と訴えました。
救急隊員が到着した場面は覚えているものの、救急車内の記憶はまったくなく、気付いたらベッドの上でした。どのタイミングで誰に言われたのかまったく覚えていませんが、最初に搬送された急性期病院(発症直後の集中的な治療を担う病院)のベッドで、「脳出血ですよ」と言われた記憶があります。家族に確認したところ、医師からは「出血が10mL程度で広がりもないため保存的治療(外科手術を行わずに薬物治療などを行うこと)」と説明されたそうです(※)。

※治療方針は患者さんの状態によって異なります

編集部

診断がついたときの心境を教えてください。

木村さん

波が引くように「えー……」と言葉を失い、世界がモノクロに見えました。すぐにショックを受けたり、驚いたり悲しんだりするのではなく、静かに困惑が押し寄せてくる感覚でした。

編集部

発症前に自覚症状などはあったのでしょうか?

木村さん

まったくありませんでした。

左半身麻痺からの再起へ、講師復帰を目指す日々

編集部

どのように治療を進めていくか、医師から説明はありましたか?

木村さん

医師からの説明は、私自身の記憶にはあまり残っていません。ただ、看護師の様子から、手術の必要がない状態であることは理解しました。その上で看護師やリハビリの担当者から「無理をせずにリハビリを頑張りましょうね」と声をかけられた記憶があります。

編集部

発症後、生活にどのような変化がありましたか?

木村さん

右脳の運動機能をつかさどる部分の血管が破裂したため、左半身に麻痺が残りました。一人で立つ、歩く、座るなど、基本的な日常動作がすべてできなくなりました。今も、左腕・左の手のひら・指はほとんど動かないため、完全に右側中心の生活を送っています。また、排泄(はいせつ)は自力で可能ですが、下着やズボンの上げ下げが一人ではできません。人手が足りないときなどは男性スタッフにお願いすることもありますが、最近は慣れました。恥ずかしさよりも感謝の気持ちでいっぱいです。

編集部

病気と向き合う上で、心の支えになっているものを教えてください。

木村さん

倒れる前は講演や研修の講師を務めていたため、今回の発症によって、やりたかった仕事の依頼も泣く泣くキャンセルしました。申し込んでくれた人たちに申し訳なく、悔しくてなりません。だからこそ「絶対に講師として復帰する」という目標が生まれました。周囲の応援も心の支えとなり、リハビリに真剣に取り組む原動力になっています。

編集部

もし発症前の自分に何か伝えられるとしたら、どんな言葉をかけますか?

木村さん

「塩分は控えめに」と「徹夜は駄目」の2つを伝えたいですね。私はお酒もタバコも一切たしなみませんが、脳出血の原因は高血圧でした。生活習慣が乱れていた当時の自分に向けて、強く注意を促したいと思います。

主体的に取り組む「するリハビリ」の意識と体験から得た教訓

編集部

現在の体調や生活の様子を教えてください。

木村さん

パソコン作業や長文のメール作成などを行うと、頭だけでなく、体全体がどっと疲れるようになりました。そのため、現在はパソコンに向き合う時間を1日2時間までと決めています。
また、長期の入院によって全身、特に左側の筋力が低下し、ひどい腰痛にも悩まされていました。その後、2カ月をかけてようやく左腰の痛みの原因が分かったため、現在は鎮痛薬(アセトアミノフェン)を服用しながら工夫しています(※)。あとは、就寝時に背中にタオルを挟んで腰の位置を調整したり、車いすに乗る際の姿勢を整えたりと、日々の努力を重ねています。
最近の理学療法(立つ・歩くなど体の基本動作の回復を図るリハビリ)の評価では、理学療法士からうれしい報告をもらいました。体幹機能障害評価(TIS、23点満点)という歩行や体幹などの総合評価で、リハビリ病院へ転院した5月20日には12点だったものが、6月6日には18点まで上がっていたのです。普段のリハビリに加え、毎日わずかな時間を見つけて自主トレをコツコツと継続してきた効果が表れたのだと思います。
ちなみに今は、アセトアミノフェンのほかに、アムロジピン(高血圧治療薬)を毎朝飲んでいます。

※治療方針は患者さんの状態によって異なります

片足立ちができるように

編集部

そのほかに、何か変化はありましたか?

木村さん

発症当時に比べれば和らぎましたが、まだしびれが残っています。口内も左側の頬の筋肉が落ちており、左の歯や歯ぐきにぴったりと付いて隙間がない状態のため、左奥は歯ブラシが届きにくい状況です。また、食道も少し狭くなったようで、食パンは12個にカットして少しずつ食べないと喉が詰まりやすくなります。以前のように、モリモリガツガツ大口で早く食べることは難しくなりました。

編集部

初めてのリハビリに取り組む中で、気付いたことを教えてください。

木村さん

特に実感したのは「されるリハビリ」と「するリハビリ」では、効果に大きな違いが生じるのではないかという点です。
「されるリハビリ」はいわば受動的な状態を指し、楽しい会話とマッサージの時間になりがちです。一方で「するリハビリ」は、自ら主体的に取り組むリハビリを意味します。例えば、1段の段差を昇降する際も、ただ漠然と指示どおりに体を動かすのではありません。「左足と右足のどちらに重心をかけたほうがよいですか?」「片方の足は伸ばしたほうがよいですか?」と質問したり、「このリハビリを行う目的は何ですか?」「どこの部位に力を入れるイメージを持てばより効果的ですか?」と担当者に確認したりします。目的をきちんと把握した上で行うことが、大切であると気付きました。

編集部

その気付きは、担当の理学療法士にも伝えましたか?

木村さん

はい。この考えを担当の理学療法士に伝えたところ「そのとおりです」と賛同してくれました。無意識に行うよりも効果が高まると、自分自身の体験からも実感しています。とはいえ、無理は禁物ですし、心に余裕がないと疲弊してしまいます。モチベーションや症状、時期によっては「マッサージと楽しい会話のリハビリ」もリフレッシュのための大切な時間です。もし今後リハビリを受ける機会があれば、この「されるリハビリ」と「するリハビリ」の緩急をうまく使い分けて進めることを思い出してもらえるとうれしいですね。
あとは、定められたリハビリの時間以外を有効に活用し、自主トレを行うことも意識したいポイントです。例えば、言語療法(話す・飲み込む力の回復を図るリハビリ)であれば、起床時に滑舌の練習をする。ベッドの上でできる腕の自主トレであれば、リハビリ担当者に無理なくできるメニューを教えてもらい、就寝前に実行する。車いすに乗っているときにできる足の自主トレを行う、といった取り組みです。この隙間時間を有効に使う手法は、勉強に例えるなら「予習・復習」のような位置付けだと考えています。定められたリハビリの時間に、ベストなパフォーマンスを発揮するための準備です。こちらもリハビリ担当者に褒められた工夫なので、よければぜひ試してみてください。

編集部

医療従事者に望むことは何でしょうか?

木村さん

基本的には感謝の気持ちしかありませんが、1つだけもどかしく感じた点があります。毎朝「今日は痛いところはありませんか」と必ず聞かれ、その都度、痛む場所や状態を伝えても、伝えた症状に対する明確な原因の説明や、痛みを緩和するアドバイスがほとんど得られないことです(※)。
患者さんは毎日不安な状態でベッドの上で過ごしています。私も、痛みの原因の説明と、緩和のための具体的な助言を求めていました。慰めや共感、心配の言葉よりも、担当医からはっきりとした診断のような答えが欲しかった、というのが正直な気持ちです。

※リハビリ中の痛みは、リハビリによる負荷、もともとの筋力の低下、関節の状態など複数の要因が重なり、原因を1つに絞れないことが少なくありません。また、リハビリテーション病院では医師1人が担当する患者数が多く、一人ひとりに時間を割きにくい事情もあります。痛みが続く場合は、整形外科など専門的な診察で原因がはっきりすることもあります

編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

木村さん

入院中に何度も「覆水盆に返らず」という言葉を思い出しました。どうやら私の場合、一度失ってしまった体の機能は、完全に元どおりには戻らないようです。守るべき人やものがあるなら、まずは自身の体を何よりも守り、いたわることを最優先にしてほしいと思います。そしてもう1つ伝えたいのは、異変を感じたら「救急車を呼ぶ勇気」を持つことです。
私の場合、発症時に周囲から「横になって休憩してください」という声が聞こえ、一瞬躊躇(ちゅうちょ)してしまいました。でも、手遅れになりたくなかったので、滑舌が悪い中でも自分で「救急車を呼んでください」と言うことができました。
実際には、急な発症で声すら出せない容態の人もいます。周囲の人も含め、おかしな前兆や異変を感じたときは、我慢しすぎず、迷わず救急車を呼ぶようにしましょう。

編集後記

脳出血という大きな試練に直面しながらも、木村さんは主体的に取り組む「するリハビリ」の工夫で前を向いています。守るべき人やものがあるからこそ、まずは自身の健康を最優先に考えたいものです。

本稿には特定の医薬品、医療機器についての記述がありますが、情報提供のみを目的としたものであり、医療上の助言や販売促進などを目的とするものではありません。

なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

記事監修医師:
村上 友太
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。