「吐き気よりオモシロが勝ったら出す」女性芸人が語る“令和の下ネタ論”…「おもしろくない」批判より怖いのは「親にネタを見られること」
公式YouTubeチャンネル「ニッキューナナch」での下ネタコントがブレイク中の男女コンビニッキューナナ。トータルテンボスに憧れ、漫才師に憧れ、東京へ。しかし大学の落研で出会った相方と選んだ道は、このご時世険しすぎる「下ネタ」への道だった。下ネタ一筋10年、ニッキューナナのこっちゃん選手に「令和の下ネタ」を聞いた。(全3本の1本目/つづきを読む)
【画像】「教授に間違って“性器名”をメールしちゃった」ブレイクのきっかけとなった“下ネタコント”を見る

こっちゃん選手 ©︎石川啓次/文藝春秋
◆◆◆
トータルテンボスにハマって「絶対芸人になりたい」
--私はニッキューナナさんのネタ動画が大好きで。普段下ネタが大好きっていうわけじゃないのに笑わずにはいられない。直接的なのにカラッとしてるというか。
こっちゃん選手 そう言っていただけるのは、めちゃくちゃうれしいです。
--「女性と下ネタ」について、我々もちゃんと考えなければいけないと。
こっちゃん選手 すごい……そんなテーマになってきてるんですか?
--こっちゃん選手が芸人になりたいと思われたのはいつぐらいですか?
こっちゃん選手 『エンタの神様』とか『爆笑レッドシアター』とか『爆笑レッドカーペット』とか、そういうのをずっと見て育ってきて。中学生あたりで『爆笑オンエアバトル』(以下、『オンバト』)を知って、これめちゃめちゃおもしろいなと。『レッドカーペット』だと2~3分で終わっちゃうネタが、『オンバト』だと長い尺で見れて。そのあたりからお笑いにハマっていきました。
あとは、勉強しながらラジオ番組の『トータルテンボスのぬきさしならナイト!』を聞くのが私の中のルーティーンになって、そこからトータルテンボスさんにハマって、絶対芸人になりたいなって思うようになりました。私、笑い飯さんが優勝された2010年の『M-1グランプリ』(以下、『M-1』)の敗者復活を見に行ってるんですよ。夜行バスで友達と大井競馬場まで行って。
担任の先生に「お笑い芸人になりたいです」って言ったら…
--あの極寒でおなじみの! 芸歴10年縛りのラストイヤーですね。
こっちゃん選手 東北出身の私でもちょっといい加減にしろよってぐらい寒かった。でもそれより生身の『M-1』にすごい衝撃を受けて、私もこれに出たいと。それで進路相談のとき、担任の先生に「お笑い芸人になりたいです」って言ったんです。でも先生が「近所のおもしろいおばさんでいいんじゃない?」って。
--すごいですね、先生も(笑)。
こっちゃん選手 いいわけねえだろうと思って(笑)。そこで上京を志すようになりました。絶対東京出て、お笑い芸人になってやると。
--ネタを書いたりされてたんですか、その当時も。
こっちゃん選手 高校生のときにお笑いサークルがあって、月に1回、お笑いのDVDをみんなで鑑賞してたんです。そこで出会った子と高3の文化祭で漫才をやりました。結構芸人としてはベタなイベントですよね。
下ネタをやるとは思ってもみなかった
--反応はいかがでしたか?
こっちゃん選手 めっちゃ怖い数学の先生が笑ってくれました。「この世で一番おもしろい漫才だ」って。チュートリアルさんやナイツさんや、面白い漫才師はたくさんいるのに「この世で一番おもしろい漫才を見てしまった」って。
--比較対象もすごい。
こっちゃん選手 「近所のおもしろいおばさんでいいんじゃない」って言われてた私には、その言葉が染みに染みて。これやばいぞ。階段登ったなって思って、もう絶対東京行くって決めました。
--その時点ではまだこんなに下ネタをやるとは思ってもみなかった。
こっちゃん選手 そうですね。元々下ネタがめちゃめちゃ好きっていうわけではなくて。ただ「うんこ」「ちんこ」で笑うタイプではあったんですけど。とにかく漫才が大好きで、漫才をやりたくて大学の落研に入りました。そこで女の子と組んでたんですけど、4年目にさしかかったときに、どうしようかなって思って。
--進路に悩む時期ですね。
こっちゃん選手 私はプロに行きたいけど、当時組んでいた相方はそうではなかった。そのときちょうど今の相方の峯(シンジ)君がピンで活動してたから、じゃあ1年間だけ組もうよみたいな話になって。でも峯君はコントが好きだったから、漫才ではなくコントをやり始めたんですよ。
自分がおもしろいと思うことを封じたくない
--徐々に下ネタの道へ……。
こっちゃん選手 そう(笑)。一番最初にやったのが、ラジオのコントでした。ラジオの番組中なのにパーソナリティの男が、共演者の女の手を触ってくるっていうネタをやったんですけど、多分生々しくて全然ウケなかった。しかも私が出した案だから、ウケてないことに「ん?」ってなって。「おもしろいだろ!」って。
--悔しくなってしまった。
こっちゃん選手 そこから無意識でか分かんないんですけど、下ネタっぽいことをコントに入れるようになりました。「イルカの調教師」っていうネタも私が考えたんですけど、調教師役の峯が、手をグーにして「お前、この拳触ってみろ」って弟子役の私に触らせる。「これなんだか分かるか。イルカのあそこってこれぐらい硬いからね」みたいな。
--反応はどうでしたか?
こっちゃん選手 しーん(笑)。なんでこれもウケねえんだよ!! って思いました。
--(笑)。引かれてショックではなく、怒りが湧いてきた。
こっちゃん選手 そう、なんで? って思っちゃって。だったらみんなが笑う下ネタ出してやるよって。だって相手が笑う笑わないで自分がおもしろいと思うことを封じたくないじゃないですか。
エロ漫画だって、「今流行ってるから」で入れた要素より、作者自身の性癖を感じるエロ漫画のほうがめちゃくちゃ魅力的だし。お笑いでも私はそれをすごく感じていて。下ネタにこだわるっていうよりは、下ネタがおもしろいからやってるっていう感覚です。おもしろいのがたまたま下ネタだったっていうだけで。
下ネタは「グロい」か「おもしろいか」の二択
--ニッキューナナの下ネタは、こっちゃん選手さんが始めた物語だったのですね。
こっちゃん選手 最初はそうですね。峯君は今でもそれを免罪符にしてますけど。「だってあのとき言ったもんね?」みたいな。でも間違いではないですね。
--男女コンビで下ネタをやっても変な生々しさがないのは、たぶんそういうことなんだなと思いました。下ネタに対するコンビ間の熱量が一緒だから。
こっちゃん選手 そうですね。倫理感という点では峯より私のほうがなくて。どちらかというと峯が調整してくれています。
--どういう調整方法なんですか?
こっちゃん選手 下ネタってグロいかおもしろいかの二択じゃないですか。下ネタを聞いて吐きそうになったらやめるし、吐き気よりオモシロが勝ったら出すようにしています。例えばですけど、本当は「アナル」って言ったほうがおもしろいけど、でもみんな的に「ケツの穴」って言ったほうが伝わるってなったときに、それでも私は「アナル」って言いたいからアナルを採用するんです。本当に感覚的な話なんですけど。
--こっちゃん選手がオエッてなったらそのネタはボツになる。
こっちゃん選手 私が「吐き気よりおもしろさが勝った!」と思ったら全然出します。私は生産者なんで。生産者側としては一応そういった経緯で出してるっていう感じですね。
下ネタを発信すると、下ネタで返ってくる
--生産者(笑)。実際に批判や非難を受けることは?
こっちゃん選手 どうだろう……来てんのかな。「おもしろくない」って言う人は全然いると思います。ただ、全てのお笑いのネタに関してそういう意見はあると思うから、私的にそんなに気にする対象ではないのかもしれません。それよりも下ネタを発信すると、下ネタで返ってくることが多いんですよ。
--どういうことですか?
こっちゃん選手 私がニュース番組のキャスターに扮して、「ここが性行為の現場です」「夜9時頃に喘ぎ声が聞こえてきて、こちらで性行為をした模様です」って言うショート動画を上げたときに、「これ、まだ誰が性行為したか分かってないんだよね」みたいなコメントがくる。ネタで「ちんこ」って言ったら、ファンから「ちんこ」って返ってくるんですよ。思いやりと一緒だなって。「ありがとう」って言ったら「ありがとう」で返ってくるみたいな。
--下ネタのこだまが。
こっちゃん選手 そうそう。やまびこ下ネタですね。
事務所には「のびのびとさせていただいてます」
--周りの芸人さんや事務所の方の反応はどんな感じだったんですか?
こっちゃん選手 マセキのスタッフや先輩芸人さんは、おもしろいねって言ってくれるんですよ。私は演技が壊滅的に下手くそで、最初にコントやるってなったときはマジで絶望してたんですけど、下手くそでも何かが尖っていて、事務所はそこを認めてくれたんだろうなと。
--さすがルシファー吉岡さんを抱える事務所ですね。
こっちゃん選手 のびのびとさせていただいてます。それはすごく感じています。
親には「教師になろうと思ってる」と言っていた
--しかし、1年限定の気持ちで組んだコンビで、このままやっていきたいなと思ったのは何か理由があったんでしょうか。
こっちゃん選手 私、芸人になるっていうことを直前まで親に言ってなかったんです。数学の教師にも興味があって、親には「教師になろうと思ってる」って言ってました。実際、大学の4年次は教育実習で忙しくて、なかなかネタも練れなくなって、次のライブに受かんなかったらもう解散しようって状態にもなったんですよ。でもそのライブに受かっちゃって、そのまま継続しようかと。そこで初めて親に「芸人やりたい」って話しました。めちゃめちゃ揉めました。
--そこで初めて親御さんは知ったわけですね。
こっちゃん選手 そう。もっと早く私が言ってればよかったんです。大学生活の最後の最後に言ったからすごく揉めたんですけど。そこからは「頑張ってね」って応援してくれています。
--ちなみに……親御さんはネタを見てらっしゃるんですか。
こっちゃん選手 本当にやばいのが、結構見てるんですよね(笑)。しかもマジで見てほしくないっていうネタほど見てる。ラジオも毎週聞いてるんですよ。だから久々に会うと「それラジオで言ってたもんね~」みたいに言われて、もう最悪。親に聞かれてるって思いながらラジオもしたくないし、親に見られてるって思ってネタも作りたくないじゃないですか。そこだけは恥ずかしいって思ってます。
〈「女のお笑いって、びっくり箱みたいなもの」下ネタでブレイクした女性芸人が明かす、男性芸人との決定的な違いと「地上波で下ネタは無理」でも気にしないワケ〉へ続く
(西澤 千央)
