国立博物館 経営努力の取り組みを広げよ
博物館や美術館には、貴重な文化遺産を収集、保管、展示して後世に引き継ぐという重い役割がある。
一方、政府は公費依存の体質を変えようと自己収入の拡大を求めている。
将来にわたってかけがえのない収蔵品を守るには、安定的な運営が欠かせない。国も博物館側もそのための知恵を絞ってほしい。
収益の改善が求められている国立12館のうち、東京国立博物館は、この5年で寄付額を約3倍の7億7000万円に増やした。
収蔵品の紹介を会食と組み合わせたイベントを開催するなど、企業経営者らに寄付を呼びかけた結果、1口1000万円の大口会員を複数獲得したという。
また、入館者数の増加を目指し、海外の博物館などとの連携も進めた。数年前まで中国と韓国の3館だけだった提携先は、現在、米国のボストン美術館や英国の大英博物館などを含め32館となった。
日本と海外で互いに収蔵品を貸し出し合い、魅力ある展示を行おうという狙いがある。
東京国立博物館は、国内で最多の12万件の文化財を収蔵している。自己収入の拡大を目指す上で、他の国立館に比べて有利な立場にあるのは事実だろう。
だからといって他の国立館も、手を拱(こまぬ)いていたら運営はじり貧になりかねない。収支を一向に改善できない場合、収蔵品の収集、保管や、その調査研究にも影響が及ぶことが懸念される。
各館で自己収入拡大のための情報を共有し、活動の幅を広げていくことが重要だ。
文化庁は今年2月、12館を運営する三つの独立行政法人に対し、2030年度までに展示事業費の65%以上を自己収入で賄うよう求めた。現状はいずれの法人も、50%程度にとどまっている。
国は毎年度、三つの独立行政法人に計200億円の運営費交付金を支給している。自己収入を増やすよう促したのは、公費に依存した運営を改めるためだという。
博物館や美術館が経営の観点を持つことは大切だ。だが、公共施設である以上、収益向上だけを目的とするわけにはいかない。
博物館側が自己収入を拡大したからといってその分、国の運営費交付金を減額したら、各館の努力に水を差す恐れがある。安易に交付金を減額すべきではない。
政府は、外国人観光客の入館料を高く設定する二重価格の導入も検討している。「排他的だ」との批判を招かぬよう、丁寧な制度設計が必要となる。
