オークションで落札した「ヘンテコなキツネの頭」が実はキツネではなく絶滅動物のものだったことが判明

by auctioneum
骨董市やオークションで落札した品物が、実は貴重なお宝や芸術品だったというニュースはたびたび報じられています。新たに、イギリスの珍品ディーラーがオークションで落札した「ヘンテコなキツネの頭の剥製」が、実はキツネではなく20世紀に絶滅した動物の頭部だったことが判明しました。
Antique 'Fox Head' Bought at Auction Wasn't a Fox at All. It Was a Long-Extinct Species. : ScienceAlert
イギリスの珍品ディーラーであるジェームズ・クランフィールド氏は、長年にわたって「奇妙なキツネの頭の剥製」を収集してきた人物です。剥製の出来栄えは剥製士の技術や当時の文化によって異なるため、同じキツネの頭の剥製であってもさまざまな違いがみられるとのこと。
そんなクランフィールド氏はある日、オークションサイトに「19世紀のキツネの頭」が出品されているのを発見しました。最初はその奇妙な見た目に心を奪われたクランフィールド氏でしたが、よく見るとキツネではない別の動物のように見えたそうです。
クランフィールド氏は、「クリックして大きな画像を開いた時、それがキツネではないとわかって、まるで稲妻が脳と目に走ったような気がしました。私はすぐに、『あれはフクロオオカミ(タスマニアタイガー)ではないか』と思ったのです」と語っています。
フクロオオカミは大型犬に似た肉食性の有袋類であり、かつてはオーストラリア大陸やニューギニア島を含めた一帯に分布していましたが、ヨーロッパの入植者が到着した頃にはオーストラリア南部のタスマニア島にのみ生息していました。19~20世紀初頭にかけてフクロオオカミは家畜を狙う害獣と見なされ、積極的な狩猟の対象となっており、時にはタスマニア州政府から懸賞金がかけられることもありました。
個体数が減少した後に保護措置が講じられましたが時すでに遅く、最後に確認されているフクロオオカミは1936年9月7日にタスマニアの動物園で死亡しました。以下の動画は、最後のフクロオオカミの姿を捉えたものです。
Thylacine - from Tasmania The Wonderland (1935) - YouTube
オークションに出品された頭はキツネに似せられていたものの、普通のキツネであれば上顎の切歯が6本であるはずが、この剥製にはフクロオオカミと同じ8本の切歯が確認できるなどの特徴がありました。オークションサイトによると、出品主はイングランド南西部の骨董(こっとう)市でわずか50ポンド(約1万600円)でこの剥製を購入したとのこと。
オークションが始まると、クランフィールド氏の他にもこの剥製をフクロオオカミだと疑うコレクターがいたことが判明。激しい入札合戦の結果、なんとかクランフィールド氏は6万2600ポンド(約1324万円)という高値で落札することに成功しました。
以下が実際にクランフィールド氏が落札した「キツネの頭」の剥製です。木製の重厚な板に、ユーモラスな顔の頭部が接続されています。

by James Cranfield/@thetaxidermist
クランフィールド氏が落札後に剥製をX線とCTスキャンで調査してもらったところ、正真正銘フクロオオカミの頭であることが確認されました。クランフィールド氏は、「これ以上ないほど素晴らしい知らせでした。正真正銘のフクロオオカミの頭部であるだけでなく、X線検査の結果、剥製の中に最も完璧で傷のない頭蓋骨が見つかったのです。キツネの頭に大金を費やしたことで恥をかかずに済んで、本当に嬉しいです。間違っていたらコミュニティだろうとネット上だろうと、どこにも顔を出すことなんてできませんから」と笑いました。
今回発見された頭部は正式に、国際フクロオオカミ標本データベース(ITSD)に登録されています。ITSDには頭蓋骨や骨格標本、アルコール保存された臓器、顕微鏡スライドなど800点以上の標本が含まれていますが、剥製にされた頭部はかなり珍しいとのこと。
クランフィールド氏は、科学者たちが信頼性の高い非破壊的な方法で剥製を調査できるようにするつもりであり、複数の機関と一般公開に向けた話し合いも行っています。中でも剥製の歯はDNAサンプルを採取するのに適しているそうで、フクロオオカミの遺伝的多様性についてのデータを拡大するのに役立つと期待されています。

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フクロオオカミの剥製がどのようなルートでイギリスに持ち込まれたのかは不明ですが、タスマニアにおける駆除の一環として狩猟された可能性のほかに、「生きたままイギリスに持ち込まれた」という説も考えられます。実際、フクロオオカミは20世紀初頭に輸出され、ロンドンを含む世界各地の動物園で展示されていたとのこと。この際にイギリスで死んだ個体を、そのままイギリスで剥製にした可能性もあるそうです。
この点を明らかにするため、クランフィールド氏は剥製の土台となっている木材を分析してもらいたいと考えています。「木材の種類や盾の材質を検査し、それがオーストラリア固有の樹種であることが判明すれば、その装飾品はオーストラリアで作られ、歴史上のどこかの時点でイギリスに渡ってきたという私の仮説を裏付けることになるでしょう。もし台座を作るのに使われた木材がイギリス産だと判明すれば話は変わり、『なるほど、これはイギリスで加工されたものだったのか』と判断できるでしょう」とクランフィールド氏は語りました。
