口に安全ピン、裸足で画鋲、朝起きるとベッドが…元グラドルのデスマッチ女子・杏ちゃむが語った“普通じゃない日常”
〈「水着のパッドに札束が…」16歳で大手サラリーマン並の月収を稼いでいた人気グラドルが、デスマッチのリングに上がるレスラーになった“意外なきっかけ”とは〉から続く
人気グラビアアイドルの座を捨て、デスマッチの世界に骨を埋めるため退路を断った杏ちゃむさん。自主興行を合同開催するなど、プロ8年目にしてその存在感はますます大きくなっている。
【閲覧注意】 リング上で信じられないほどの傷を負いながら戦う姿、打って変わってプライベートのかわいらしい姿…“ギャップが激しすぎる”杏ちゃむの写真を一気に見る
一方で、一人の女性としての素顔は20代そのもの。複雑な家庭環境で育ち、リング上で傷を増やし続ける彼女が思い描くリアルな恋愛事情と、胸に秘めた将来の夢を聞く。

写真は本人Xより
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「実はプロレスラー」合コンで起きた悲劇
--デスマッチを主戦場とする女性。恋愛において男性から引かれてしまった経験はありませんか。
杏ちゃむ ありますね。人生で2回ほど合コンに参加したことがあります。女友達から「職業は偽ったほうがいい」とアドバイスを受けて、エステティシャンとネイリストという設定で参加しました。お酒も回って、「いいなぁ」と思える男性といいムードで話していたら、泥酔した女友達が「実はこの子、プロレスラーなんだよ」って。裏切られました(笑)。
--それで男性は引いてしまった。
杏ちゃむ それまでとろんと甘い目でこっちを見てきたのに、急に「マジかよ。じゃあ、腕相撲しよう」とか言い出して。「あぁ、女性としては見てもらえてないな」と。
それからは、飲み屋で仲良くなった常連さんとかにもSNSを教えないようにしています。見られたら、傷だらけの身体で闘っている写真が並んでいるので、戸惑うと思うので。
傷だらけの身体でウェディングドレスを着たい
--女性として、“理想の幸せ”みたいなイメージはありますか。
杏ちゃむ やっぱり、傷だらけの身体を隠さずに、ウェディングドレスが着たいですよね。私たちにとって傷は勲章なので。コスプレがしたいのではなく、傷やそれまでの背景もすべて愛してくれる男性と一緒にいたいなと思います。とはいえ、実際に一緒にいれば綺麗事だけでは済まないので、難しいことも理解しています。
--たとえば杏ちゃむさんと生活するうえで、相手はどんなことを理解しないといけませんか。
杏ちゃむ 蛍光灯デスマッチをやると、皮膚のなかに細分化された破片が埋め込まれて、長い時間をかけて排出されるんです。そうすると、忘れた頃に「あれ、廊下にガラスの破片があるな」ということが起きます。実際、ある朝起きてベッドがキラキラしていることに気づきました。ぜんぶ蛍光灯ですよ(笑)。
デスマッチの痛み
--デスマッチの難しさ、面白さはどこにありますか。
杏ちゃむ 難しさとしては、練習ができないことですね。「来週、蛍光灯を使うから練習しとこう」とはならない。すべて1回きりです。武器を自作することも多いですが、必ずしも相手だけが食らうとは限らない。自分が食らうことも想定しないといけません。
また、ファンは派手で過激なものを求める傾向がありますが、案外「一般の人たちが数万分の1でも理解できる痛み」を演出することが大切というのもレスラーがわとしての面白さですかね。紙で指先を切った経験は誰にでもありますよね。だから、相手レスラーの指と指の間を紙で割いてやれば、想像ができる。蛍光灯のような派手な武器も魅力的ですが、蛍光灯で殴られたことがある人ってあんまりいないじゃないですか。そういう想像力が鍵になると思っています。
--デスマッチをやって知った痛みはありますか。
杏ちゃむ 裸足で画鋲デスマッチとか、口に安全ピンを貫通させるデスマッチを経験してきましたが、往々にして刺すときよりも抜くときのほうが痛い……ということですね。凶器がなくなって、もとの姿に戻ろうとするときのほうが痛みを強く感じるんです。
--日頃から痛みには強いのでしょうか。
杏ちゃむ 「くる」と分かっている痛みは耐えられると思います。採血のときには自分で動画を回したり(笑)。ただ、不意をつかれる痛みは本当に苦手です。
デスマッチレスラーが受ける誤解
--デスマッチは世間から誤解されやすい側面もありますね。
杏ちゃむ 眉をひそめる人と興味を持つ人がはっきりわかれる分野ですから、仕方ないかもしれません。デスマッチに「危険」「恐怖」の側面があることは否定しません。でも、同時に、運営や他のレスラーたちと一緒に作り上げていく芸術作品でもあります。
観客からみて「死ぬのではないか」と思う急所の1mmずれた場所を、サクッと射抜くような凶器さばきができるレスラーたちへの尊敬もあります。クレイジーな試合をするからすごいのではなく、実は繊細な計算のうえに成り立つ美学があるんですよね。私は、凶器によって流血する美しさもあるし、観客がどよめく技を繰り出す美しさもあると思っています。
--ご自身が言われてもっとも嬉しかった評価はなんですか?
杏ちゃむ 尊敬する先輩レスラーから「令和の工藤めぐみ」と呼んでもらえたことでしょうか。ちょうど同じ時期に、お客さんからもそのように言っていただきました。工藤さんは、美しさだけでなく強さも兼ね備えた女子プロレスラーであり、心から尊敬するレジェンドのひとりなんです。私も、職業人として美学を持ち続けられたらと考えています。
意外な“将来の夢”
--プロレス以外で興味を持っていることはありますか。
杏ちゃむ 父の死をきっかけに、実家が空き家になって考えるようになったんですが、長野県の周辺地域には、高齢者がおひとりで暮らしている家がとても多いので、何とか、コミュニケーションと食事を提供できる施設が作れないかなと。それこそ、「おとな食堂」みたいな。
--ご自身の学生時代に感じた寂しさが根底にあるのでしょうか。
杏ちゃむ もしかすると、そうかもしれません。私は家庭の事情で、特に小学生時代はひとりで夕飯を食べることが多く、それがとても寂しかったんです。その後、いろいろな人たちに助けてもらいながら孤独感を薄れさせることができましたが、人生の終末期に同じような思いをしている人がたくさんいると思うと、いたたまれない気持ちになって。将来は、そうした人たちの拠り所を作れたらいいなと思っています。
(黒島 暁生)
