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岡山大学学術研究院環境生命科学学域(農)の藤岡春菜助教と、神戸大学人間発達環境学研究科の佐賀達矢助教は、オオスズメバチの幼虫が見せる、これまで見過ごされてきた行動を発見しました。

【写真を見る】オオスズメバチの幼虫も「夜泣き」する? 昼夜を問わず音を発生させる新たな行動を発見【岡山大学】

この研究成果は、2026年8月20日、国際雑誌「Behavioural Processes」にShort Communicationとして掲載されています。

スズメバチの幼虫が「ガリガリ音」を出すことは知られていた

昆虫は、体のさまざまな器官を使って音を発生させ、仲間とのコミュニケーションに利用しています。スズメバチの幼虫もその一つで、一部の種では、大顎を巣盤の壁に擦りつけることで「ガリガリ」という音を発生させることが知られています。

これまでの研究では、オリエントスズメバチ(Vespa orientalis)を用いた実験において、幼虫が発生させる「ガリガリ音」を働きバチに聞かせると、働きバチによる幼虫への育児行動が誘導されることが報告されています。このことから、「ガリガリ音」は幼虫が働きバチに餌をねだるためのシグナルとして機能していると考えられてきました。

しかし、こうした音の発生が他のスズメバチでも見られるのか、また、幼虫がどのような条件で音を発生させるのかについては、十分に分かっていませんでした。

夜間も、成虫がいない環境でも、音を出し続けていた

inia)の幼虫を対象に、音の発生行動を詳細に観察しました。オオスズメバチは成虫の攻撃性が非常に高く刺傷被害を引き起こす危険性があるため、幼虫のみ、あるいはごくわずかな働きバチとともに採集して実験室内で観察が行われました。

実験では、幼虫を異なる光条件や時間帯に置き、単位時間あたりに発生させる「ガリガリ音」の回数を測定しました。その結果、オオスズメバチの終齢幼虫が昼夜を問わず音を発生させることが明らかになりました。さらに、成虫がいない環境でも音を発生させ続けることも分かりました。

また、給餌を行わない条件では、幼虫は約1週間で死亡するまで飢餓状態が進行しましたが、採集から6日目の幼虫でも「ガリガリ音」の発生頻度に変化は見られませんでした。少なくとも今回の実験条件においては、飢餓状態が進行しても音の発生頻度は低下しないことが示されたことになります。

種によって異なる「音の出し方」

今回の研究では、種間の違いも明らかになりました。

オリエントスズメバチでは4齢幼虫と終齢幼虫の両方で音の発生が確認されているのに対し、オオスズメバチでは終齢幼虫のみが音を発生させるという違いが見つかりました。

幼虫の音発生行動には、スズメバチの種によって異なる特徴があることが示されています。

「餌ねだり」だけでは説明できない可能性

今回の研究で特に注目されるのは、オオスズメバチの幼虫が夜間にも「ガリガリ音」を発生させていたという事実です。

スズメバチの働きバチは基本的に夜間には採餌を行いません。そのため、夜間にも幼虫が音を発生させ続けるという発見は、従来考えられてきた「餌ねだり」のシグナルという説明だけでは成立しない可能性を示しています。

では、幼虫はなぜ働きバチが採餌をしない夜間にも音を発生させるのでしょうか。本研究では、その理由として、働きバチが夜間に巣内へ戻った際に幼虫の発する音を感知することで、巣内にいる幼虫の量や状態を把握し、翌日の採餌行動に役立てている可能性を考えています。

つまり、幼虫の「ガリガリ音」は、単に餌をねだるためだけではなく、巣全体の状態を伝える情報として機能しているのかもしれません。

ただし、今回の研究では実際の巣の内部で幼虫と働きバチの行動を同時に観察することはできていません。そのため、夜間に発生する「ガリガリ音」が実際にどのような情報を伝えているのかは、まだ分かっていない段階です。

研究のきっかけは「BGMのように響く音」

研究を主導した藤岡助教は、この研究のきっかけについて

「共同研究者の佐賀先生の研究室で議論しているとき、部屋に置いていたオオスズメバチの巣から聞こえる『ガリガリ、ガリガリ』という音がBGMのように響いていたことが、この研究のきっかけでした。

オオスズメバチの成虫は獰猛で、刺傷被害を引き起こす危険な昆虫として知られています。しかし、昼夜を問わず音を発生させ続ける幼虫の姿を観察していると、スズメバチに対する印象が大きく変わりました。

身近な昆虫の『意外な一面』に興味を持ってもらえたら嬉しいです」

と話しています。

今後の展望

今後は、より自然な巣内環境に近い条件で幼虫と働きバチの相互作用を観察し、「ガリガリ音」がどのような情報を伝え、働きバチがそれをどのように利用しているのかを明らかにすることを目指すとしています。