ヤクザ”規制緩和”はトクリュウのおかげ 分裂騒動から10余年、6代目山口組「特定抗争指定の全面解除」後控えるビッグイベント
抗争事件が途絶えている
司忍組長率いる6代目山口組(兵庫県神戸市灘区)が分裂してこの8月末でちょうど11年が経過した。司組長の運営方針に反旗をひるがえして井上邦雄組長らが組織を脱退して神戸山口組(兵庫県稲美町)を結成。2017年には神戸山口組がさらに分裂して絆會(旧・任侠山口組/織田絆誠会長、大阪府寝屋川市)が立ち上げられ、2020年には池田組(池田孝志組長、岡山県岡山市)も生まれた。抗争事件も激化し、各府県の公安委員会により、同年に6代目山口組は神戸山口組との間で特定抗争指定を受け、22年に池田組、24年に絆會との間で同じ指定を受けた。市民生活を不安に陥れてきたヤクザたちの対立だが、公安委員会はこの特定抗争指定を順次解除する方向へと舵を切り始めたという。

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この方針転換の第1歩となるのが、6代目山口組と池田組の間で適用されていた特定抗争指定の解除だ。兵庫県など7府県の公安委員会は「9月7日の期限をもってこの両団体に対する規制を延長しない方針」を決めた。
「このまま行けば解除は確実」
「解除の判断に至ったのは、過去2年間にわたり組織間でのいわゆる抗争事件が途絶えていること、警察当局の聴取に対して双方が“これ以上の対立を継続する意思がない”旨、回答したことが大きく関係しています」
と、社会部デスク。
「特定抗争指定から外れることのメリットは、警戒区域内での事務所の新設や既存事務所への立ち入り、5人以上で集まることが可能となる点です。指定の期間は3カ月で、これまで延長が繰り返されていました。分裂をめぐっての特定抗争指定では解除は今回が初めてとなります」(同)
もっとも、これで一気にすべてが元通りというわけではない。6代目山口組と池田組との指定が解除されたとしても、6代目山口組は神戸山口組と絆會との特定抗争指定は続く。そのため、神戸市内などの主要な拠点は今なお封鎖されたままだ。
しかしヤクザ界隈では、まずは2024年に指定された絆會との特定抗争指定について、9月20日に迎える指定期限をもって延長を見送り、解除に踏み切る可能性が高いのではないかと取り沙汰されているという。
「加えて最大の対立軸であった神戸山口組との指定についても解除されるだろうとの見方が浮上しています。取材で接する警察幹部は“このまま行けば解除は確実”と言っていました」(同)
全面解除説の背後にあるのは
「私も同様の話を聞いています。具体的には、10月6日に迎える次回の指定期限ではなく、その次のタイミングで解除されるのではないかという見方が浮上しているとのことです」
と、元山口組系義竜会の竹垣悟氏。つまり、関係者の間では遅かれ早かれ残る2団体との指定がすべて外れ、特定抗争指定そのものが全面的に解除される可能性が現実味を帯びて語られているのだ。
この全面解除説の背後にあるのは、各組織の圧倒的な勢力格差だという。
「全盛期には6代目山口組に匹敵する勢力を誇った神戸山口組ですが、主要な直系組織の離脱や解散が相次いだ結果、現在はわずか300人に満たないレベルにまで激減。絆會はと言うと100人ちょっととされています。一方の6代目山口組は約6300人の構成員・準構成員を擁するとされ、組織力の差異は歴然としている。もちろんそのこと自体は近年しばしば指摘されてきたことですが、去年4月、6代目山口組側は“他団体との抗争は終結した”との宣誓書を警察当局へ提出し、その後、抗争事件は一切発生していません。提出当時は一方的なものとされていましたが、1年以上が経過し、宣誓書がリアルな意味を持ち始めている」(先のデスク)
市民からの不安や不満
特定抗争指定を維持するには「市民への重大な危険があること」が必須要件となるため、これ以上の抗争の恐れがないと判断されれば、当局としても指定を延長する法的な大義名分を失うことになる。
ただ、この指定解除の方針に対しては、事務所周辺に住む地域住民や市民の間から「再び組員が集まり、治安が悪化するのではないか」という不安や不満の声が高まるのは避けられない。強力な立ち入り禁止措置によってようやく平穏を取り戻した地域社会にとって、規制緩和は暴力団の復活を許すかのように映るためだ。
「こうした市民の懸念に対し、当局としては“特定抗争という異常事態に対する特別法のシバリは外れるものの通常の暴力団排除条例や暴対法の規制はそのまま維持される。警察としてはこれまでの厳しい監視体制とはまた違ったアプローチ体制を整備し、地域住民の安全確保には引き続き万全を期すことで、市民の不満や懸念を払拭したい”との考えを粘り強く訴えていくことになるでしょう」(同)
捜査当局の本音
こうした指定解除をめぐる動きが取りざたされているもう1つの背景として、「捜査リソースの選択と集中」という思惑も透けて見える。現在、警察当局が組織犯罪で壊滅戦略のターゲットとしているのは市民生活を震撼させている「トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)」であることは言うまでもない。
「これまでの厳格な暴対法や暴力団排除条例の運用により、暴力団は資金源を絶たれて勢力数は激減しました。注力すべきは旧来のピラミッド型組織を持つヤクザではなく、SNSを通じて離合集散を繰り返して闇バイトによる強盗や特殊詐欺を働くトクリュウであり、警察としては一刻も早く捜査員や予算をそちらへ集中させたいという本音があります。一部、ヤクザにひもづくトクリュウも存在しますが、それはそれで別途取り締まればいい。現実問題として抗争事件を起こさなくなったと判断されればヤクザへの特別規制を解除し、トクリュウ対策という時代や社会の要請にこれまで以上に応えていく構えなのでしょう」(同)
「全面解除」後に
そして、この「全面解除」に続くイベントとして遠からず予想されるのは、6代目山口組の「代替わり」だ。まず昨年4月の段階で、組織運営を担ってきた髙山清司若頭が相談役となり、竹内照明若頭補佐が昇格した。若頭の交代は20年ぶりのことだった。
「すべての特定抗争指定が解除されれば、これまで無人状態となっている神戸市灘区の総本部、通称・篠原に再び全国の直系組長たちが集まり、公式な行事を開催できるようになるわけです。6代目山口組にとって待ちわびた1日になることでしょう」(先の竹垣氏)
これまで6代目山口組の定例幹部会や司組長の誕生日会は特定抗争指定されたエリアを避けるべく、2次団体である瀬戸一家の本部(愛知県瀬戸市)などで集まることを余儀なくされてきた。
「総本部への帰還は節目であり象徴的な意味合いを持つはずです。長年の抗争に対して司6代目が勝利宣言を行って、7代目へと正式に跡目を譲るには好適なタイミングであることは間違いありません」(先のデスク)
特定抗争指定の解除から始まる情勢の変化は、1つの時代の終焉と新たな犯罪形態に対する治安当局の戦いの始まりを告げている。
デイリー新潮編集部
