血糖値が気になっても、運動はハードルが高い。だが、立つ時間を増やしたり、掃除や買い物を工夫したりするだけでも血糖値改善につながるという。内科医の工藤孝文さんが監修した『「血糖値にいいこと」、ぜんぶ集めました。』(青春出版社)より、一部を紹介する--。(第3回)
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■立ち時間を2時間増やすだけで健康改善に

血糖値がちょっと高め。糖尿病にならないように、いまのうちに改善したい。こう思ったら、まずは食生活を改善し、あわせて体をよく動かすことが大切だ。運動をすれば、血液中のブドウ糖がエネルギー源になって血糖値が下がる。でも、運動するのは苦手。ジョギングなんて無理だし、筋トレも気が進まない……。こんな人もいそうだ。

それなら、頑張って運動するのはひとまず置いておいて、座ったままでいる時間を減らすことからはじめよう。日常のなかで、立っている時間を2時間増やせば、消費エネルギーが350kcal増え、インスリンの働きが3割程度アップする。しっかり運動をするのにこしたことはないが、ちょっと活動的に過ごすだけでも効果があるわけだ。

とにかく、こまめに立ち上がり、ちょこちょこ動くようにしよう。

体を動かすのが大事なのはわかる。でも、できれば運動はしたくない。こう思うのなら、いま以上に家事に励んでみよう。身体活動の強度を示す「メッツ」という単位がある。安静時を「1メッツ」として、さまざまな動き方を数値化したものだ。

運動効果は「掃除機がけ>ウォーキング」

たとえば、時速4㎞ほどの普通の速さの歩きは「3メッツ」で、バレーボールや太極拳なども同じ強度だ。これに対して、掃除機がけは「3.3メッツ」、風呂掃除や床磨き、モップがけなどは「3.5メッツ」もある。ごく当たり前の家事をするだけで、ちょっとしたウォーキングや軽いスポーツ以上の運動効果を得られるわけだ。

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料理の合間にスクワット、食器洗いは爪先立ちといったように工夫をすれば、もっと効果が高まり、血糖値の上昇具合が鈍くなりそうだ。

仕事をしていると、立ったり歩いたりする機会が多いので、それだけでもいい運動になる。しかし、リタイア組や家事専業の人の場合、自宅にこもりっきりになりがち。終日、ほとんど動かず、運動量が極端に少ないこともあるだろう。こんな生活をしている人にとって、体を動かす機会になるのが買い物だ。

スーパーや商店街まで歩くと、それなりのウォーキングになる。車で店まで移動する人も、店内では歩き回るので、やはり運動のチャンスといえる。買い物、イコール運動。このようにとらえて、まとめ買いをしないのがおすすめだ。

1回の買い物で大量に買い込むと、せっかくの運動の機会が減る。一方、その日に食べる新鮮な食材、いま必要な日用品だけを買うようにすると、頻繁に出かけざるを得ない。店内ではカートを使わず、カゴを手に持つと、一層いい運動になる。

■「1日1万歩」に科学的根拠はない

健康のためには「1日1万歩」歩かないといけない。血糖値が高いから、この歩数を目指して運動することが大切だ。このように思っている人はいないだろうか。じつは、この切りのいい目標には科学的な根拠はない。

写真=iStock.com/MaskaRad
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よく知られるようになったきっかけは、1960年代に日本で販売された「万歩計」。

このネーミングがとても秀逸で、頭に残りやすかったことから広まったとされている。ただ、国も「1日1万歩」運動を推し進めたことがあり、2000年に厚生労働省による国民健康づくり運動「健康日本21」のなかで提唱されていた。

しかし、2024年からはじまった第3次の「健康日本21」では「成人は1日8000歩」、高齢者は「1日6000歩」という少なめの歩数が推奨されている。健康効果はこれくらい歩けば十分。頑張って1万歩をクリアしても、上乗せされる効果はあまり期待できず、逆に関節やひざを傷める危険性が高まるとわかってきた。このため、8000歩、あるいは6000歩を目指すのがいいという考え方だ。

■日常に「+2000~2500歩」を意識する

ちょっとわかりにくいのは、この数字は通勤や買い物といった、日常の歩きを含めた1日のトータルということだ。きちんと歩数を測定しないと、日常の歩数プラス、どれほどのウォーキングが必要なのかつかめない。その意味から、血糖値が気になる人は、世界保健機関(WHO)のガイドラインのほうが参考にしやすいのではないか。

週に150分以上の中強度の有酸素運動をすれば、生活習慣病のリスクを減らせるという指針だ。ウォーキングでいえば、約1万5000~1万8000歩。1日当たりでは2000歩余り~2500歩ほどになる。時間で換算すれば、およそ20~30分のウォーキングをプラスするといいわけだ。連続して行うのが難しければ、こま切れでもOK。

朝食前に10分、ランチ後に10分、帰宅後に10分といったような歩き方でかまわない。長らく運動不足の人は、徐々に体をならしながら、無理せず取り組んでみよう。

歩くのは最も手軽で、誰にでもできて、健康効果の高い運動だ。しかし、簡単過ぎるのでやる気が薄れて、なかなか続けられない人もいるようだ。そんな飽きっぽい人におすすめなのが、歩数計やスマホのアプリを使って、1日の歩数を「見える化」することだ。

■最初の目標は「低め」でいい

目標を設定しておくと、「よし、クリアできた」と達成感が湧いて、運動を続けるモチベーションになる。歩数の確認については、1日の中でたびたびチェックする習慣をつけておくといい。

工藤孝文『「血糖値にいいこと」、ぜんぶ集めました。』(青春出版社)

夕方になってもまだ足りない場合などには、帰宅時にひと駅手前で降りて歩く、夕食前にウォーキングをするなど、目標達成に向けて意欲が高まりそうだ。目標の歩数は、最初は低めに設定するのが続けるためのコツ。

無理なく達成できるようになったら、ハードルを段階的に上げていくといい。

血糖値を下げたいのなら、運動するのは食事の前がいいか、それともあとのほうが効果的か。答えは、絶対に食事のあとがいい。食事をして糖質を摂取すると、ほどなく血糖値が上昇する。このとき、体を動かしてブドウ糖をエネルギー源として燃やせば、血糖値をスムーズに下げられる。

写真=iStock.com/pain au chocolat
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食後の運動は、急上昇する血糖値のスパイク(とげ)の角度を鈍くする効果もある。血糖値スパイクが繰り返されると、糖尿病のリスクが高まっていくので、普段の生活のなかでできるだけ防ぐことが大切だ。

これに対して、食事の前に運動をしても、食後の運動ほど血糖値を下げる働きはない。運動でブドウ糖を燃やしても、そのあと血糖値が上がるのだからもったいない。ジムで筋トレをしたあと、あるいはジョギング後のビールもやめておこう。

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工藤 孝文(くどう・たかふみ)
内科医
工藤内科院長。福岡県みやま市の同医院で地域医療を行う。糖尿病内科、ダイエット外来、漢方医療を専門として、テレビや雑誌などでも活躍。著書に『痩せグセの法則』(枻出版社)ほか多数。
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(内科医 工藤 孝文)