《女性皇族「受け継がれる人生と覚悟」》皇室と国民の懸け橋を築いた美智子さまの功績 「皇室は祈りでありたい」というお気持ちから続けられた「祈りの旅」の高み
長年議論されてきた改正皇室典範が、7月24日に公布された。これにより、女性皇族は結婚後も皇室にとどまれるようになり、旧11宮家の15才以上の男系男子を対象に、養子として皇室に迎えることが容認される。
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現在、雅子さまを中心に、皇室には11人の女性皇族がいる。女性皇族はどのような道を歩み、何を受け継がれてきたのか。今回は、上皇后美智子さまの足跡を振り返る。【全4回の第2回。第1回から読む】
皇室の"改革"に取り組み「祈りの旅」を続けられた美智子さま
平成の「開かれた皇室」を上皇さまと二人三脚で紡いだのが上皇后美智子さまだ。
「当初、上皇さまのお妃には旧華族や旧皇族の令嬢が候補だといわれていました。しかし、皇室入りを敬遠する女性が多く、皇太子だった上皇さまが『ぼくは生涯結婚できないかもしれない』とつぶやかれたほど。そうしたプロセスを経てお妃候補となったのが民間出身の美智子さまでした」
日清製粉グループの社長令嬢だった美智子さまは、1957年8月、長野県軽井沢市にて開催されたテニス大会で上皇さまと出会われた。成城大学教授の森暢平さんは「テニスコートの出会い」から結婚に至る道のりは平たんではなかったと語る。
「当初、結婚を主導したのは宮内庁でしたが、美智子さまは『私の血は庶民の血でございます』と語って結婚を固辞されました。それほど民間から皇太子妃になるということは前例がなく、大きな障壁だった。
しかし上皇さまが最終的に電話で粘り強く説得し、その正直さに心を動かされた美智子さまが結婚を受け入れました」(森さん)
1959年4月10日、上皇さまと美智子さまの結婚の儀がとり行われ、成婚パレードには約50万人の市民が集った。民間初の皇太子妃の誕生に世は空前のミッチーブームに沸いた。長年皇室取材を続けている、放送作家のつげのり子さんが話す。
「当時の日本はまだお見合い結婚が主流だったのですが、上皇ご夫妻のご結婚によって恋愛結婚が広がっていきました。皇室のあり方は、それほど国民の意識や価値観に大きな影響を与えてきたのです」
皇室に入った美智子さまは次々と"変革"を行われた。
結婚翌年の1960年、浩宮さま(現天皇陛下)が誕生すると、皇室に1000年以上続いた乳母制度を正式に廃止。新しく完成した東宮御所に台所を設置され、自ら料理の腕を振るい、お弁当まで作られた。香淳皇后が望まれた育児法で浩宮さま、礼宮さま(秋篠宮さま)、紀宮さま(黒田清子さん)を愛情深く育てられた。
「東宮御所はご夫妻にとってのマイホーム。当時日本が目指していた、"近代家族制度"を先駆けて行ったのが、天皇家でした。国民と同じような家族を作ろうとしていたのだと思います」(森さん)
もうひとつ、平成時代に上皇ご夫妻が力を入れたのが「祈りの旅」だった。先の大戦の悲しみが残る地や、自然災害の被災地に何度も足を運んでは、戦没者を慰霊し、避難所で床に膝をついて被災者と同じ目線で、励ましの声をかけ続けられた。根底には、美智子さまが抱かれる「皇室は祈りでありたい」というお気持ちがある。皇室研究者で静岡福祉大学名誉教授の小田部雄次さんが言う。
「皇室に生まれた上皇さまには、被災者のなかに入っていくことへの難しさもあったでしょう。そこで、美智子さまが率先して国民に寄り添いました。一人ひとりと握手し、時に抱きしめ肌に触れることはこれまでの皇族のかたには到底できなかった。美智子さまがそうした心の壁を取り払い、本当の意味で国民とつながる皇室を作られた。皇室と国民の懸け橋を築いた美智子さまの功績はとても大きいといえます」
旧皇族や旧華族からの風当たりは強かった
平成時代、年間300回以上のご公務をこなし、皇室の伝統や文化になじもうと、ひたむきに努力を重ね、「国民と共に歩む皇室」を作り上げた。だが一方で民間出身ゆえ、旧皇族や旧華族からの風当たりは強かった。会食中に美智子さまのフォークやナイフが"カチャリ"と音を鳴らしただけで、一同が顔を見合わせたこともあったという。
そんな空気が生んだともいえるのが、昭和天皇の第2皇子で上皇さまの弟にあたる常陸宮正仁親王と華子さまのご成婚だ。
「徳川家の血を引く旧華族出身の華子さまの家柄に異議を唱える者はなく、学習院の同窓会である常磐会は美智子さまのご成婚に反対する一方、常陸宮さまのお妃候補として華子さまを強く推薦しました。その影響もあってか、華子さまが常陸宮妃に選ばれ、お見合いから1週間でスピード婚約。1964年に結婚の儀が行われました」(小田部さん)
嫁入り道具とともに愛犬のモアナを連れて皇室入りするほど動物好きだった華子さまは、現在も日本動物福祉協会や日本馬術連盟などの名誉総裁職を担う。「生粋の"お姫さま"である華子さまは、お召し物のセンスも抜群。ご結婚当初からその見事な着こなしは"ロイヤルのお手本"だと定評があり、いまなお園遊会でのお召し物は注目の的です。
近年は車椅子を使用されていますが、重要な場面ではすっとお立ちになる。その凜としたたたずまいには気品と風格が感じられます。常陸宮さまとの間にお子さまはいらっしゃいませんでしたが、夫婦仲むつまじくご公務に精力的に励まれ、当時お世継ぎ問題で苦悩されていた雅子さまに寄り添い続けられたそうです。今年の一般参賀では愛子さまの隣に立ち、笑顔で談笑されるシーンもありました。雅子さまと愛子さまにとって"心の支え"のような存在なのでしょう」(皇室記者)
(第3回に続く)
※女性セブン2026年9月10日号
