生成AI「従量課金化」の波、日本企業を襲うリスク…「月額定額」の終焉と「投資100万円未満」が約半数の致命的ギャップ
生成AIの利用急増に伴い、主要AI事業者が「月額定額」から「従量課金」へ舵を切り始めている。世界的にAIコストが高騰し高額請求のリスクが高まる一方、日本企業の約半数はAI投資が「100万円未満」にとどまるのが実態だ。このコスト構造の変化と国内の投資不足というギャップは、日本の生産性や国際競争力にどのような影を落とすのか。最新の調査データから見えてくる日本の課題を読み解く。
生成AI従量課金化と日本の投資課題
生成AI(人工知能)の消費量が急増する中、米アンソロピックなどAIサービスを提供する企業の従量課金制への移行が相次いでいる。これまでは月額料金を払えば、ユーザーは自由にAIエージェントなどのサービスを使うことができたが、従量課金となったことで突然、高額料金を請求されるケースも出てきている。
ただ、多くの日本企業における生成AI関連投資はなお少額だ。AI利用に大幅な制限がかかって生産性の伸びを抑制する可能性もあり、今後の対応が注目される。
生成AIに「5億円以上投資」は2.3%
日本企業が生成AIへの投資拡大に踏み切れずにいる実態を浮き彫りにしたのが、クラウド構築支援を手掛けるFIXERが2026年2月に実施した企業経営者らへのアンケート調査だ。同社が全国の従業員300人以上の企業の経営者や管理職などを対象に2月1日〜2月2日に実施し、800件の回答を得た。
アンケートで「現在、どの程度の金額を生成AIに投資しているか」と聞いたところ、最も多かったのは「0〜100万円未満」で47.1%に達した。大企業の半分近くがなお少額の投資にとどまっていることがわかる。次に多かったのは「500万円以上〜1,000万円未満」で2.8%、「100万円以上〜500万円未満」が2.6%で続いた。一方で、「1億円以上〜5億円未満」との回答は1.5%、「5億円以上」は2.3%にとどまった。
「今後の生成AIへの投資をどうするか」との質問に対しては、「現状と変わらない」が33.9%で最多だった。「投資を大きく増やしていきたい」は9.4%、「投資を増やしていきたい」は19%に達した。現状では「投資を増やす」を「現状維持」が上回っているが、今後、生成AIへの従量課金が主流になっていくと考えられ、AI分野の予算を増やす必要が出てきそうだ。
AIエージェント普及でAI利用量は30年に24倍に
米金融大手のゴールドマン・サックスの報告書によると、2030年の世界月間トークン(AIが言語を処理する際の最小単位)処理量は120京個に達し、26年時点の約24倍になる見通しだ。
AIの使用量が急増する背景には、「AIエージェント」の普及がある。AIエージェントは自律的に仕事を果たすために、エンジニアの指示によって、さまざまな作業を長時間にわたって繰り返していく。チャットのやりとりやコードの生成に比べて、計算量が急増するのが特徴だ。AIサービスの提供側は、従来の定額プランでは計算にかかるコストを回収しづらくなり、従量課金を導入し始めているというわけだ。この結果、利用企業ではIT企業を中心にAI利用のコスト増が懸念されつつある。
KPMGが実施した年間売上高5000万ドルを超える企業(20か国)の上級幹部2145人を対象にした調査によると、AIエージェントの導入規模を縮小したと答えた経営層が49%を占めた。一方、AIを引き続き投資の最優先事項に挙げた経営層は79%にのぼっている。
日本企業の経営層にとってもAIを活用した生産性向上は最優先事項の1つだ。一定の制限を設けながら従量課金のAIサービスを活用するのか、定額料金サービスを選ぶのか。激化する国際競争を勝ち抜くためにも、コスト増と投資効率、競争力向上をにらみながら企業戦略と投資計画を策定する必要性が高まっている。

