『脂質異常症』が気になるなら“飲まないほうが良い飲み物”をご存じですか?【医師解説】

脂質異常症は自覚症状がほとんどなく、気付かないうちに動脈硬化を進め、心筋梗塞や脳梗塞などの引き金になることがあります。コレステロールは体を作る材料、中性脂肪はエネルギーの貯蔵庫で、どちらも必要ですが、量やバランスが崩れると病気のリスクにつながります。血液中の脂質の値が基準から外れた状態が脂質異常症で、数値の高さだけでなく年齢や喫煙などのリスク因子も合わせて判断します。本記事では、予防のポイントや健診で異常を指摘されたときの対応について、立川パークスクリニック院長の久住先生に聞きました。

※2026年7月取材。

監修医師:
久住 英二(立川パークスクリニック)

新潟大学医学部医学科を卒業後、虎の門病院血液内科に勤務。2024年に「立川パークスクリニック」を開院し、現在は院長を務める。日本血液学会血液専門医。

コレステロールと中性脂肪はどう違う?

編集部

そもそも、コレステロールと中性脂肪は何が違うのでしょうか?

久住先生

どちらも血液中にある脂質ですが、役割が異なります。コレステロールは細胞膜やホルモン、胆汁酸(たんじゅうさん)の材料になる大切な成分です。一方、中性脂肪はエネルギー源として使われますが、余った分は内臓脂肪や皮下脂肪として蓄えられ、肥満を招きます。つまり、コレステロールは「体を作る材料」、中性脂肪は「体を動かすエネルギーの貯蔵庫」と考えると分かりやすいでしょう。どちらも必要ですが、多すぎたりバランスが崩れたりすると、病気のリスクにつながります。

編集部

よく聞くLDLコレステロールとHDLコレステロールは、どう違うのですか?

久住先生

LDLコレステロールは、肝臓で作られたコレステロールを全身に運ぶ役割を担っています。ただし増えすぎると、血管の壁にたまりやすく、動脈硬化を進める原因になります。そのため一般に「悪玉」と呼ばれます。一方、HDLコレステロールは余分なコレステロールを回収して肝臓へ戻す働きがあり、動脈硬化を防ぐ方向に働くため「善玉」と呼ばれます。つまり、どちらも体に必要ですが、量とバランスがとても重要なのです。

編集部

コレステロールや中性脂肪に異常があると、なんらかの症状が出るのですか?

久住先生

脂質異常には特徴的な症状はありません。ただし、内臓脂肪が過剰に蓄積して体がメタボリックシンドローム(以下、メタボ)の状態になると体内で炎症が起こり、だるい、疲れやすいなどの症状が出ることがあります。しかし、そのような症状は慢性的にゆっくり進行するので、「仕事が忙しいから」「歳をとったから」などと自己判断する人がほとんどで、「メタボ炎症が原因だ」と気付く人は非常にまれです。そのまま放置すると少しずつ動脈硬化が進み、ある日突然、心筋梗塞や脳梗塞として発症することもありますし、認知症の原因となることもあります。そのため、「数値に異常があっても、症状がないから大丈夫」とは言えないのです。

脂質異常症とは?

編集部

脂質異常症とは、どのような状態を指すのですか?

久住先生

脂質異常症とは、血液中の脂質の値が基準から外れている状態です。具体的には、LDLコレステロールが高い、HDLコレステロールが低い、中性脂肪が高い、といった状態になります。以前は「高脂血症」と呼ばれていましたが、HDLコレステロールの低下も含めて評価するため、「脂質異常症」という名称が使われるようになりました。

編集部

数値が少しだけ基準から外れている程度でも、脂質異常症と考えて治療を始めたほうがよいのでしょうか?

久住先生

健診で基準を超えていても、すぐに薬が必要になるとは限りません。ただし、数値の異常を軽く見ないことは大切です。脂質異常症は、数値の高さだけでなく、年齢、喫煙、高血圧、糖尿病、家族歴など、ほかのリスク因子も合わせて考えます。つまり、同じLDLコレステロール値でも、その人の背景によって対応は変わるということです。だからこそ、自己判断で放置せずに、一度医師に相談して今後の方針を確認することが重要です。

編集部

脂質異常症の原因には、どのようなものがありますか?

久住先生

多くは生活習慣と関係していて、食べすぎ、脂っこい食事、運動不足、肥満、飲酒、喫煙は代表的な要因になります。また、糖尿病、甲状腺機能低下症、腎臓病など、ほかの病気が背景にある場合もあります。さらに、家族性高コレステロール血症のように、遺伝的にLDLコレステロールが高くなりやすい病気もあります。特に、若いころから数値が高い人や、家族に心筋梗塞の人がいる場合は、体質の影響も考えておく必要があるかもしれません。

編集部

脂質異常症を放置すると、どんな病気につながりますか?

久住先生

最も問題になるのは、動脈硬化が進むことです。血管の壁に脂質がたまると、血管が硬く、狭くなり、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞、閉塞(へいそく)性動脈硬化症(足などの血管が狭くなり血流が悪くなる病気)などにつながるおそれがあります。また、中性脂肪が極端に高い場合には急性膵炎(すいえん)の原因になることもありますし、内臓脂肪が多くメタボの状態になるとがんのリスクが高まることも知られています。つまり、脂質異常症そのものが問題になるというより、将来的に重大な疾患の土台になりうる病気と考えるとよいでしょう。そのため、症状がないうちから気付き、予防的に介入することが大切なのです。

予防するにはどうしたらよいのか?

編集部

脂質異常症を予防するには、まず何から始めるとよいでしょうか?

久住先生

まずは食生活の見直しから始めるのが基本です。炭水化物や油など、エネルギーのもととなる食べ物の食べすぎを避け、菓子類、甘い飲み物を取りすぎないことが大切です。野菜や海藻などの食物繊維を取り、良質な肉、魚、大豆製品などタンパク源を意識して増やしましょう。また、夜遅い食事や間食の習慣はエネルギーの過剰につながりやすく、注意が必要です。

編集部

果物のジュースは健康によいと考えて飲んでいる人も多いと思います。これは正しいのでしょうか?

久住先生

果物には果糖が多く含まれ、脂肪肝や肥満の原因になります。ただし果物をそのまま食べれば、食物繊維も多いので吸収はゆっくりで、ビタミン類などを豊富に摂取できるメリットもあります。一方、果物ジュースは果糖が速やかに吸収されるため、脂肪肝や肥満につながりやすくなります。同様に、果糖ブドウ糖液糖の含まれる清涼飲料水も避けましょう。ゼロカロリーをうたう人工甘味料入り飲料も、飲み続けると体重が増えることが報告されており、おすすめはできません。理想は飲み物には甘さを一切求めないことです。水やカフェインを含まないお茶などで水分補給をするとよいでしょう。

編集部

運動は、どのくらい効果がありますか?

久住先生

運動はとても重要で、実施すればするだけメリットがあります。激しい運動を急に始める必要はなく、エスカレーターでなく階段を使う、普通に歩くのではなく早歩きにする、立っているときに爪先立ちになるなどでも十分効果があることが分かっています。このように、ちょっとした動作を運動に変えていくことを、欧米では「エクササイズスナック」と呼んでいます。そのほか、週に2回程度、自重でのスクワットなどレジスタンス運動(筋肉に負荷をかける運動)を行うことも効果的です。運動により筋肉が増えると新陳代謝が活発になり、脂質や血糖が上がりにくくなって、内臓脂肪も落ちやすくなります。

編集部

食事と運動以外に、気を付けたいことはありますか?

久住先生

禁煙と節酒はとても大切です。喫煙はHDLコレステロールを下げ、動脈硬化そのものを進めます。もちろん、「加熱式や電気式のタバコなら安全」ということもないので禁煙を心掛けましょう。また、アルコールは過剰に摂取すると中性脂肪を大きく上げることがありますし、発がん性があることも分かっています。それからアルコールは「エンプティカロリー」といって、栄養素はないけれどエネルギー源にはなりうるため、過剰に摂取すると内臓脂肪が増え、メタボになる原因になります。特に「お酒は飲まない日はない」「つまみも多い」という人は注意が必要です。

編集部

睡眠やストレスの面で、気を付けたいことはありますか?

久住先生

睡眠不足は食欲を高め、体重増加につながりやすくなります。また、ストレスを紛らわせようとして、喫煙や飲酒、食べすぎが増えると、メタボや健康状態の悪化を招く原因にもなります。そのため、まずは7時間を目安に、十分な睡眠を確保することが大切です。睡眠の質も大切で、7時間寝ているのに疲れが取れない、昼食後は眠くなる、というような人は睡眠時無呼吸症候群など質を低下させる病気がないかチェックすべきでしょう。加えて、ストレス対策としては、適度な運動が有効であることも分かっています。激しい運動でなくても、散歩や軽い体操など、無理なく続けられる活動を日常に取り入れることをおすすめします。

編集部

健診で異常を指摘されたら、どうすればよいのでしょうか?

久住先生

脂質異常症を治療することは、動脈硬化を防ぎ、血管を若々しく保つことにつながります。そして血管の老化を防ぐことは、心筋梗塞や脳梗塞だけでなく、ED(勃起不全)など男性に多い健康問題の予防にも関係するので、ぜひ前向きに治療を始めるとよいでしょう。まずは食事や運動、禁煙など生活習慣の改善から始め、検査値やリスクに応じて薬物療法を組み合わせます。特にLDLコレステロールが高い人、家族に若くして心筋梗塞や脳梗塞を発症した人がいる場合、糖尿病や高血圧がある人はリスクが高いため、早めに医療機関を受診しましょう。

編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

久住先生

脂質異常症をコントロールすることは、若さを保ち、何歳になっても女性らしく、また男性らしく元気に過ごす上でとても大切です。医師から的確なアドバイスを受けながら、ぜひ前向きに治療に取り組み、楽しい人生を長く送れるようにしてもらいたいと思います。

編集部まとめ

脂質異常症の治療は、将来の病気を防ぐだけでなく、血管を健康に保ち、日々を元気に過ごすためにも大切です。検査値をそのままにせず、まずは医師に相談することから始めたいですね。

医院情報

立川パークスクリニック

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