オブスタクルスポーツで日本人初の世界一 吉野川市の「ペンギンの工藤」【徳島】
さまざまな障害物を乗り越えてゴールまでのタイムを競う、オブスタクルスポーツ。
いま注目されているこの競技で8月、日本人初の世界チャンピオンが吉野川市から誕生しました。
世界の頂に立った男性の素顔に、カメラが迫りました。
オブスタクルスポーツ。
2028年のロサンゼルスオリンピックでは、近代5種のひとつに入る、いま注目の競技です。
8月、アイスランドで行われた世界選手権。
手前を走るこの男性。
見事なスタートダッシュで、相手を突き放します。
体幹のバランス、そしてこの滑り込み。
レース後半も、全くスピードが落ちません。
そして、圧倒的な差を広げてゴール。
渾身のガッツポーズを見せます。
見事、日本人初の優勝を果たしたのは、工藤剛也さん38歳です。
(世界選手権優勝・工藤剛也さん)
「正直あまり覚えてなくて、必死だったので、本当にやったぞとその一言です」
高越山の麓、吉野川市山川町で生まれた工藤さん。
子どもの頃は白球を追いかける、野球少年。
練習に明け暮れました。
大学を卒業後、介護福祉士の資格を取得。
主に訪問介護の現場で働きながら、競技を続けています。
(世界選手権優勝・工藤剛也さん)
「お待たせしました」
そんな工藤さん、2年前オブスタクルスポーツに出会い、週末は吉野川市鴨島町にある吉野川コースで汗を流しています。
(世界選手権優勝・工藤剛也さん)
「地元の飲食店に、オブスタクルスポーツのコースができるというチラシを見つけて」
「(チラシを)見た瞬間に決めて、そこからどはまりして、ずっとやってます」
オブスタクル競技を始めて、いきなり日本選手権で準優勝。
持ち前の身体能力で頭角を現します。
そんな工藤さん、何がすごいのでしょうか?
(埼玉県から・今井優雅さん)
「ペンギンです」
え!ペンギン?、一体どういうこと?
(香川県から・久保樹さん)
「ペンギンの工藤です」
(記者)
「なぜペンギンの工藤?」
(香川県から・久保樹さん)
「ペンギンが氷の上を滑るかの如く、ネットの下をくぐるからです」
最大のストロングポイント。
それはネットクロールで減速することなく、ペンギンのように滑るこの動き。
いつしか「ペンギンの工藤」と呼ばれるようになりました。
しかし、これだけではありません。
強さの秘密を探るため、工藤さんの自宅を尋ねると…。
なんとそこには、謎の建物。
これは一体?
(世界選手権優勝・工藤剛也さん)
「ここ作ったのも自分のためだけじゃなくて、みんなで楽しめる施設を作りたいと思って」
(徳島市から・白川知明さん)
「めちゃくちゃありがたいです。練習できるので」
工藤さん、オブスタクルに夢中になるあまり、自宅の空きスペースに約100万円の費用をかけて、世界選手権仕様のコースを作りました。
驚くことに、全て手製なんだとか。
(世界選手権優勝・工藤剛也さん)
「これを曲げるのがめちゃくちゃ苦労した」
今では県内外から、多くの練習生がやってくるほどに。
いつしかこの練習場は、工藤さんの代名詞にちなんで「ペンギン村」と呼ばれるようになりました。
「ペンギン村」では仲間たちにアドバイスを送り、切磋琢磨しながら技術を向上させています。
(世界選手権優勝・工藤剛也さん)
「ここで勢いをつけて」
「お、いいね」
競技と仕事を両立させる、日々の努力。
そして徹底した食事管理が、工藤さんの基礎を作ります。
鶏の胸肉や数種類の野菜などと、玄米と白米をそれぞれ0.5合ずつ。
栄養満点炊き込みご飯を、一日5回に分けて食べます。
徹底した食事管理で、体重を維持しています。
(世界選手権優勝・工藤剛也さん)
「やっぱり体は変わってくる、筋肉を残しつつ脂肪を減らして(栄養を取ると)回復もしやすい」
順風満帆に見える工藤さん。
しかし2025年、練習中にアクシデントに襲われました。
(世界選手権優勝・工藤剛也さん)
「左足のアキレス腱を切って、それが昨年の7月。そこからすぐ手術した」
選手生命を脅かす大けが。
しかし諦めることなく、懸命のリハビリによって競技に復帰し、日本人初の世界一に。
一緒に戦ってきた仲間からも、特別な思いを寄せられます。
(香川県から・久保樹さん)
「本当は実力が図抜けているのに、けがとかがあって日の目を見ない期間が長かった」
「けがさえなければ、工藤剛也はあれくらいの実力はあると、みんなわかっていたのですが」
「それが世界一という結果で花開いて、工藤さんの周りの人みんなめっちゃ嬉しいと思う」
工藤さんが成し遂げた偉業に、仲間たちは驚きと歓喜に包まれています。
(吉野川コースを建設・松島清照さん)
「ここが出来てちょうど2年。2年余りで世界チャンピオンが出るとは思っていなかった」
「同じ練習をしている人が世界で通用する、(工藤さんは)チャンピオンですから、みんなの意気込みが違う」
(練習にきた小学生)
「世界一が、目の前にいるということが驚きです」
世界を制した工藤さんの、次なる目標は?
(世界選手権優勝・工藤剛也さん)
「今年世界をとったが日本一はとってないので、しっかり日本一とって、この一年をハッピーに終わらせたいと思う」
オブスタクルスポーツに出会い、人生が一変した工藤さん。
これからも、みんなの憧れとして走り続けます。
工藤剛也の挑戦はまだまだ終わりません。
工藤さんが出場する、第3回オブスタクルスポーツ日本選手権は、9月26日に吉野川市の「オブスタクルスポーツ吉野川コース」で行われます。
