東京バレエ団のプリンシパル宮川新大、「海賊」でコンラッド踊る…「みんなを率いるオーラ出せたら」
抜群のテクニックと安定感のある踊りで、東京バレエ団の数々の公演で主役を務めてきたプリンシパル宮川新大(あらた)。
3月には文化庁芸術選奨舞踊部門で文部科学大臣賞を受賞した。今月末、東京・初台の新国立劇場で行われる受賞記念の公演「海賊」では、海賊の首領コンラッドを演じる。(小間井藍子)
地中海を舞台に、コンラッドと奴隷の少女メドーラとの恋を描いた古典作品。コンラッドの奴隷アリを含め、それぞれのソロの踊りはガラ公演やコンクールで披露されることも多い人気演目だ。「跳んで回ってと、踊りが詰まっている。華やかな作品」と説明する。
今回は、極力マイム(演技)を排し、踊りの見せ場を充実させたアンナマリー・ホームズ版。アメリカン・バレエ・シアター(ABT)のレパートリーとして1998年に作られたものだ。映像化されたこともあり、宮川も子どもの頃からビデオテープがすり切れるほど見たという。「『青春のバイブル』。男性ダンサーで見たことない人はいないんじゃないかな」
ABTでコンラッドを演じたイーサン・スティーフェルが芸術監督を務めていたニュージーランドのバレエ団に一時、宮川は在籍していた。それだけに、“ご縁”を感じている。「憧れのイーサンが得意とした役を踊れるのがうれしいです。首領としてみんなを率いるオーラを出せたら」
コンラッドを踊るのは5年ぶり2度目となる。相手役のメドーラは前回と同じ秋山瑛(あきら)で、「彼女とは様々な公演で組んできて信頼しているパートナー。何も心配していません」。また、昨年入団した超絶技巧の二山治雄がアリを演じることも注目だ。バレエ団の初演ではアリ役だった宮川は、「おいしい役なので、思う存分やって拍手をさらってほしい」と笑みを浮かべた。
92年生まれ、福井県出身。ドイツの名門ジョン・クランコ・スクールで学び、東京バレエ団には2015年に入団。18年にプリンシパルに昇格した。「中国の不思議な役人」の真っ赤な口紅を塗った娘役や「くるみ割り人形」の猫役など、モーリス・ベジャール作品におけるトリッキーな役でも存在感を発揮してきた。「とっても楽しんで踊る自分を発見した。作品に育てられてここまで来た」と声を弾ませる。
今回の「海賊」から約2週間後にある公演「白鳥の湖」(9月9〜13日)では、主演のジークフリート王子を2回務める。その後も「オネーギン」(11月6〜8日)で2回、表題役が控える。後者については「大人の雰囲気が必要となる役。これほど早くやるとは思っていなかったが、任されたからには期待に応えたい」と意気込みを語った。
「海賊」は8月26〜30日。宮川は27、29日の2回、コンラッド役で出る。(電)03・3791・8888。
東京バレエ団「オネーギン」、11月上演…斎藤団長「最終目標」
東京バレエ団は今後も重要公演が続く。その中で斎藤友佳理団長が「最終目標」としてきたジョン・クランコの傑作「オネーギン」を11月に上演する。
プーシキンの小説が原作の作品で、誠実なタチヤーナと憂鬱(ゆううつ)の貴公子オネーギンの悲恋を描く。斎藤は2010年と12年に踊った。「男女の関係以上に、もっと深い感情を音楽や振りで表現する。私が経験した世界を、一緒に歩んできたダンサーに知ってもらいたいと強く思ってきました」
15年に芸術監督に就任して以来、「『パ』(ステップ、動きの総称)を言葉に変えて、最終的には俳優になって」と団員に説き続け、バレエ団の表現力を磨いてきた。22、24年にクランコ版「ロミオとジュリエット」を踊らせるなど経験を積ませた結果、「精神的に大人になってきた」と実感できたことから「今だ」と、14年ぶりの上演を決断した。
宮川とダブルキャストでオネーギンを踊る柄本弾は、「初演の時、舞台袖で見てあまりの美しさに感動して泣いてしまった。今回、チャレンジさせてもらえる機会をいただけて素直にうれしいです」と語る。
12月には、第37次海外公演としてイタリアのトリノ王立歌劇場で金森穣振り付けの「かぐや姫」のプロローグと第1幕などを上演する。公演初日の10日には海外公演通算800回を達成する。(編集委員 祐成秀樹)
