イメージ画像

写真拡大

「親が亡くなって調べてみたら、地方に知らない土地があった」「実家を相続したものの、誰も住まないし、売ろうにも買い手がつかない」。

相続の相談を受けていると、こうした話は珍しくない。昔であれば、「土地を相続できる」と聞けば、財産が増えるというイメージを持つ人が多かっただろう。

しかし、今は必ずしもそうではない。使う予定がなく、売ることも難しい不動産は、資産どころか家族に負担を残す「負動産」になりかねないからだ。

中山美穂さんの相続で問われる「最大55%課税」の現実 “海外は無税”は本当か…日本の相続税の歪み

総務省の2023年住宅・土地統計調査では、全国の空き家は900万2000戸、空き家率は13.8%と、いずれも過去最高となった。

誰も住まない実家でも、所有している以上は管理が必要。固定資産税がかかることもあり、庭の草木が伸びれば近隣への対応が必要になるかもしれない。屋根や外壁が傷めば修繕費もかかる。山林であれば倒木などの問題もある。相続人が遠方に住んでいれば、現地を見に行くだけでも一苦労だ。

こうした中で、改めて知っておきたいのが「相続放棄」。相続放棄というと、親に多額の借金があった場合に利用する制度という印象が強いかもしれない。しかし最近では、借金だけでなく、管理が難しい不動産を引き継ぎたくないとして検討されるケースもある。

最高裁判所の司法統計によると、相続放棄の申述受理件数は2025年に32万3524件となり、増加が続いている。

相続放棄する場合の注意点

ただし、相続放棄には大きな注意点がある。

まず、いつまでも考えていられるわけではない。原則として、自分のために相続が始まったことを知った時から3カ月以内に、家庭裁判所に申述する必要がある。

葬儀が終わり、役所や銀行の手続きをしているうちに3カ月という期間は意外と早く過ぎる。財産や借金の全体像が分からず判断できない場合には、家庭裁判所に熟慮期間の伸長を申し立てることもできる。

もう一つ、特に誤解されやすい点がある。

相続放棄では、「いらない土地だけを捨てる」ということはできない。例えば、親が預金3000万円と、ほとんど利用価値のない地方の土地を持っていたとしよう。

「預金は相続する。でも土地はいらない」。

気持ちとしては分かるが、相続放棄でそのような選び方はできない。放棄すれば、その相続について初めから相続人ではなかったものと扱われ、預金などのプラスの財産も、借金などのマイナスの財産も原則として引き継がないのだ。

また、自分が放棄することで、他の相続人や次順位の親族に影響が及ぶケースもある。不要な土地だからといって、自分だけ放棄すれば解決するとは限らない。

財産は相続しながら不要な土地だけを手放したい場合

では、預金などの財産は相続しながら、不要な土地だけを手放したい場合はどうすればよいのだろうか。

選択肢の一つが、2023年に始まった「相続土地国庫帰属制度」だ。一定の要件を満たせば、相続などで取得した土地を国に引き渡すことができる。法務省によると、2026年7月末までに5863件の申請があり、3008件が国庫に帰属している。

もっとも、「いらない土地なら国が引き取ってくれる」という単純な制度ではない。建物がある土地や担保権が設定されている土地、境界が明らかでない土地などは対象にならない。一律1万4千円の審査手数料に加え、承認された場合には原則20万円を基本とする負担金も必要だ。

相続というと、預金はいくらあるか、相続税はいくらかかるか、といった話に目が向きがち。しかし、これからは「何をもらえるか」だけを考える時代ではないだろう。

親がどこに不動産を持っているのか。その土地を将来誰かが使うのか。売れる土地なのか。管理を続けられるのか。親が元気なうちに一度確認しておくだけでも、相続が起きた後の選択肢は大きく変わる。

財産を次の世代へ残すことは大切。一方で、次の世代に「いらない財産」を残さないことも、これからの相続対策の一つではないだろうか。

文/亀田敬亨 内外タイムス