「電動パーキングブレーキ」による快適な運転っぷりに手放せなくなる人続出! 万能装備と思われがちだが「落とし穴」に要注意

この記事をまとめると
■EPBは操作性や快適性で新型車への採用が拡大している
■整備の複雑化や電源トラブルが弱点となりうる
■寒冷地では凍結にも注意が必要だ
いまや新型車は電動パーキングばかり
かつてサイドブレーキといえば、運転席と助手席の間にあるレバーを「ガシャッ」と引き上げるものだった。あるいは足もとにある小さなペダルをカリカリッと踏み込むタイプもあった。どちらもワイヤーなどを介して機械的にブレーキを作動させ、駐車時にクルマが動かないように固定する仕組みだ。
しかしここ数年、新型車ではその姿を見かける機会が減っている。運転席まわりを見渡すと、多くの新型車にスイッチひとつで作動する「電動パーキングブレーキ(EPB=Electric Parking Brake)」が採用されている。以前は輸入車や高級車の装備という印象が強かったが、最近は軽自動車にも採用が広がり、メリットずくめの装備に見える。しかし本当にデメリットはないのだろうか。EPBが支える快適さの仕組みと、見落とされがちな弱点を整理していきたい。

EPBは、モーターなどの電動アクチュエーターによってパーキングブレーキを作動させる仕組みだ。ブレーキキャリパーにアクチュエーターを組み込む方式や、ドラムブレーキと一体化した方式など、構造は車種によって異なる。電子制御ゆえに、停車中もブレーキペダルを踏まずに制動力を保つ「オートブレーキホールド」機能と組み合わせやすく、信号待ちや渋滞時に足を休められる快適装備として広まった。
実際、ホンダは2021年、当時の「N-BOX」の一部改良でオートブレーキホールド機能付きの電子制御パーキングブレーキを全タイプに標準装備し、同時にACCを「渋滞追従機能付ACC」へ進化させた。ダイハツの「タント」も、Lグレードを除く全グレードにEPBとオートブレーキホールドを標準装備する。全車速追従機能付ACCも、Lグレードを除きメーカーオプションの「スマートクルーズパック」として用意されている。両車からは、停止まで対応するACCと停止状態を保持する機能を組み合わせることで、運転負担を減らそうとする方向性がうかがえる。

もっとも、全車速追従型ACCにEPBが技術的に不可欠というわけではない。トヨタは2021年発表の新型「アクア」で、全車速追従型レーダークルーズコントロールを標準装備しながらパーキングブレーキは足踏み式のままとしていた。停止保持は通常の油圧ブレーキでも担える以上、EPBは「必須」というより「組み合わせやすい選択肢」に近い。
整備と故障時には負担が大きい
便利さの裏側で負担が増えるのが、整備の場面である。EPBの代表的な弱点は、電動化・電子制御に伴って構成部品や制御系が増え、構造そのものが従来方式より複雑になることだ。後輪のブレーキパッドやシューを交換する際は、モーターが機構を締め付けたままでは作業できないため、あらかじめモーターを解除位置まで戻す操作が必要になることが多い。車種によっては、診断機を使って整備モードに切り替えたり、整備後に初期化・学習作業を行ったりする必要がある。

従来の機械式パーキングブレーキに比べると、DIYでの整備ハードルは高くなる。モーターやセンサーといった電子部品自体が故障した場合も、部品交換が必要になることがあり、不具合の内容によっては、部品代や診断・作業費がかさむ可能性もある。
もうひとつの弱点は、電気に依存する仕組みならではのトラブルだ。EPBはスイッチ操作で作動と解除を制御するため、車両の電源が入っていない状態では通常の操作で解除できなくなる可能性がある。JAF(一般社団法人日本自動車連盟)は公式サイトで、EPBが解除できない場合の対処法として「スタート(パワー)スイッチをオンにし、パーキングブレーキスイッチで解除する」という手順を案内しており、電源の確保が解除の前提であることがわかる。

故障車をけん引したり、積載車へ載せたりする場面では、EPBが解除できないと車輪を自由に動かせない場合がある。車種によっては非常解除の手順が用意されているため、取扱説明書を確認しておきたい。洗車機などで車両をニュートラルのまま移動させる場合も、EPBやオートブレーキホールドが作動しないよう、車種ごとの手順を確認する必要がある。
寒さが厳しい地域でも注意が必要となる。JAFによれば、EPBにはエンジン停止で自動的に作動する車種があり、寒冷地では凍結を避けるため、取扱説明書を確認した上で自動作動しないよう対処することが推奨されている。ワイヤー式のパーキングブレーキも凍結を避け寒冷地では使わないよう案内されているが、EPBの場合はドライバーが意識しないうちに自動でブレーキがかかる点が独特のリスクだ。便利な自動化が、そのまま凍結トラブルの引き金になりかねない。

EPBは、ACCとの連携やオートブレーキホールドによって停車時の疲労を大きく減らしてくれる装備であり、その快適さは一度体験すると手放しがたい。ただし整備のハードルが上がる点や、電源トラブル時には通常の操作で解除できなくなる可能性があること、寒冷地では凍結に注意が必要なことなど、次にクルマを選ぶ際は、こうした注意点も踏まえたうえで、自分のカーライフに合っているかどうかを見極めてみてほしい。


