災害時にも暮らしを守る「お金の備え」と「資産形成」
もしもの備えの「預貯金」とその後の備えの「金融資産」「損害保険」
災害が起きた時のお金の備えには2つの目的があります。「被災直後の生活資金」と「被災後の生活の立て直しにかかるお金」です。
もしもの備えとして最低でも生活費6ヶ月分は預貯金で用意するようにしましょう。病気やケガで働けない場合にもらえる傷病手当金や、失業中にもらえる失業給付は、受給中に所得税の支払いはありませんが、住民税(前年度の所得に基づいて翌年度に支払うルールのため)と社会保険料の支払いは続きます。いくら傷病手当金や失業給付があるといっても、預貯金がないと生活に困ってしまいます。
災害時の出費としては、「ホテルなどの一時的な滞在費」「避難の際に持ち出せなかった衣服や日用品の購入費」「食費などの生活費」などが挙げられます。
また、将来時点においてお金で困ることがないように、かつインフレから資産を守るために、株や投資信託などの金融資産や不動産を活用した資産形成をしましょう。資産形成については後半で触れます。
家を購入している人は、火災保険の内容を確認しましょう。火災保険は、家が火事・洪水・落雷などの被害にあったときに補償を受けられます。家財の補償もつければ、家電や家具が損害を受けた場合に保険金を受け取ることができます。ただし、火災保険は地震の被害では保険金が出ません。地震保険は単体で加入不可、火災保険とセットで加入します。地震保険に加入しているかを確認しましょう。もし加入していなければ、相応の保険料負担はありますが、加入しておくと安心です。
自動車を保有している人は、車両保険の内容を確認しましょう。車両保険は、台風や大雨による水没、洪水、土砂崩れ、強風による飛来物での傷など、多くの自然災害による損害を補償します。ただし、地震・噴火・津波による被害は通常の車両保険では対象外となるため特約の加入が必要です。
平常時から自分がどんな保険に入っているのかを把握しておくのは大切です。
災害時のトラブルと備え
災害が起こったときに気になることをまとめました。
非常時に持ち出すものは?
電気・ガス・水道といったライフラインが寸断される可能性があります。首相官邸のウェブサイトには「災害の『備え』チェックリスト」が掲載されています。
<備えておきたい防災グッズ>
引用:首相官邸「災害の『備え』チェックリスト」より
普段から、非常時に持ち出すものをリュックサックなどに詰めて持ち出せるようにしておきましょう。現金は小銭を含めて2万円~3万円が目安。停電や通信障害などでスマホ決済、クレジットカード、電子マネーなどの電子決済やATMが使えなくなる事態に備え、千円札と硬貨を多めに用意しましょう。被災直後はつり銭が枯渇しやすく、少額の買い物で1万円札を出しても受け取ってもらえないことがあるようです。
スマホは連絡や決済手段だけでなく、カメラやライトなどもあり、災害時に大活躍します。モバイルバッテリーは必ず用意しておきましょう。手回しや太陽光などで充電できるような装置を入れておくのがより安心です。
紙幣が濡れて破れてなくなった場合、燃えて一部なくなった場合は?
紙幣が濡れて破れてなくなった場合や、燃えて一部なくなった場合でも、一定部分残っていれば金融機関で交換可能です。紙幣の面積が3分の2以上残っていれば額面全額と交換できます。3分の2未満の場合でも、5分の2以上残っていれば額面半額と交換できます。本交換は、災害時だけの対応でなく常時対応しています。
現金が必要だけど、通帳・キャッシュカード等がない場合は?
通帳やキャッシュカードがない場合、金融庁等の金融上の措置の要請を受けた各銀行・信用金庫・郵便局などでは本人を確認するマイナンバーカードや運転免許証などの本人確認書類があれば、10万円程度であれば預金の引き出し可能です。届出の印鑑がない場合には拇印でOK。
本人確認書類がない場合でも、例外的に店頭で口頭確認により引き出しできる場合もありますので、諦めずに金融機関の窓口に問い合わせをしましょう。
ケガや病気をしたもののマイナンバーカードや資格確認書がない場合は?
大きな災害であれば、「災害救助法適用地域」に指定されます。この指定がある場合、マイナンバーカードや資格確認書がなくても医療機関の窓口で氏名・生年月日・連絡先・加入している医療保険の名称・勤務先などを口頭で伝えるだけで、保険診療を受けられます。住居が全壊・半壊などしている場合や、病状が重い場合などには、3割の医療費(自己負担分)の支払いの猶予も受けられることがあります。
損害保険の申請をする際の注意点は?
損害保険の申請をするときには、被害に遭ったことを証明しなくてはなりません。すぐに片付けて掃除したいと思うかもしれませんが、その前にスマホなどで被害状況を写真に必ず収めましょう。1枚だけではなく、全体を写したもの、アップにしたもの、角度を変えたものなど、たくさん撮っておきます。写真は損害保険だけでなく、自治体から公的支援や義援金を得る際に提出する「罹災証明書」に必要となる場合があります。
災害時にも暮らしを守る資産形成
十分な資産があることは、被災中の精神的な安心につながるだけでなく、被災後の選択肢を広げてくれます。
正直、資産形成は難しくありません。時間をかけながらまとまった資産を築くならば、長期・積立・分散投資を実践すれば良いからです。
金融庁「はじめてみよう!NISA早わかりガイドブック」には、1989年以降、毎月同じ金額ずつ国内外の株式と債券に積立投資した場合の年間収益率が紹介されています。
<1989年以降における積立・分散投資5年と20年のパフォーマンス比較>
引用:金融庁「NISA早わかりガイドブック」より抜粋
保有期間が5年だとタイミングによって利益が出ることも損失が出ることもあることがわかります。しかし20年投資した場合は、少なくとも1989年以降のデータでは元本割れすることなく、年率2%~8%で増やせています。
あくまでも過去データに基づく分析なので、将来の保証・予測するものではありませんが、長期・積立・分散投資をすることで、堅実にお金を増やせる可能性が高いということは言えるでしょう。
将来の市場がどうなるのかは、誰にも予測がつきません。それであれば、複数の資産を組み合わせておくのがベターです。
価格変動の大きい株(株に投資する投資信託)だけに投資するのではなく、債券(債券に投資する投資信託)、金(金に投資する投資信託)へ投資を行ったり、複数の資産に投資するバランス型投資信託を活用したりすれば、資産全体の値下がりリスクを軽減しながら、堅実に資産を増やす期待ができます。
長期の目線で考えれば、金融資産への投資だけでなく、不動産投資にも取り組んでおきたいところです。不動産投資は、投資用の物件を購入して貸し出すことで賃料を得る投資です。
不動産投資の最大のメリットは「他人資本」で投資ができること。不動産投資ローンは、自分の信用力を活用して融資を受けて投資ができます。自分のお金で投資するよりも、10馬力・20馬力になって資産形成ができるのが大きく、資産形成のスピードも増します。
不動産投資はローンの返済中は家賃とローン返済額が相殺されますので、キャッシュフローはほぼないか、よくてもわずかにプラス程度です。しかし、ローンの返済が終われば、家賃収入が丸ごと収入となります。一気にキャッシュフローがプラスになるため、安定した収入が毎月手に入ります。
ローンを借りて不動産投資を行うことは死亡保険の代わりにもなります。ほとんどの場合、団体信用生命保険(団信)に加入するからです。団信は、ローンを借りている人が亡くなったり、高度障害状態になったりしたときにローンが完済されて、以後のローンの支払いがゼロになる保険です。返済中にもしものことがあっても、遺族にローンのない物件を残せますし、遺族も不動産の保有を続けることで、安定した家賃収入を得られます。
生活防衛資金を確保し、必要な損害保険に加入し、長期的な資産形成に取り組むことで、災害に対しても暮らしを守る力を高めることができます。普段から「お金の備え」と「資産形成」の両方を実践していきましょう。

引用:金融庁「NISA早わかりガイドブック」より抜粋 