「スープを飲みたいのに我慢する人は…」ラーメン好き医師が実践する「麺を最後に食べる」意外な食べ方
「あっさりした食事ほど健康的」「ラーメンは太るから避けるべき」。そんなイメージは本当に正しいのか。
【画像】汁さえセーブすれば、「ダイエットの完全食」ともいわれる爆盛系ラーメン
ラーメンの栄養面を見直しながら、食後血糖の上昇を抑える可能性がある「食べる順番」の工夫を『ラーメンと健康 「炭水化物=悪」ではない』より一部抜粋・再構成してお届けする。
「あっさり」信仰が招く意欲の低下
私がラーメンを推奨する一つの大きな理由、それはメンタルへの影響です。
一般には血管を詰まらせる悪い脂というイメージが強いですが、体にとってコレステロールは極めて重要な材料です。細胞膜を作る材料であると同時に、私たちの意欲や気力を支えるホルモンの原料そのものだからです。
過度な健康志向で、肉や油を避け、野菜中心のあっさりした食事ばかりを続けているとどうなるか。材料不足によって、体は健康になったつもりでも、心の方は「やる気が出ない」「なんとなく元気がない」といったガス欠状態に陥ってしまうことがあります。
これを年齢のせいにする人も多いのですが、実際は単なる脂質不足であるケースも少なくありません。詳しいメカニズムについては第2章でじっくりお話ししますが、ラーメンのスープに溶け込む脂質や、具材に含まれるコレステロールは、まさにこの心の活力を作るための貴重な供給源です。
「最近、元気が出ないな」と感じるなら、それは心が弱いからではなく、単に心のガソリンである脂質が足りていないだけかもしれません。
ラーメンを美味しく食べ、脂質をしっかり補給することは、体の栄養になるだけでなく、明日を生き抜くための意欲をチャージすることにも繫がるのです。だからこそ私は、健康のためにと「あっさり」だけにこだわるのではなく、時には堂々と「こってり」を楽しむ選択肢も持っていただきたいと考えています。
ラーメンに対して、「太る」「高血圧になる」といったネガティブなイメージを持つ人も少なくありません。しかし、それはラーメンそのものの問題というよりは、むしろ食べ方の問題であることがほとんどです。
太る、高血圧になるのは「食べ方」の問題
まず「太る」というイメージについて考えてみましょう。これは、「ラーメンは脂っこいから、食べた脂がそのまま体脂肪になる」という誤解から来ています。ですが、生理学的に見て私たちの体脂肪の主な原因は、脂質ではなく、ご飯やパン、そして麺類などの糖質の摂りすぎです。
空腹の状態で、いきなり大量の糖質(麺)を体内に入れると、血糖値が急上昇します。すると体は、上がった血糖値を下げるためにインスリンというホルモンを大量に分泌します。このインスリンは、エネルギーとして使い切れずに血液中に余った糖をせっせと脂肪細胞に運び込み、体脂肪として蓄える働きを持っています。これが、糖質で太るメカニズムです。
さらに、この血糖値の急上昇(血糖値スパイク)は、肥満だけでなく、さまざまな不調の原因となります。血糖値が乱高下すると、血管の内側が傷つき、動脈硬化が進みやすくなります。さらに、体内で余った糖がたんぱく質と結びついて「糖化(コゲつき)」という現象を引き起こし、老化促進物質(AGEs)を生み出します。
これが、肌のシワやたるみ、さらには認知症のリスクにも繫がると考えられているのです。逆に言えば、この血糖値スパイクさえ抑えれば、ラーメンを食べても太りにくくなりますし、老化のスピードも緩やかにできます。そのための簡単なコツが、「食べる順番」を工夫することです。
まっ先に麺に箸を伸ばすのではなく、先にチャーシューや味玉、メンマといった「たんぱく質・脂質・食物繊維」が豊富な具材から口にするのです。これらを先に胃に入れておくことで、後から入ってくる麺(糖質)の消化・吸収が穏やかになり、血糖値の急上昇を防ぐことができます。
これはベジファースト(野菜が先)ならぬたんぱく質ファースト(肉や卵が先)の考え方ですが、たんぱく質や脂質にも血糖値の上昇を抑える効果があることが分かっています。意識するとよい順番の一例としては、「チャーシュー・味玉(たんぱく質・脂質)→メンマ・野菜・海藻(食物繊維)→麺(糖質)」です。
麺より先に具材(肉や卵)を食べると、なぜ太りにくいのか?
ここで、「麺より先に具材(肉や卵)を食べる」という食べ方が、なぜ太りにくいのか、もう少し医学的なメカニズムを掘り下げておきましょう。キーワードは胃が本来持っている消化のブレーキ機能です。私たちの胃は、入ってきた食べ物に合わせて消化のスピードを自動的に調整する、非常に賢い臓器です。
いきなり麺(炭水化物)が入ってくると、胃はそれをすぐに小腸へ送り出してしまいます。これが、血糖値が急上昇する原因です。ところが、先にチャーシューや味玉(たんぱく質・脂質)が入ってくると、胃は「おや、消化に時間のかかる栄養素が入ってきたぞ」と感知します。すると、胃の出口を少し狭めて、食べたものを小腸へゆっくりと送り出すように指令を出すのです。
つまり、最初に具を食べることで、糖質の吸収スピードが自然と抑えられる状態を作るわけです。この状態で麺を食べ始めれば、胃から小腸への流れが緩やかになっているため、糖質は少しずつしか吸収されません。
結果として、血糖値の急上昇が抑えられるのです。これを「カーボラスト(炭水化物は最後)」といいますが、理屈は非常に合理的です。「麺の前に、具を胃に入れて準備をさせる」。これだけで体への負担は劇的に変わります。
さらに、肉や魚に含まれる脂質には、脳の満腹中枢を刺激して「もう満足だよ」というサインを早めに出させる効果もあります。たんぱく質ファーストで、まずはチャーシューや味玉をじっくり味わう。
この食べ方を心がけることで、無理なく食べすぎを防ぎやすくなるのです。ラーメンは決して太りやすい食べ物ではありません。むしろ、体の仕組みを巧みに利用した、賢い食事になり得るのです。
ただし、小太りくらいの方がかえって長生きするので、そこまで太ることを気にする必要はありません。
同様に、もう一つの懸念である高血圧についても同じことが言えます。「ラーメンは塩分が高そうだから」と高血圧の敵として槍玉に挙げられがちですが、実は現代の日本人の多くは、世間で言われているほど塩分過多の状態にはありません。
その上で、仮に血圧が気になる方であっても、ラーメンそのものを悪者にして排除する必要はないのです。高血圧のリスクもまた、食べる頻度やタイミング、スープの飲み方といった「食べ方」を工夫することで十分に管理できます。
スープを飲み干すのは悪か?
ラーメンが好きでも、「スープは飲まないようにしている」という人は少なくありません。「塩分が多いから」「体に負担がかかりそうだから」と残す方も多いでしょう。確かに、塩分摂取について神経質になる風潮がある今の日本では、それが正しい選択のように感じられるかもしれません。ですが、もう少しスープの本質に目を向けてみると、その見え方は大きく変わります。
ラーメンのスープは、単なる味付けのための塩味の強い汁ではありません。前述した通り、そこには肉や魚介、野菜から長い時間をかけて抽出されたアミノ酸やコラーゲン、ミネラルといった栄養素がたっぷりと溶け込んでいます。
その滋養の高さは、あくまでたとえですが「飲む点滴」と表現したくなるほどです。これだけのエネルギーと栄養が凝縮されているのに、塩分だけを理由にすべて残してしまうのは、実にもったいない判断のように思えてなりません。
では、気になる塩分についてはどう考えればよいのでしょうか。実は「日本人は塩分を摂りすぎている」という通説には、科学的根拠が乏しい面があります。むしろ、過度の減塩によって食欲が落ちたり、熱中症になったり、カロリーが不足して健康を損なうリスクのほうが大きいのです。
もちろん重症の腎臓疾患などですでに医師から厳密な減塩を指示されている方は例外ですし、「たくさん飲めば飲むほどよい」という乱暴な話ではありません。しかし、そうした特別な事情がない限り、必要以上に恐れることはありません。個人差やその日の体調、汗をかいた量などに応じて、柔軟に考えてよいのです。
精神科医として強調したいのは、「飲みたいのに我慢する」という行為がもたらす心理的ストレスです。「食べたい」「飲みたい」という自然な欲求を押し殺すことは、小さなことであっても積み重なれば精神的な負担となり、免疫力や気分に影響を及ぼすことがあります。
もし「スープを飲むこと」を禁止事項にしてしまうと、ラーメンを食べるたびに罪悪感やストレスが生まれてしまうでしょう。その方が長い目で見れば体に悪影響を与えかねません。
では、どう向き合えばよいのか。答えは、白黒つけないことです。体調やその日の食事量に合わせて、柔軟に考えればいいのです。要は、その日の体調と相談しながら「自分にとってのちょうどいい落としどころ」を見つけることが大切なのです。スープは決して悪者ではありません。よいか悪いかではなく、「どう飲むか」「どのくらい飲むか」を自分で選べばよいのです。
文/和田秀樹
『ラーメンと健康 「炭水化物=悪」ではない』(KADOKAWA)
和田秀樹

2026年8月10日
1056円(税込)
224ページ
ISBN: 978-4040825625
ラーメンは悪役ではない。 頼れる栄養補完食にできる。
「控える・諦める」も「暴飲・暴食」も避ける。
多くの患者のフレイル予防に努めてきた医師による、
中高年のための無理をしない食事術。
日本人の平均摂取カロリーは1970年をピークに減少を続け、現代の食生活では、栄養不足の問題も見過ごせなくなっている。
塩分制限による低栄養・筋力低下、糖質制限と認知機能低下の関連、コレステロール値と死亡リスクをめぐるデータ……。
6000人以上の高齢者を診てきた老年精神科医が、こうした知見と臨床経験をもとに食と健康を丁寧に検証していく。
著者自身も愛食するラーメンを通して、食べ方と健康寿命を見直す一冊。
【目次】
人気ラーメンスタイル別 栄養成分比較表
第1章 「ラーメン=不健康」の常識を疑う
第2章 「減塩・減脂」信仰のワナ―最新エビデンスで見る塩分・脂質の事実
第3章 糖質制限ブームの落とし穴
第4章 美味しさの神経科学―なぜラーメンは私たちの脳と心を満たすのか
第5章 和田秀樹流「罪悪感ゼロ」ラーメン実践ガイド
