現在放送中のNHK連続テレビ小説『風、薫る』で、柳川文役を演じた女優の内田慈(うちだちか)に注目が集まっている。

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『風、薫る』は、女優の見上愛と上坂樹里がダブル主演を務め、明治時代に看護の世界へ飛び込んだ2人のナースの活躍を描く朝ドラだ。原案は田中ひかるの著書『明治のナイチンゲール 大関和物語』で、大関和さんと鈴木雅さんという実在した2人をモチーフにしている。


『風、薫る』で話題を呼んだ内田慈 ©時事通信社

「9キロ減」の役作りが話題に

 同作で内田は、上坂が担当する直美の生き別れた母親である文を熱演。がんに冒される文を演じるため、半年間で約9キロも体重を落としたことが公表された。痩せ細っていく内田の姿を見て、視聴者から心配するコメントがSNSに書き込まれるなど、壮絶な役作りが話題を集めている。

 役作りだけでなく、その高い表現力を短いシーンで見せたことでも視聴者から高評価を得た。文は、がんが発覚してから直美に看病されるのだが、実の母親であることを明言しないまま、母娘として心を通わせるかなりの難役だ。なぜ文は直美に真実を話さなかったのか、ドラマの中では詳細な説明が行われていない。一歩間違えれば説明不足で視聴者を置いてけぼりにするような、かなり複雑なストーリーである。

 そんな難しい母娘関係が描かれたシーンで、内田は繊細な表情や仕草の変化を使って娘のことを愛おしく大切に思う母親の本心を表現。まだ女優として経験の浅い上坂をうまくリードしながら、奇妙ながら美しい母娘愛を演じきった。注目度の高い朝ドラで名演を見せたことで、女優としての評価が一気に高まったことは間違いない。

過去には「風俗で働く地下アイドル」を熱演

 内田は、1983年3月12日生まれの神奈川県出身。日本大学芸術学部文芸学科を中退した後に、演劇活動を開始している。劇作家・松尾スズキに影響を受けたといい、劇団に属さないフリーとして、さまざまな舞台へ出演し小劇場界で活躍した。

 舞台への出演がメインだった中、2008年に橋口亮輔監督の映画『ぐるりのこと。』で本格的にスクリーンデビュー。以降は、ドラマや映画にも活動の幅を広げ、演技派の名脇役として数多くの作品に出演している。朝ドラ『まれ』や『silent』(フジテレビ系)など話題作でも演技を見せ、着実に女優としてのキャリアを重ねてきた。

 そんな内田の演技力が高く評価されたのは、2010年公開の映画『ロストパラダイス・イン・トーキョー』だ。

 奇才・白石和彌監督の長編デビュー作となった同映画で、内田は地下アイドルとして活動しながら風俗で働くマリンを担当。いつか自分だけの島「ファラ・アイランド」を購入したいという夢を持つ強烈なキャラのヒロインを、魅力たっぷりに演じ大きな注目を集める。

 本格的な演技ができる女優として知名度をあげた内田は、ハードな濡れ場がある作品にも出演していく。

妖艶な笑みを浮かべ、激しい騎乗位を……

 2014年に公開された映画『捨てがたき人々』では、オールヌードで大胆なシーンを体当たりで演じ話題を集めた。同作は、ジョージ秋山の同名漫画が原作となり、大森南朋が主演で実写映画化されている。金も仕事もないのにセックスのことばかり考えている狸穴勇介が主人公で、濡れ場の多い映画として有名だ。

 この作品で内田は、勇介が働く工場の妖艶な雰囲気を持つ女性従業員・吉田和江を担当した。和江は工場の社長と不倫関係にある女性で、作品の中で濃厚な騎乗位シーンを見せた。

 映画の中盤あたりで、喪服を着た葬式帰りの和江と社長は、誰もいない工場に向かい不倫を行う。普段は、従業員たちが魚を捌いている台の上で激しい騎乗位を披露。和江の方が不倫セックスに積極的なようで、妖艶な笑みを浮かべながら腰を振り、情事を楽しんでいる様子が映し出される。スレンダーな内田の裸体が妙に生々しく、濡れ場の多い映画の中でも特に目立つシーンとなった。この映画以降、内田はさらに存在感を示すことになる。

過去には極貧生活も、自由な人物性が魅力に

 主演を務めたヒット作こそないものの、デビューから長く出演作品が途切れていない内田の魅力はどこにあるのだろうか? テレビ関係者が解説してくれた。

「内田さんは、事務所に所属していない期間が長かったり、変わり者の女優として映像業界では知られています。そういった個性的な部分も含め、内田さんに惚れ込んでいる映画監督やドラマプロデューサーが多くいます。

 それに、なんといっても演技力が高く、どんな役でも演じられるのが最大の魅力。監督やプロデューサーが求めている以上の演技を見せてくれるので、出演作が現在まで途切れないのでしょう」

 確かに、このテレビ関係者が話すように、内田はかなり変わった経歴を持っている女優だ。

 2002年に1年生の前期で大学を中退した際は、阿佐ヶ谷にある家賃2万5000円の風呂なしアパートで一人暮らししていたと、過去に『毎日キレイ』のインタビューで明かしている。銭湯を我慢して部屋の流しで髪を洗うなど極貧生活をしながら女優業を続け、バイトで食いつなぎオーディションで細々と仕事を獲得していたという。

 また、長年フリーランスで活動し、劇団や芸能事務所に所属せずに女優業を務めていたのも珍しい。現在は有名事務所に所属しているが、かなり自由に仕事を行ってきた。

 NHK Eテレの『みいつけた!』で声優仕事を長く担当しながら、芸人の友近が企画・プロデュース・主演を務めるドラマ『友近サスペンス劇場II 寝台特急「はつゆき」殺人事件』にも参加するなど、仕事の選び方が自由でセンスの良さを感じる。こういった柔軟な発想や行動に、ファンだけでなく制作スタッフも魅了されているのだろう。

『風、薫る』以外でも存在感を発揮

 今年は『風、薫る』以外にも立て続けに作品へ出演し、印象に残る演技を見せている。

 映画『災 劇場版』をはじめ、ドラマ作品では『お別れホスピタル2』(NHK総合)、『君が死刑になる前に』(読売テレビ・日本テレビ系)、『孤独のグルメ Season11』(テレビ東京系)と、多くの話題作に次々と出演した。

 中でも『田鎖ブラザーズ』(TBS系)では、ショートドラマアプリ「BUMP」で配信した前日譚を描くスピンオフ作品『D-day〜罪が消える日〜』にて主演を担当している。

『田鎖ブラザーズ』は、岡田将生が主演を務めたクライムサスペンスで、両親殺害事件の時効を迎えた兄弟が、法で裁けない犯人を追い続ける完全オリジナル作品。内田は検視官補助・桐谷千佳役を演じた。

 スピンオフ作品では2026年を舞台とする本編から2年前が描かれた。岡田や染谷将太など、本編の主要キャストは一切登場しない。代わりに、ベテラン女優の黒木瞳が主に出演し作品を盛り上げている。本編に連なるもう1つの視点として展開する作品となり、内田は運命に翻弄される千佳を丁寧に演じた。

 こうした話題作に多く出演し、一気にブレイクする可能性が高くなってきたと再びテレビ関係者が解説する。

「内田さんは、4月1日から実力派の中堅が多い事務所に所属しました。この事務所は、名バイプレイヤーを育てるのがうまく、内田さんにぴったりだと言われています。朝ドラで注目度が上がったこともあり、新事務所の売り込みも加速しそう。9月からは、内野聖陽さん主演の注目度が高い舞台『リア王 -KING LEAR-』の出演が決まり、こちらも注目です」

 デビューから長く、知る人ぞ知る女優だった内田が、名バイプレイヤーとして国民的な人気を得る日も近い。

(ゆるま 小林)