記者団の取材に応じる高市早苗首相(2026年8月19日、写真:共同通信社)


「高市首相は大丈夫ですか。課題が多くて追い込まれ、焦っているのでしょうか」

 久しぶりに話した旧知の自民党地方議員が、そんな危惧を漏らした。高市早苗首相によるXへの連日の投稿を見てのことだ。

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批判への反論から政策解説まで、高市首相がX連投を続ける理由

 もともと記者会見よりSNSを重視してきた高市首相ではあるが、世間がお盆休みに入ると、Xへの投稿内容が、これまでの行事出席や官邸での会議、訪問者との面会といった報告から、〈高市内閣は、『国土強靭化』にも全力で取り組んでいます〉など政策を強く訴える内容へと変わっていった。

 注目されたのは8月14日の「物価高対策」についての投稿だ。午後2時過ぎから、わずか5分間に5回連続で投稿した。

〈高市内閣は、国民の皆様が苦しむ「物価高対策」をないがしろにして、自らの政治的信念の実現を優先しているように見えるとのご意見があるようですが、それは私の認識とは異なります〉

 とした上で、「補正予算」や「電気・ガス料金支援」など、いかに高市内閣が家計を支援してきたかの具体例を列挙し、長文で延々と反論したのだ。その後も、

〈本日は、「稼げる農林水産業・食品産業」の話もしておこうと思います〉
〈高市内閣は、「教育」分野での改革にも力を尽くしています〉

 など、連日の政策解説投稿が続いている。どうやら高市首相には、「マスコミがきちんと報じてくれない」との不満があるようだ。複数の首相周辺が時事通信の取材に「報道機関が報じてくれないからだ」と語っている。

 確かに、投稿された言葉の端々には「私はこんなに働いているのに」という焦燥感がにじんでいるようにも感じられる。

2026年7月20日に投稿された高市首相のXには、「就任以来、0時間~3時間睡眠が常態化」などと記されている(写真:共同通信社)


 21日には、尊敬するサッチャー元英首相の言葉だとして、「好かれることを目的にしたら、取るべき決断が取れなくなる」を引用した上で、

〈私も、一定のご批判は覚悟の上で、自民党総裁選時に訴えた公約や衆議院選挙時の自民党の『政権公約』の実現に向けて全力を尽くしている最中です〉

 と書き出し、先の国会で追及された中傷動画とサナエトークンをめぐる疑惑について、自身の見解を長文で説明した。

「高市さんは批判をすごく気にする性格。支持率を相当気にしている」と話すのは、自民党のベテラン議員。高市首相をX連投に向かわせたのは、内閣支持率に対する不安なのだろうか。

「切り札」の消費税減税、それでも支持率回復につながらない誤算

 閣議決定した「消費税減税」は、来年(2027年)4月から2年間限定で飲食料品の消費税率を現行の8%から1%へ引き下げ、中低所得者には所得に連動して1%相当額を給付し、負担を「実質ゼロ」にする。これは高市首相にとって内閣支持率アップをにらんだ起死回生の一手だった。

飲食料品の消費税率を2027年4月から2年間に限って8%から1%に引き下げる方針を表明した高市早苗首相(2026年7月30日、写真:共同通信社)


 しかし、世論の支持は思ったほど高くない。

 例えば、NHKの8月の世論調査では、今回の減税策について賛成49%、反対39%、わからない・無回答12%。時事通信の調査では賛成49.1%、反対31.6%、どちらともいえない・わからない19.4%。いずれも賛成が反対を上回ったものの、賛成は5割前後にとどまった。賛成が多数とはいえ圧倒的とは言えず、支持率も上昇しなかった。高市首相にとっては誤算だっただろう。

 もっとも、「高市首相は消費減税を選挙対策のため『悲願』と言ったが、当初は本気じゃなかった」(経済官庁OB)という見方もある。

 今年2月の衆議院選挙での自民党の公約に書かれているのは「実現に向け検討を加速」だった。あくまで「検討」だ。本命は「給付付き税額控除」であり、やるとしても減税はそれまでの「つなぎ」との位置付けだった。

 社会保障国民会議での議論同様、6月に入る頃まで政権内には「減税ではなく給付の先行でも」という雰囲気もあった。しかし、野党が離脱し、国民会議は事実上、議論を進められない状態になった。さらに、高市事務所を巡る疑惑や国会運営の混乱も重なり、支持率の下落傾向が鮮明になる。こうした状況を受け、高市首相は消費税減税という「公約実現」に傾いていった。

 最終的に決断したものの、期待したような支持率のV字回復につながらなかった。その背景には、財源が定まっておらず、代わりに社会保障など生活に直結する予算が削られるのではないかという不安がある。

 前述したNHKの世論調査でも、減税がもたらす国の財政への影響について、「大いに懸念」(30%)と「ある程度懸念」(37%)を合わせ7割弱が心配している。

減税で2年10兆円、防衛費も膨らむなか財源をどう捻出するのか

 消費税減税は、9月に与党の税制大綱としてまとめ、関連法案を9月末にも召集される臨時国会に提出する運びだ。年間5兆円規模、2年で10兆円と見込まれる財源をどう捻出するのか。そして、世論を安心させられるのか。

「税収の上振れ分と税外収入をかき集めれば2年間ならしのげる」という楽観論も財務省関係者から聞こえてくるが、本当か。

 というのも、2022年12月に策定した安全保障関連3文書で防衛費を5年間(2023~2027年度)で計43兆円に大幅増額することを決めた際、合わせて「防衛財源確保法」という特別措置法を制定し、税収の上振れ分や税外収入は防衛費にも回すことになっているからだ。

 この3文書も今年の年末の改定で、さらなる大幅増が確実。現状のGDP(国内総生産)比2%は2022年度基準で11兆円程度だったが、現在、言われているようなGDP比3.5%なら、2026年度基準で24兆円程度にまで膨らむとされる。抑止力を盾に、米国からの強い要望に従う既成事実化が進む。

 秋の臨時国会は、この消費税減税と防衛費の財源論を巡る議論が激しくなると予想される。

 来年度予算の各省庁からの概算要求は、初めて130兆円を超え、4年続けての過去最大を更新する見通しだと報じられている。高市首相肝いりの「『強く豊かな日本』投資枠(新たな成長投資枠)」が青天井であり、積極財政路線で金額は膨張する。

 正直、どうやって財源を確保するのか。物価高に起因する税収上振れへの偏重が加速するのか。犠牲になるのはどの政策か。経済財政運営と改革の基本方針である「骨太の方針」から「財政健全化」の文言を消した政権だけに、その恐ろしさを世論もじわじわと感じ始めているのではないだろうか。

対中・対米外交にも難題、内閣改造と臨時国会に待つ新たな火種

 支持率への不安を強める材料は、内政だけではない。弱点と指摘されてきた外交でも、難しい局面が続いている。

 昨年11月に高市首相が国会で「台湾有事は存立危機事態になり得る」と答弁して以降、中国との関係は最悪の極寒状態。頼みの米国も、トランプ大統領が高市首相の就任直後に来日した最初の頃こそ日米蜜月をアピールできていたが、米国がイスラエルとともにイランを軍事攻撃した2月末以降、微妙に隙間風が吹いている。

 6月のG7サミット(先進7カ国首脳会議)の際は、終了後の記者会見でトランプ大統領は高市首相のことを「私の一番のファン」と言ってのけた。誰彼構わず失礼なことを言うトランプ大統領とはいえ、一国の首相を軽んじた表現ではないか。

フランスで開催されたG7サミットで招待国も含めた記念撮影を終え、討議に向かう(左から)トランプ米大統領、高市首相、イタリアのメローニ首相(2026年6月16日、写真:共同通信社)


 いまやトランプ大統領は中国の習近平国家主席との今年2度目の首脳会談を心待ちにし、北朝鮮の金正恩総書記との首脳会談まで模索している。日本への影響は重大なのに蚊帳の外だ。

 国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長をトランプ米政権が制裁対象に指定した件でも、米国への配慮を前に高市首相は「大変残念に思っている」との発言にとどめ、言うべき非難を避けた弱腰外交だと失望感が広がっている。メディアはそろって批判的だ。

 9月中下旬にも実施するとみられる内閣改造で、連立与党の日本維新の会からの入閣が予想される。臨時国会では定数削減法案も議題となるだろう。これも大荒れ必至だ。

 支持率を押し下げかねない不安材料が相次ぐ。冒頭の地方議員の危惧に戻れば、この先も高市首相のX連投は続きそうだが、そもそも国民に自らの考えを伝えたいなら、一方通行のコミュニケーションではなく、記者会見を開き、しっかり質疑にも答えるべきなのは言うまでもない。

取材に応じる高市首相(2026年8月13日、写真:共同通信社)


筆者:小塚 かおる