初の夜間開催となった全国高校総体の陸上競技。照明が点灯する中、男子1600メートルリレーでバトンをつなぐ選手たち(5日午後9時42分、平和堂HATOスタジアムで)=須藤菜々子撮影

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[ニッポンクライシス]第3部「気候変動」<1>

 深刻な地球温暖化は、人類が経験したことのない段階を迎えている。

 猛暑や豪雨など様々な気候異変は、人々の健康、毎日の暮らしに大きな影響を及ぼしている。温室効果ガス削減などの取り組みが必要だが、回復はすぐには見込めない。どう対応していくべきか。

 5日に滋賀県彦根市で行われた全国高校総合体育大会(インターハイ)陸上競技の最終種目・男子1600メートルリレー決勝。ナイター照明で輝くトラックで各校アンカーが続々とゴールラインを駆け抜けた頃、時計の針は午後9時40分を回っていた。

 今大会の陸上猛暑対策として日中に競技を行わず、全7日間、午後5時以降に開始する史上初の夜間開催となった。5日も最高気温は35度を超えたが、競技終了時は28度まで低下。「涼しくて走りやすい」と歓迎する声が多かった一方、午前0時過ぎに自宅や宿舎に戻るケースもあり、日常的に早朝に練習する長距離種目の選手は「こんなに遅くまで起きていたことはない」と戸惑いを口にした。

 異例の大会運営に踏み切ったきっかけは、北海道で行われた2023年大会だった。冷涼な気候という想定に反して厳しい暑さに見舞われ、選手や観客が次々と熱中症となり、競技場の医務室はベッドが全て埋まる状態となった。

 インターハイの夏季30競技の中で陸上は最多の3000人超が出場する。大会主催者に名を連ねる日本陸上競技連盟は「命に関わる重大な事態」と危機感を強め、昨年3月、気温や湿度などから算出する「暑さ指数(WBGT)」が31以上の場合、インターハイを含む各種大会で競技を原則中止する方針を表明した。日本スポーツ協会の指針に合わせたもので、暑さ対策が不十分なら主催者から外れる意向も示した。

 陸連の名が大会から消えると、選手たちが懸命に残した成績は全て「非公認記録」となる。重い条件を示された全国高校体育連盟(高体連)や開催地の自治体が考えた対策が、会期を従来の5日間から7日間に延ばして各日の実施種目を減らし、午後5〜10時に収める夜間開催だった。

 期間中、ウォーミングアップを始める午後4時台でもWBGTが31を下回らず、競技開始を15分程度遅らせる日があったものの、救急搬送に至る熱中症は発生しなかった。一方、補助競技場などの照明の追加や計測機器のレンタル期間延長により、主に開催自治体が負担する運営経費は、当初想定から約4000万円増の約1億9000万円に膨らむ課題が残った。今後は会期短縮に向け、一部種目の別会場での開催や種目数の削減を検討するという。

 スポーツ界では今夏、酷暑による深刻な事態が相次いだ。7月のプロ野球二軍戦で複数の選手が熱中症の症状を訴え、試合がノーゲームに。8月にはラグビー・リーグワン2部の選手が練習中に熱中症となり、搬送先の病院で亡くなった。

 日本陸連は、大人以上に熱中症リスクが高い高校生以下の大会では抜本的な対策が急務として、学校の夏休みに屋外で全国大会を開催してきた従来のモデルの見直しも提言する。田崎博道専務理事は「陸上だけではなくスポーツ界全体で子どもたちの命、安全を真剣に考えていく。そうした責任を果たす決意と覚悟が必要だ」と訴えている。

酷暑日」最多34地点

 気象庁は今年4月、天気予報の用語に最高気温40度以上の日を指す「酷暑日」を追加した。暑い日に関する用語の追加は、同35度以上の「猛暑日」が制定された2007年以来となる。18年以降は同40度以上を観測する地点が毎年出ていたため、危険な暑さであることを簡潔に伝えて警戒を呼びかける狙いがある。

 今年7月21日には、岐阜県愛知県の3地点で、導入後初となる酷暑日となった。

 同庁によると、国内では1927〜2025年に40度以上を延べ108地点で観測したが、4割弱(同41地点)が23〜25年の3年間に集中していた。今年は史上最多となる同34地点(22日時点)で観測されている。