《『VIVANT』制作に“TBS産”の電力が使われていた》なぜテレビ局が「発電事業」に取り組むのか…「サステナブルをコンテンツ制作の付加価値に」TBSが進める「#感動発電」とは
2026年7月22日、動画配信サービスのU-NEXTで、日曜劇場『VIVANT』のサイドストーリーとして制作された『ドラム ──VIVANT THE ORIGIN STORY──』の最終話が配信された。ドラムは、阿部寛演じる公安の警部・野崎守のエージェントとして活躍するキャラクターだ。本編でもドラム演じる元力士俳優・富栄ドラムの"無言演技"が注目されてきた。
【写真を見る】多くの羊たちが参加した『VIVANT』のロケの様子や、矢吹町の牛舎で生まれた牛の赤ちゃんなど
その最終話では、エンドロールののちに5秒ほどの映像が流された。ドラムが作中で使用する翻訳アプリの音声で、「VIVANTはTBSの再エネ発電で制作しています」と読み上げられ、画面には「#感動発電」の文字が。
『VIVANT』を制作するTBSは、自前でドラマ制作のための電力を生み出そうとしているようだ。そのプロジェクトの名前こそが「#感動発電」だ。
なぜ、テレビ局が発電という一見関係なさそうな事業に取り組んでいるのか、『VIVANT』とはどのように関わっているのか。実務を担うTBS GXの担当者に話を聞いた。
なぜテレビ局が発電するのか
TBSグループの気候変動対策を担う子会社としてTBS GX(グリーン・トランスフォーメーションの意)が設立されたのは、2025年6月のこと。そもそも何を目指して設立された会社なのか。
「TBSには、SDGsについて発信する『地球を笑顔にするWEEK』というキャンペーンを、テレビ局の中で初めて実施した実績があります。社内でもサステナビリティについての意識が早くから醸成されていたんです。
そんな中で、取り組みの本気度を行動で示すため、自分たちで発電所を作り、クリーンなエネルギーを使っていきたいと考えました」
こうして動き出したTBS GXと「#感動発電」プロジェクト。自前で発電事業に取り組むことは、メディア企業としての強みにもなりうると考えているという。
「もともと行っていた情報発信に加え、その制作の背景にあるエネルギーをめぐるさまざまなストーリーを発信していくことで、コンテンツ全体に新たな価値を付与できるという側面もあります。TBSのコンテンツが面白く人を魅了するだけでなく、さらにサステナブルであることで、より差別化できると考えています」
現在、「#感動発電」の現場となっているのが福島県矢吹町だ。牛の放牧が行われている牧草地に支柱を立て、その上部にソーラーパネルを設置して発電する。農業と発電を両立させる「営農型太陽光発電」だ。ソーラーパネルは牛にとって日除けともなるなど、さまざまなメリットがある方式だという。
『VIVANT』制作チームが「ぜひやりましょう」
そんな考えのもとで始まった「#感動発電」プロジェクトだが、なぜ『VIVANT』のサイドストーリーである『ドラム』とコラボするに至ったのか。その背景には、『VIVANT』制作陣の姿勢があったという。
「飯田和孝プロデューサーをはじめ、『VIVANT』制作陣の方々が、サステナビリティや電力のグリーン化について非常に感度が高かったんです。先方から『ぜひやりましょう』と言っていただきました」
その"感度"は、第1シーズンの作劇の中にもあらわれていたという。
「作中で草原や砂漠を移動する中で、馬や羊といった動物たちが出てくるシーンが数多くあります。制作陣はアニマルウェルフェアに対する意識が非常に高く、動物たちに負荷をかけない撮影方法を意識して映像を作っているんです。
たとえば、羊がたくさん走るシーンを撮影する際に、羊を2つのグループに分けて、片方が休んでいる間にもう片方を走らせる、といった工夫がなされました」
矢吹町の発電所が、発電・農業とともに牧草地でもあったことが、アニマルウェルフェアに敏感な作品である『VIVANT』とのコラボを後押ししたようだ。
「#感動発電」のこれから
矢吹町で発電した電力の供給が始まったのは今年6月のこと。TBSグループのコンテンツ制作拠点である緑山スタジオに届けられ、同スタジオで撮影された『ドラム』の制作にも、その一部が使われた。とはいえ、緑山スタジオの電力のうち「#感動発電」で賄えているのは、現状まだ一部にとどまる。だが、TBS GXはますますクリーンエネルギーへの転換を進めるべく、矢吹町以外にも発電所を拡大していく見込みだという。
『VIVANT』本編や他のドラマとのタイアップについては具体的な予定はないものの、「今回がファーストステップ。第2弾、第3弾と続けていければ」と担当者は語る。ニュースや情報番組との連携、「地球を笑顔にするWEEK」との連動も構想にあるという。
視聴者の変化も、取り組みを後押ししている。
「電力も含めて、コンテンツを作るプロセスをよりサステナブルにすることで、視聴者からの信頼を得ることができる、という考え方が浸透してきていると思います」
世界規模の気候変動が現実のものとなっている中で、エンタメ業界においてもエネルギーのクリーン化は避けては通れない課題となっている。TBSの「#感動発電」がその嚆矢となり、広がっていくのかどうか、今後の展開にも注目が必要だ。
