ナウルのパスポートを取得し、同国を訪れた米国のルーベンさん(左端)=2025年11月(本人提供、共同)

 気候変動による海面上昇や高潮の脅威に直面する南太平洋の島国ナウルが、国民の高台移住やインフラ整備に必要な費用の捻出に向け資金調達に乗り出している。外国人に市民権を“販売”する「ゴールデン・パスポート」制度を創設し、収入を気候変動対策に振り向ける。無国籍者に法的な身分と希望を与えるとして関心を集めているが、悪用される懸念も残る。(共同通信シドニー支局=尾崎雅子)

 青い海と白い砂浜が広がり、とがった石灰岩が林立するナウルは総面積21平方キロ、人口約1万2千人の世界有数の小国だ。かつてリン鉱石の輸出で栄えたが、現在は主にオーストラリアの財政支援に頼る。

 近年は地球温暖化の影響が深刻化。米航空宇宙局(NASA)によると、洪水でナウル周辺の水位が50センチ以上上昇した日は1977〜87年に計10日だったが、2011年から同じ10年間で16倍に増えた。海面上昇も加速する見通しだ。

 リン鉱石の過剰採掘で荒れ地が多く、国民の大半が海岸沿いの低地に居住。高地へ移住させる政府計画は、第1段階だけで6千万米ドル(98億円)以上かかるとされ、多額の資金が欠かせない。

 そこでアデアン大統領が打ち出したのが同制度だ。審査に通過した外国人に国籍を付与する仕組みで25年夏の開始以降、約120人が国籍を取得。費用は1人当たり11万5千ドルだが2026年末まで9万ドルに割り引く。

 パスポートを得れば、香港など80以上の国・地域にビザ(査証)なしで渡航できる。一方で、国籍を取得してもナウルでの土地購入は認められず、犯罪行為が確認されれば、国籍を取り消される可能性もある。

 ナウルは過去に同様の制度を導入したが、パスポートがテロ組織の手に渡ったとの批判を受け中止となった経緯があり、今回は審査を厳格化。しかし英国は2025年末、安全保障上の懸念からナウルのパスポート保持者の査証免除措置を撤回した。

 それでも申請者は後を絶たない。気候変動対策への貢献に加え、不透明化する国際情勢下で「第2のパスポート」を求める人も少なくない。2025年にナウル国籍を取得した米国のルーベンさんは、政治的に中立なナウルのパスポートを使う方が「米国のパスポートより安心できる」と話した。

 制度は、無国籍者に社会への帰属意識や「生活上の安心を与える」(制度運用担当)側面も。

 旧ソ連時代のエストニア生まれのシーモ・カーシクさんは、ソ連崩壊後30年以上、無国籍状態が続いた。空港では身元を証明する書類をまとめた分厚いファイルが欠かせなかったが、今年ナウル国籍を取得。「パスポートだけを手に空港の入国審査を通過するのが楽しみだ」と話した。

ナウルのパスポートを入手し、同国を訪れた米国のルーベンさん=2025年11月(本人提供、共同)

ナウル国籍の取得が認められたシーモ・カーシクさん(本人提供、共同)

ナウルのリン鉱石の採掘場=1990年(ゲッティ=共同)

ナウル=2005年(ゲッティ=共同)

ナウル、オーストラリア、インドネシア