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不祥事が相次ぐ検察で、組織のトップが交代した。

8月12日に開かれた検事総長の退任・就任記者会見では、「検察活動は国民の信頼を基盤に成り立っている」などと語られた。

一方で、報道陣には冒頭あいさつ以外の撮影や録音を禁止。質問も「1社1問」に制限された。

さらに、会見の途中で会場の設営を変更した際には、検事総長が座る机の中からボイスレコーダーが床に落下し、職員が慌てて拾い上げる一幕もあった。

「国民の信頼」を掲げる検察のトップは、なぜ閉ざされた形で記者会見を開くのか。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

●「録音は認めない」会見冒頭に6つの注意事項

8月12日午前11時前、東京・霞が関にある最高検察庁20階の会議室。

集まった記者たちに、検察庁の職員が「これから注意事項を申し上げます」と告げた。

・冒頭あいさつの後の質疑は20分
カメラ撮影は検事総長の入室から冒頭あいさつ終了まで
・撮影時は記者席の前に引いた青色のテープから出ないこと
・個別質問は各社1問まで
・録音は認めない
・リアルタイムの中継やメール送信は禁止

その後、前検事総長の畝本直美氏が入室。演台の前に立ち、手元の文書に目を落としながら退任のあいさつを読み上げた。

あいさつが終わると、司会者はカメラマンたちに退室するよう指示。畝本氏もいったん部屋を出た。

すると、職員たちは演台を運び出し、同じ場所に長方形のテーブルと椅子を設置した。

●録音禁止で記者はパソコンに目を落とす

セッティングが終わると、畝本氏が再び入室し、今度はテーブルの前に着席した。

記者クラブ幹事社のNHKが代表して、「これまでのキャリアで印象に残った事件は?」などと3つの質問を投げかけた。

畝本氏は、ここでも手元の紙を見ながら答えていった。

録音が禁止されているためか、記者たちの多くはパソコンに目を落とし、発言を逃すまいとキーボードを打ち続ける。畝本氏と報道陣が顔を合わせない時間が続いた。

各社の個別質問に移ると、TBSの記者が、検事による取り調べをめぐる問題が相次いで発覚している理由をただした。

すると、畝本氏の近くにいた男性職員が紙を差し出した。畝本氏はそれを横目で見つつ、次のように説明した。

「一概に『これです』とはなかなか申し上げられないが、一つ感じるのは、黙秘や否認が増えていることに対して我々が取り調べでどう臨むのか、取調官がどうあるべきか、という共通のコンセンサスがなかった」

●個別質問3つで「次の予定がある」

個別質問が3つ終わったところで、司会者が「次の予定があるので、これで会見を終わります」と言い出した。

筆者が慌てて手を挙げると、「もう時間が来ている」として、そのまま打ち切られそうになった。

しかし、この時点ではまだ午前11時半になっていなかった。さらに食い下がると、もう1問だけ認められた。

「これだけ不祥事が相次いでいる中、冒頭あいさつで『良き伝統は守りつつ国民の期待に応えてくれると確信している』と言った根拠を教えてほしい」

筆者がそう尋ねると、畝本氏は次のような説明をした。

「良き伝統と述べたのは、検察が変わらなくて良いということではなく、法と証拠に基づいて判断するという検察の基本的な価値は変わってはいけない、その基本を守りながら検察のあり方を模索していただければという趣旨です」

結局、各社による個別質問は4問で終了した。

●録音禁止の会見、机の棚から「ボイレコ」が落下

事前に細かな注意事項を説明し、撮影を認めるのは冒頭あいさつまで。その後はカメラマンを退室させ、録音も禁止したうえで、着席して質疑に応じる──。

この進め方は、同日午後に開かれた新たな検事総長、川原隆司氏の就任会見でも同じだった。

ただ、その最中、思わぬものが姿を現した。

職員が会場を設営していた際、検事総長が座る長机の裏側にある棚から、ボイスレコーダーが床に落ちたのだ。

職員はすぐに拾い上げ、何事もなかったかのように棚に戻した。どれだけの記者がそれを目撃したかは定かではない。

報道機関には「録音は認めない」と求めている会見で、なぜ検事総長が座る机にボイスレコーダーが入れられていたのか。

会見終了後、最高検の総務部長にその理由を尋ねたが、明確な説明は得られなかった。

●新検事総長に問う「この会見で国民の信頼を得られるのか」

就任会見でも、各社の個別質問は「1社1問」に制限された。

弁護士ドットコムニュースの記者は川原氏に、記者会見そのもののあり方について尋ねた。

「先ほど『検察活動は国民の信頼を基盤に成り立っている』とあいさつしたが、このような形の記者会見しか開かないのであれば、検察が国民の信頼を得ることは難しいと感じる。会見を閉ざされた形にしている理由と、今後会見のあり方を見直すつもりはあるか?」

川原氏は次のような趣旨の回答をした。

「私たちが説明することは、個別の事件の具体的な内容に触れてしまう可能性があるため、関係者のプライバシーなどに配慮して撮影や録画のご遠慮をお願いすることになる。

これから先どうするかを具体的に考えてはいないが、国民の信頼に応える意味で、私たちが何をしているかという姿をできるだけ知っていただきたい面もある。

先ほど申し上げたような弊害があることも踏まえながら、広報全体としてどういったあり方がふさわしいかを皆さまのご指摘をいただきながら考えていく」