〈富士山6合目・一人ぼっちの7歳男児〉「標高599mの山でも大変なのに…」疲れを訴えた男児を残し父親は登山続行、問われる“山頂より優先すべきこと”

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静岡県警などによると、富士山の富士宮ルート6合目付近で、7歳の小学生が一人でいるところを山小屋関係者に発見され、警察に保護された。「山頂を目指すこと」が最優先だったのか。今回の一件から、子どもを連れた登山で求められる安全への配慮とは。

【画像】富士山の6合目付近から山頂を見上げた景色、男児が保護された6合目付近の山小屋

「登山では、まず子どもの体調や気持ちを最優先」

富士山の登山道で、7歳の小学生が一人でいるところを見つけられ、警察に保護された。男児は父親らと登山していたが、途中で疲れを訴えたあと、父親が男児をその場に残して登山を続けていたという。

静岡県警などによると、8月20日朝、静岡県側の富士宮ルート6合目付近で、子どもが一人になっていることに山小屋の関係者が気づいた。

連絡を受けた警察が現場に向かい、男児を保護した。男児は名古屋市南区に住む7歳の小学生だった。

複数の報道によると、男児は父親をふくむ3人で富士山を登っていた。ところが途中で男児が「疲れた」と訴えたため、父親は6合目付近で待つよう伝え、その場に息子を残したまま登山を続けたとみられている。

父親が山頂の方向へ進む一方、標高約2500メートルの登山道付近に残されたのは、まだ7歳の小学生だった。

山小屋の関係者が男児に気づき、警察への連絡につながった。テレビ静岡は、その後、富士宮署が父親を呼び出して注意したと報じているが、国内外で20年以上の登山歴があるアウトドア用品関係者は、今回の一件についてこう話す。

「今回の報道については、現場で何があったのか、報道されていない事情もあるでしょうから、一概に父親の判断を批判することはできません。ただ、7歳の子どもと富士山に登るという計画が、その子の体力や経験に合っていたのか。

そして、実際に子どもが疲れを訴えたときに、登頂を続けることが本当に最優先だったのかについては、疑問が残ります。

子どもと山に入るのであれば、大人が行きたい場所や到達したい山頂ではなく、何よりもまず、子どもの体調や気持ちを優先して判断することが大切だと思います。登れなくなったら引き返す、予定を変える、場合によってはその日の登山そのものをやめる。そうした判断も含めて登山なのではないでしょうか」

現場となった富士宮ルートは、富士山にある4つの主な登山ルートのひとつ。静岡県側にあり、標高2400メートルの富士宮口5合目から山頂を目指す。

富士登山オフィシャルサイトによると、4ルートの中では山頂までの距離がもっとも短いものの、6合目を過ぎると急な岩場や、固い地面の登りが続く。登山では「距離」と「登りやすさ」は比例しない。

標高の高い富士山では、天気や体調が急に変わることもある。静岡県が公開している山岳遭難防止の資料でも、標高が100メートル上がるごとに気温は約0.6度下がるとされ、防寒対策や高山病への注意が呼びかけられている。

標高599メートルの登山でも十分に…

まして、小学校低学年の子どもであれば、大人と同じペースや体力を前提に登山することはできない。疲れを訴えた時点で、そのまま登山を続けるのかどうかをあらためて考える必要があったはずだ。前出のアウトドア用品関係者は、こう続ける。

「先日、7歳の娘と高尾山に登りました。娘にとっては、それが初めての登山でした。数日前から天気予報を確認して、雨の心配はないか、暑くなりすぎないかを見ながら、当日の娘の体調も含めて『今日は無理なく歩けそうだ』と判断して出かけました。

高尾山は標高599メートルですが、ケーブルカーやリフトもあります。それでも子連れの登山は大変です。もし途中で娘が疲れたり、もう歩けないとなったりしたら、予定を変更して下山することも最初から選択肢に入れていました。

山頂にたどり着くことだけを目的にせず、無理なら途中で切り上げて、ふもとで遊んで帰ってもいい。そのくらいの気持ちでいたからこそ、親子で初めての登山を楽しむことができたのだと思います」(前同)

今回、男児が見つかったのは山小屋付近だった。しかし、山では天候や気温、視界などの状況が短時間で変わることもある。まして7歳の子どもが一人で残されれば、道に迷ったり、体調を崩したりする可能性も否定できない。

父親がどのくらいの時間、どのような状況で男児を待たせるつもりだったのかなど、限られた情報だけで父親の行動すべてを断定的に評価することはできないが、一方で、富士山6合目で7歳の男児が一人になり、山小屋関係者が気づいて警察に保護される事態になったことは事実だ。

「小学生にとっては、身近な山を歩いたり、川辺で生き物を探したり、季節ごとの草木を観察したりすることも、十分に心に残る自然体験になります。

富士山のような高い山に登ることだけが、価値のある自然体験ではありません。大人の目標に子どもを合わせるのではなく、その子の体力や経験、その日の体調に合わせて、無理なく楽しめる場所を選ぶことが大切です。

山頂まで行けなくても、一緒に歩いて、一緒に景色を見て、無事に帰ってくる。それだけでも子どもにとっては十分に特別な経験になると思います」(前同)

登山では、ときに「山頂まで行く」ことを諦める決断が必要になる。

とりわけ子どもを連れているとき、大人に求められるのは、自分がどこまで登りたいかではなく、目の前の子どもがどこまで安全に歩けるのかを見極めることだろう。

山頂を目指すことよりも優先すべきものは何なのか――。

今回の出来事は、子どもと山に登るすべての大人に、登山の目的と安全についてあらためて問いかけている。

取材・文/集英社オンライン編集部