横浜、前日に死去した元監督・渡辺元智さんに届けた勝利…投打で相手を寄せ付けず
第108回全国高校野球選手権大会は第13日の18日、準々決勝4試合が行われた。
横浜(神奈川)は堅い守りで花巻東(岩手)を完封し、18年ぶりの4強入りを決めた。健大高崎(群馬)は有明(熊本)を延長十回タイブレイクの末に破り、初の準決勝進出。天理(奈良)は終盤の猛攻で三重(三重)に快勝して9年ぶり、智弁和歌山(和歌山)は序盤の大量得点で仙台育英(宮城)を寄せつけず5年ぶりの4強入り。19日は休養日で、準決勝は20日に行われる予定。
横浜 6―0 花巻東
横浜が14安打で完勝。四回に小林大の適時打などで2得点し、五回に江坂、安食の適時打でリードを広げた。織田は123球で完封。花巻東は三回に好機を阻まれ、四回以降は散発4安打だった。
「教えは今につながっている」
前日に死去した横浜の元監督・渡辺元智さんに勝利を届けた村田監督の目には涙があった。「渡辺さんが空から応援してくれていると、選手たちが一生懸命やってくれた」。投打で相手を寄せ付けない試合運びは、渡辺さんが築いた横浜らしい野球そのものだった。
先発の織田は序盤からエンジン全開。一回に4番古城を直球だけで三振に仕留めると、2回戦でマークした春夏の甲子園歴代最速156キロを連発した。打者によっては変化球を多投しながら10奪三振。九回にも156キロを計測した。
エースの力投に野手も応える。三回二死一、二塁で古城に痛烈な打球を飛ばされたが、左翼手・江坂が「(二塁)走者が走った瞬間に刺せると思った」と好返球で本塁タッチアウトに。九回も打者走者が塁を離れた隙を見逃さず、息の合った連係で刺して試合を締めた。
この一戦の重みを、全員が理解していた。渡辺さんとともに1998年に「春夏連覇」を果たした松坂大輔さんの背番号1を受け継ぐ織田は、渡辺さんから「自分の投球ばかり追いかけず、対相手で考えること」を説かれ、「教えは今につながっている」と感謝する。選手たちは試合後、全員で甲子園の空を見上げた。天国の名将へ、全国制覇を届けるつもりだ。(坂本俊太郎)
横浜・村田監督「(織田は)緩急をうまく使って投げ切ってくれた。1点の重みを感じてやってくれた打線にも感謝したい」
教え子やライバル、名将しのぶ
横浜の元監督、渡辺元智さんは多くのプロ選手を育てた。教え子や激闘を演じたライバル校の監督たちが名将をしのんだ。
横浜のエースとして1998年、甲子園で「春夏連覇」を達成した松坂大輔さんは大会本部を通じ、「その言葉には魂が宿っていた。何げない言葉で選手は安心し、士気が上がる。監督さんと出会わなければ、自分はここにいない。ありがとうございました」とコメントを出した。
渡辺さんの孫の楽天・渡辺佳は16日に連絡を受け、仙台から車で駆けつけたという。「間に合わなかったけど、会いに行けてよかった。プロの舞台に来られて、少しは孝行できたのかな」と語り、「野球を頑張ることが一番喜んでもらえると思う」と前を向いた。
ソフトバンクの近藤は「技術はもちろん、人間としてのあり方を教わった」と振り返り、「横浜の3年間があったから今がある」と感謝。DeNAの筒香は「1週間前にも連絡をいただいた。急なことで現実味が全く湧かない感じ」と吐露し、「自分も周りの方々にいい影響を与えられるように頑張りたい」と話した。
98年の選手権準決勝で横浜と名勝負を繰り広げた明徳義塾(高知)の馬淵史郎監督は「投手を中心とした堅守と緻密(ちみつ)な攻撃。スマートな横浜の野球が憧れだった」。昨年、明徳義塾の50周年パーティーで「野球界の発展に力を尽くしたい」と話していたことが印象に残っているという。
PL学園(大阪)の中村順司元監督は、退任を決めて臨んだ98年春の選抜大会準決勝で、1点差で敗れた。「選手の持ち味を生かすチームを常に作られていた。甲子園での最後の試合を渡辺さんと戦えたことは、最高の喜び」と語った。
骨折越え2安打、花巻東主将・古城大翔が涙
花巻東で1年夏から4番に座る強打者で主将の古城は2安打を放ち、意地を見せた。春に右足骨折を経験し、「けがをして痛みが強かったが、明日から仲間と野球ができないという心の傷の方が痛い」と涙を流した。チームは毎回のように走者を出し、全員が力を出し切った。「最後の最後で素晴らしい高校と対戦でき、ものすごく価値のある日だった」と振り返った。
花巻東・佐々木監督「横浜の堅いディフェンスが数段上だった。打者も食らいついていったが、思ったより失点が多かった」
