熊本地震が突きつけた「避難生活の課題」に応える…鹿島建設でも大林組でもない「防災・減災」6銘柄
2026年7月28日に発生した熊本地震は防災・減災の重要性を改めて突きつけた。防災関連というと鹿島建設や大林組などのゼネコンを想起しがちだが、災害後の暮らしを支える企業群は他にもある。 著書『2倍株・3倍株がぽこぽこ生まれる のんびり日本株投資』があり、「おせちーず」のペンネームでも知られる、さかえだいくこ氏が紹介する。
今こそ改めて考えたい「防災・減災」の重要性
2026年7月28日に発生した熊本地震は、改めて自然災害が多い日本における防災・減災の重要性を私たちに突きつけました。熊本では2016年春にも大きな地震が発生しており、その復興がようやく進みつつあった矢先の再度の災害であり、地域にとっては長期にわたる困難が続いています。被災地では今なお不安を抱えながら生活されている方もおり、まずは被害に遭われた皆さまに心よりお見舞い申し上げます。
こうした災害を考える際には、建物の耐震化や道路・橋梁の強靱化といった「被害をできるだけ小さくする対策」に加え、災害発生後の暮らしを支える備えにも目を向ける必要があります。特に重要なのが避難所の生活環境です。避難生活の安全と衛生、そして尊厳を守ることが欠かせません。高齢者や乳幼児、持病のある方などへの配慮も含め、避難所を単に「命を守る場所」から「災害後も安心して生活できる場所」へと変えていくことが求められています。熊本地震を一時的な出来事として捉えるのではなく、過去の震災からの復興途上にある現実も踏まえ、全国の自治体や企業、そして私たち一人ひとりが、次の災害に備える契機として防災・減災を改めて考えることが重要だと改めて思わされます。
筆者がかつて地方自治体で働いた経験を踏まえると、各自治体が夏から秋にかけて来年度予算を想定します。夏に発生する自然災害対策が来年度予算編成のテーマの一つになる自治体が少なくないのではと勝手ながら想像しています。自治体が予算を編成する際参考に材料にすることが多いのは、他自治体での導入・利用実績です。そのような視点も鑑みて、防災・減災で着目されそうな銘柄を選んでみました。なお、ご紹介する銘柄には小型株が含まれます。そのような銘柄は大型株のような活発な売買が日常的ではないことは念頭においてほしいです。
「水とトイレ」で避難生活を支える
■水設備だけではなく、災害用マンホールトイレもある:前澤HD(東プ:575A)
2026年6月に前澤工業と前澤化成工業が経営統合して誕生した、水インフラを軸とする企業グループです。前澤工業は、国や自治体向けに浄水場・下水処理場の水処理設備、上下水道用バルブ、河川・農業用水関連設備などを手掛けており、施設の更新や耐震化にも関わっています。一方、前澤化成工業は上下水道関連製品に強く、災害時に避難所などでトイレ環境を確保する「災害用マンホールトイレ」も展開しています。下水道への直接放流型から一時貯留型、タンク式まで幅広くそろえているのが特徴です。
特に大規模災害では、食料や寝床とともに「水とトイレ」の確保が避難生活を支える重要な要素となります。前澤HDは経営統合によって、国土強靱化や老朽インフラ更新に加え、「防災・減災+避難所の生活環境改善」機能も提供できる企業になりました。
■非常用発電機を製造販売:デンヨー(東プ:6517)
エンジン発電機や溶接機、コンプレッサなどを手掛ける発電機の大手メーカーです。建設現場などで使われる可搬形発電機に強みを持っています。この可搬形発電機が、防災・減災の観点で注目されます。大規模な地震や豪雨では送電設備が被害を受け、長期間の停電が発生することがあります。特に避難所では、照明だけでなく、スマートフォンの充電、通信機器、給水設備、冷暖房、医療・衛生関連機器などにも電力が必要となるため、非常用電源の確保は避難生活を維持するうえで欠かせません。
デンヨーは、こうした非常時を想定した防災用非常発電機も展開しており、避難所や放送・通信施設などの予備電源として利用できる製品をそろえています。長時間の停電を想定した72時間連続運転対応機種もあり、災害時の電力確保という重要な役割を担います。国土強靱化に加え、避難所の生活環境改善が重視されるなか、デンヨーは「災害時にも電気を届ける」製品を提供しています。
段ボール製品を緊急支援物資として提供
■段ボールベッドを自治体へ供給する協定締結実績あり:トーモク(東プ:3946)
段ボールや紙器、住宅などを手掛ける企業で、防災・減災、とりわけ避難所の生活環境改善という観点から注目できる企業です。大規模な地震や豪雨が発生すると、学校の体育館などが避難所となりますが、硬い床で長期間生活することは、高齢者をはじめ避難者の大きな身体的負担となります。そこで活用されるのが、組み立てが容易で軽量な「段ボールベッド」です。床から一定の高さを確保できるため、立ち上がりやすくなるほか、床の冷気やほこりを避ける効果も期待できます。
トーモクは段ボールベッドや段ボール製の間仕切りなどを供給しており、自治体との災害時の供給協定も進めています。例えば小樽市とは、災害発生時に段ボールベッドや間仕切りなどを供給・運搬する協定を締結しています。また、実際の災害時にも段ボール製品を緊急支援物資として提供してきました。避難所は単に雨風をしのぐ場所ではなく、プライバシーや衛生、睡眠など生活の質を確保することが重要になっています。こうした避難所環境の改善が全国的に進めば、段ボール製品の大手で供給網を持つトーモクは、「避難所の生活環境を支える防災・減災企業」といえるでしょう。
■被災地で「水を作れる」:メタウォーター(東プ:9551)
浄水場や下水処理場などの設計・建設から運営・維持管理までを手掛ける、水・環境インフラの大手企業です。災害時に欠かせないのが「水の確保」です。大規模な地震や豪雨では水道管や浄水施設が被害を受け、長期間の断水が発生することがあります。避難所では飲料水だけでなく、手洗いや洗濯、トイレ、入浴などにも大量の生活用水が必要となるため、安全な水を確保することは避難生活を維持するうえで極めて重要です。
メタウォーターは、こうした非常時にも活用できる車載式の浄水装置を自治体へ納入した実績があります。
これはトラックなどの車両に浄水ユニットを搭載したもので、電源や水源が限られる被災地でも稼働できるよう設計されています。セラミック膜ろ過技術により、ため池や河川などの濁った水からでも不純物や細菌を除去し、飲用可能な水や生活用水を現地で生成できるのが特徴です。愛媛県今治市に納入された車載式セラミック膜ろ過装置は、2024年の能登半島地震の際に石川県志賀町へ派遣され、ため池の水を浄化して、避難施設に設けられた仮設入浴設備などの生活用水として実際に活用されました。平時には上下水道インフラを支え、災害時には被災地で水をつくる――メタウォーターは、国土強靱化に加えて、「避難所の水を守る防災・減災企業」という側面を持っています。
夏の避難所で需要増が見込まれる
■夏の避難所の空調設備需要増が見込まれる空調機器:ダイキン工業(東プ:6367)、アイシン(東プ:7259)
真夏の災害の課題が、避難所の空調です。学校の体育館は地域の避難所として利用されることが多い一方、冷暖房を前提として造られていない施設が少なくなく、猛暑時には室温が大きく上昇します。学校の体育館は体育をする場所であって、児童生徒が長時間を過ごす場所ではないため、空調整備が後回しになりがちなのでしょう。しかしながら多くの人が長時間生活する避難所では、特に高齢者や乳幼児、体調のすぐれない人にとって、夏の熱中症が深刻なリスクとなります。文部科学省も体育館への空調整備を進めていますが、普通教室に比べて設置率が低く、自治体による整備状況の差も課題です。裏を返せば、今後需要が見込まれる分野です。
体育館の空調に向いているのが少ない電力で稼働させることが可能で、エネルギーを分けることでリスク分散になるガスヒートポンプエアコン(GHP)です。「GHP XAIR(エグゼア)」は東京ガス、大阪ガス、東邦ガスが商標登録しているGHPでダイキン工業やアイシン等が販売しています。
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さかえだいくこ(おせちーず)
大学常勤講師/日本FP協会認定CFP®/日本証券アナリスト協会認定証券アナリスト
21歳で証券会社に口座を開設して以来、証券アナリストだった時代を除きずっと個人投資家。投資家歴は30年超。現在50代で北東北在住。
大学卒業後、システムエンジニア15年、証券アナリスト7年半、地方公務員5年半を経験し、49歳でフルタイムワークからいったん卒業。しかし50歳目前で、某企業の研究員として週休3日の会社員に復帰。その後、地元の大学で非常勤講師としてキャリア教育にも従事し、53歳で常勤講師となる。合間に投資の講師や投資ライター業も営む。SMBC日興証券「日興フロッギー」にてコラム連載中。
MBA保持者でTOEICは950点。地方移住とがんを克服した経験もある。『2倍株・3倍株がぽこぽこ生まれる のんびり日本株投資』(すばる舎)が初の著書。
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