韓国代表との試合を控えるバスケ日本代表・八村塁(写真/GettyImages)

写真拡大

 15日・16日の2夜連続でバスケットボール日本代表戦が地上波ゴールデンタイムに生中継される。なぜ今、テレビ局はバスケに注力するのか。サッカーや野球、バレーボールの中継と比較しながら、テレビ局の思惑と「見るスポーツ」としてのバスケの可能性をコラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。

【写真】テレ朝のバスケの中継に出演、ヴィトンの服で帰国する透明感たっぷりの広瀬すず。他、バスケ日本代表・渡邊雄太と元フジアナの久慈暁子のツーショットなども

 * * *

「野球、サッカー、バレーボールの次はバスケットボールか」と感じる人は多いのではないでしょうか。

 15日(土)と16日(日)の夜、バスケットボール日本代表と韓国代表の試合が地上波のゴールデンタイムで生放送されます。

 両試合の位置づけは、来年開催されるワールドカップ最終予選の前哨戦。単なる調整試合ではなく、「7月の対戦でわずか2点差の敗戦を喫した相手にリベンジして本番に弾みをつけられるか」という見どころがあります。

 15日は日本テレビ系、16日はテレビ朝日系で、どちらも全国ネット生中継。最も視聴者の多い土日のゴールデンタイムでレギュラー番組を休んで生放送するところにバスケットボール中継への期待が見て取れます。

 なぜ今、両局はバスケットボールに注力するのか。テレビ局のスポーツ中継として目指すはサッカーか、バレーボールか、それとも野球なのか。それぞれの思惑と可能性を読み解いていきます。

「やるスポーツ」から「見るスポーツ」へ

 なぜ今、バスケットボールに注力するのか。

 もともとバスケットボールは日本人にとってなじみ深いスポーツ。学校の体育館などにコートがあり、男女ともに体育の授業や部活動として行われています。特に男女ともに盛んなことから学校の部活動としては「国内最多」と言われるなど、子どものころから野球やサッカー以上に「やるスポーツ」として身近な存在でした。

 これはつまり「見るスポーツ」としての潜在能力も高いということ。かつてはコアなファンがアメリカのNBAを見るのみで国内リーグのファン層が広がらないという課題を抱えていましたが、近年はBリーグが全国的に浸透しつつあり、ファンの中には若年層の男女が目立ちます。

 プレーに目を向けても「球技の中で最も得点が入るスポーツ」と言われるだけあって、盛り上がるシーンが多いことも強みの1つ。そのたびに選手の感情が伝わり、会場のボルテージが上がりやすく、それらも中継を引き立てる演出になるなど、テレビ向きのスポーツと見られています。

 また、バレーボールと同じように、高身長のイケメン選手たちが女性層を引きつけられることもバスケットボール中継の強みでしょう。

90年代後半のサッカーに似た熱狂

 次にテレビ局がスポーツ中継として目指すは、サッカーか、バレーボールか、それとも野球なのか。

 日本人は欧米人と比べて「地元のクラブチームより日本代表が出場する国別対抗戦のほうが好き」という人が多数派。その意味でどのスポーツも日本代表の強さが中継の成否を左右すると言われています。

 実際このところバレーボール中継が高視聴率を獲得しているのは、男女ともに一時の低迷期を脱してメダル争いを見せているから。同様に野球も常に優勝を狙えるポジションにいるため、世界大会の中継は必ず盛り上がるとみなされています。

 その点、バスケットボールは「2023年のワールドカップでアジア1位となって翌年のパリ五輪に48年ぶりの自力出場を決めた」という段階でFIBAランクは22位。強くなったバレーボールほど視聴者層は広くない一方で、サッカーの1990年代後半のような「強くなっていく過程を応援する」という熱狂が期待できます。

 また、フィジカルコンタクトがあるものの、サッカーやラグビーとは異なり中1〜2日でも試合を開催できることもテレビ局にとっては魅力の1つ。NBAなどの人気を考えると現実的には難しいものの、本音を言えば「バレーボールのように国際試合をもっと増やしてほしい」というところでしょう。

 それでもワールドカップと五輪という大きな世界大会が2つあるため、サッカーや野球よりも放送頻度が高く、結果が伴えば盛り上がりは増していくと見られています。これらの点で地上波のテレビ中継として目指したいのはバレーボールが最も近いのかもしれません。

期待される国民的スター選手の登場

 日本テレビとしては野球のジャイアンツ戦での視聴率獲得が難しくなり、民放他局に比べてスポーツ中継に課題を抱えていました。そこで目をつけたのがラグビーとバスケットボールであり、両方とも徐々に日本代表が強くなっていることで局内でも期待されています。

 一方、テレビ朝日は放映権の高騰や親善試合の視聴率低迷などでサッカー中継が危うくなったことで、バスケットボールに注力したいところ。コラボ動画を配信するなど「日本テレビと組んでバスケットボールを盛り上げよう」という姿勢が見られます。

 両局が最も期待しているのは、当然ながら日本代表が勝つこと。勝ち進むほど中継が増え、メダルが近づくほど視聴率獲得が期待できるでしょう。

 さらに両局が求めたいのは、ファン以外も知る国民的なスター選手の登場。日本テレビが中継の見出しに「NBA八村塁&河村勇輝2年ぶり代表復帰!」と掲げているように日本代表には2人のスター選手がいますが、放送局としての理想は大谷翔平選手クラス。それが難しければ、明るい未来を予感させる若手スター候補の台頭が盛り上がりには欠かせないでしょう。 

 さらにバレーボールの石川祐希選手や高橋藍選手らのようなイケメン選手に活躍してほしいことも中継局の本音。地上波の放送である以上、コアなファンだけでなく一般層をどれだけ引きつけられるかが重要であり、特にバレーボールの女性ファンは視聴率獲得に貢献する貴重な存在と見られているだけに、バスケットボールでもそれが期待されています。

日テレは菊池風磨、テレ朝は広瀬すず

 日本テレビはアスリート解説に田臥勇太さん(宇都宮ブレックス)、「日テレ系バスケSPキャスター」として菊池風磨さんが出演。一方、テレビ朝日はアスリート解説に五十嵐圭さん(新潟アルビレックスBB)、「テレビ朝日バスケSPブースター」として広瀬すずさんが出演します。

 出演者の構成がほぼ同じなのは、バスケットボール中継の視聴者層がまだ十分ではないからであり、ライト層の関心を呼べる人気タレントが不可欠ということ。今後もアスリート解説でコアなファンを満足させながら、いかにライト層を呼んでいくのか、試行錯誤が続けられるでしょう。

 ワールドカップ最終予選は、27日にアウェイでのサウジアラビア戦がテレビ朝日系、31日にホームのカタール戦が日本テレビ系で放送されます。出場権を獲得し、ワールドカップでの躍進。さらに2028年ロサンゼルス五輪にも出場してファン層を広げていけるか。

 WBCがNetflixの独占配信になるなど有料動画配信サービスの台頭で地上波のスポーツ中継が危ぶまれる中、バスケットボールにかかる期待は大きく、今回の放送はその試金石になりそうです。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。