Google のAIクローラーを切れない理由 検索依存からの脱却を急ぐパブリッシャーのジレンマ

記事のポイント
参照トラフィック喪失を懸念し、People Inc.はGoogleのクローラーをまだ止めないと表明した。
同社のトラフィックの約21%がGoogle検索由来で、検索流入は前年同期比40%減となった。
非セッション型収益は前年同期比16%増で、デジタル収益全体の43%を占めるまで拡大した。
米パブリッシャー大手ピープル・インク(People Inc.)のCEOニール・ヴォーゲル氏は、同社ではGoogleのクローラーをブロックしないと語った。経営陣がそれを望んでいないからではなく、獲得しうる参照トラフィックを一切失いたくないからだ。
Google検索依存というジレンマ
8月4日に開かれた決算説明会で、ヴォーゲル氏はパブリッシャー業界の多くが抱えるジレンマを口にした。彼らは自社コンテンツを自らの管理下に置くためにGoogleのAIクローラーをブロックしたいと考える一方で、それによっていまなお依存しているGoogle検索からの参照が損なわれることを恐れている。
ほとんどのパブリッシャーは、オーディエンスの獲得、コンテンツの発見、収益の面で依然としてGoogleの参照トラフィックに依存しすぎており、そのクローラーを遮断するリスクを負えないのが実情だ。
ヴォーゲル氏はこう述べた。「AIを止めるとすれば、検索も止めることになる。そして、ピープル・インクのCFOティム・クイン氏が言ったように、検索は当社にとって価値を生み出す重要な原動力となる段階をほぼ終えつつある。しかし、まだその段階には達していないため、現時点で検索をオフにするつもりはない。しかし、これは我々が活用できるツールであり、今後も継続的に検討していくものだ」。
ピープル・インクのトラフィックのうち約21%はGoogle検索由来で、前四半期の25%から低下した。同社ではコアセッションが前年同期比22%減、Google検索トラフィックが前年同期比40%減となっている。
ヴォーゲル氏はこう付け加えた。「現時点では、規模の面で明らかに現状維持のほうへ天秤が傾いている。しかし、これは我々が注視していくトレードオフだ。とはいえ、我々は声高に何かを主張しようと勇み立っているわけではない。本当にやろうとしているのは、自社コンテンツの利用について公正な経済的取り決めに到達することだけだ。そのために、我々は手持ちのあらゆる手段を使うつもりだ。そしてもちろん、その進め方は経済的に理にかなったものにする」。
広告単価の上昇と収益源の多様化
AIによる要約は、コンテンツをクロールする見返りとしてかつてGoogleが提供していた参照トラフィックを侵食しつつある。Googleのクローラーをブロックすることは、パブリッシャーがより公正な取引を迫るために使えるひとつのレバーではあるが、検索での露出が減れば、販売できるインプレッションも減ることを意味する。
クイン氏は「セッションは減っているが、単価は大きく上がっている。単価が上がっているのは、質の高いコンテンツと、当社の販売部門のパフォーマンスによるものだ」と述べた。
一方でクイン氏は、広告単価が「大幅に」上昇し、それがピープル・インクの非セッション型ビジネスへの移行を後押しして、Google検索への依存を弱めるのに寄与していると指摘した。
たとえば同社は、セッション型と非セッション型の広告を組み合わせ、Web・ソーシャル・イベントを含むプログラムとしてパッケージ化していると、彼は続けた。
ヴォーゲル氏はこう述べた。「これが当面の成長のダイナミクスだ。非セッション型の成長を先導したのは、AIパートナーシップを含むApple Newsのライセンス、ソーシャルプログラム、イベント、そしてD/Cipherだ。非セッション型収益は、当社のブランド力に支えられている。我々はこれまでになく効率的に、より多くのフォーマットで、より多くのプレミアムコンテンツを生み出している」。
非セッション型収益は第2四半期に前年同期比16%増となり、デジタル収益全体に占める割合は39%から43%へ、金額では1億800万ドル(約162億円)から1億2500万ドル(約188億円)へと拡大した。この収益には、ソーシャルキャンペーン、イベント、スポンサーシップ、メール、広告ターゲティングツールのD/Cipher、ライセンス契約が含まれる。
セッション型収益はデジタル収益全体に占める割合が前年同期比で61%から57%へと低下し、広告収益が横ばいだったため金額としても横ばいにとどまった。
ヴォーゲル氏はこう締めくくった。
「我々は明らかに向こう側に近づいているが、まだ完全に抜け出したわけではない。そして、セッション減少の影響は当社の数字にも表れている」。
[原文:People Inc. CEO: We're not turning off Google crawlers yet]
Sara Guaglione(翻訳、編集:藏西隆介)
