万引きや行列だけじゃない「セルフレジ」の新たな問題…“小銭を大量投入”してレジを詰まらせるトラブルが絶えない理由
人手不足への対策や人件費削減などを目的に導入された“セルフレジ”。だが、万引きが増えるといった新たな問題が発生して、かえって店側が頭を抱える事態になっている。さらに最近では、そんなセルフレジを利用する客が、会計の際に大量の硬貨を投入し、詰まらせるトラブルが続出しているのだという。【取材・文=山内貴範】
【写真】小銭を大量投入という新たなトラブルも…それでも導入が進むセルフレジの姿
ためこんでいた硬貨を大量投入
筆者が実際に遭遇した出来事を紹介しよう。7月のある日、埼玉県内のスーパーマーケットに立ち寄ったところ、店員と高齢男性が言い争いになっていた。聞けば、男性がとんでもない量の小銭をセルフレジに投入。しかも、1枚ずつではなく一度に流し込もうとしたため、セルフレジに小銭が詰まってしまったというのだ。

セルフレジは停止し、一時的に会計ができなくなったため、男性は「はやく直せ!」「俺は急いでいるんだ!」と店員を叱責し始めたのだという。
男性はガラスの瓶を持参していたが、そのなかには1円玉、5円玉……などの小銭がびっしり入っていた。おそらく、ためこんでいた小銭で会計しようとしたのだと思われる。万引きのような犯罪行為ではなく、お金を払う意思は明確にあるのだから、店側も強く言うことはできない。しかし、やっていることは確実に迷惑行為であろう。
後日、別のスーパーで店員に話を聞くと、セルフレジで小銭を大量に使いまくる人は珍しくないのだという。その原因を店員は「あくまでも推測」としつつ、こう話してくれた。
「数年前から、ゆうちょ銀行がATMで小銭を預ける際、1枚から手数料をとるようになりました。窓口で預けた場合も、100枚を超えると手数料がかかってしまう。そこで、自宅に大量に小銭をため込んでいた人たちが、セルフレジで使おうと考えたようでして。
財布がパンパンになるくらい小銭をため込む癖がある人もいますよね。そういう人も小銭をセルフレジで使ってしまおうと考え、トラブルを引き起こす原因になっています」
機械が相手だと罪悪感が薄れる
昨今、スーパーのセルフレジには、硬貨投入口の横に「硬貨での支払いは30枚までとさせていただきます」「大量の硬貨の投入はご遠慮ください」と注意書きが貼られるようになった。前出の店員が指摘した通り、わざわざこんな注意書きが必要なほど、硬貨の大量投入をする人はたくさんいるのだと思われる。
なお、店で硬貨を使う際のルールとして、“同一額面の硬貨での支払いは20枚まで”と法律上の規定がある。それ以上の枚数での支払いは、店側が断ることが可能になっている。だから、従来の対面式のレジで大量の小銭を使ったら拒否されそうな気がするが、セルフレジなら機械が相手なので、大丈夫だと思うのかもしれない。
ほかにも、セルフレジで多くみられる迷惑行為は、両替機代わりに使おうとすることだという。前出の店員がこのように話す。
「100〜200円くらいの商品を1個だけ買って、会計を1万円札で支払うというものです。これを来店のたびに繰り返して、両替機代わりにする人がいます。これもやはり店員と対面するレジだと気が引けると思うのですが、機械が相手ならやりやすい。
両替は銀行によっては手数料が取られるし、窓口にいくのが面倒。買い物ついでに両替しようという魂胆なのでしょう。当店では、地元の個人商店の店主が自身の店の釣り銭を補充するために、それをやっていたりするんです。100円の品物を買うときに1万円札を出すのはもちろん違法ではないため、いつも同じことを繰り返していても、注意できないのが悩ましいです……」
客を疑いの目で見るのはしんどい
従来は存在しなかったトラブルや問題が連発しているセルフレジ。対面式でないぶん、客側のモラルが崩壊しやすいのであろう。現状は、品物をレジに通すところまで店員が行い、会計を客が行う“セミセルフレジ”が、比較的マシなのかなと思ってしまう。
そもそも、本当にセルフレジは人件費削減になっているのだろうか。セルフレジを監視している店員も、精神的な負担が少なくないようだ。店員がこのように話す。
「最近は万引き防止のために、モニターでお客さんの手元を監視できるようになっています。しかし、お客様を常に疑いの目で見るわけで、正直言ってしんどいものがある。何より、セルフレジで品物を通し忘れても、それが故意なのか、うっかりなのか、判別が難しい。ユニクロのような、カゴを置けば瞬時に会計されるレジを開発してほしいです」
話を聞く限り、セルフレジの導入で店全体の人件費こそ減らせているのかもしれないが、店員1人の負担はむしろ増えている印象だ。
客の不満も大きい
客側も大変である。特に、セルフレジでうっかり商品を通し忘れたら、万引き犯扱いされるリスクまであるのだから、たまったものではない。ちなみに筆者は万引き扱いされて店員に叱責されたことがあるのだが、それ以来、一度もセルフレジは使っていない。
物価高で商品が値上がりしているうえ、レジ袋も有料なのに、会計を自分でやらなければいけないのだから、買い物でさらに余計な労力を使う羽目になっている。こうした点も、セルフレジに不満を持っている人が多い要因だろう。せめて、セルフレジを利用した人は会計から3%値引きするなど、何らかのメリットを与えるべきではないだろうか。
ライター・山内貴範
デイリー新潮編集部
