真剣勝負の現場で……『ホンジャマカ』石塚英彦が語る「東映京都撮影所の秘話」

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太秦は多くの名作を生み出した聖地です

みなさん、ごきげんよう。スーパーマーケットで買い物中に、美味しそうだと思って手に取った商品がドッグフードだった石塚英彦です。

さて今回は、私が’13年に刑事ドラマの撮影でお世話になった京都・太秦の東映京都撮影所について書かせていただきます。

オファーがきた時点で主役であること、撮影は週5日間行われること、現場は東映京都撮影所だということが分かっていました。週5日も家をあけて京都へ行くのか? でも主役だぞ――少し悩みましたが、京都に行けば週5回も生八ツ橋が食べられると思い、快諾しました。

クランクイン前日、私は5日分の下着、靴下、ハンカチなどをカバンにパンパンに詰め込んで京都へ。撮影所の前に立つと、少し震えました。『仁義なき戦い』や『日本侠客伝』、『水戸黄門』に『暴れん坊将軍』など、日本の名作の多くがこの場所から誕生しました。

今まで、何人のスターたちがこの門をくぐって来たのだろうか。私は門を抜けて左側にある俳優会館へ向かい、「明日からお世話になります、石塚英彦です」とご挨拶をしました。

その後、事務員の方が俳優会館内を案内してくださいました。床山さん(役者のかつらを結う職人)や衣装さんの部屋を通り過ぎ、私の楽屋に到着。2階の角の、窓のある個室でした。ロケバスが楽屋だったエキストラ時代からおよそ30年、ついに太秦で個室がいただけた瞬間でした。

時間があったので館内を散歩してみると、上の階は空気が少し違い、楽屋の入り口に「のれん」が掛けられています。里見浩太朗さん、高橋英樹さん、松方弘樹さん、松平健さん、由美かおるさんといった大スターになると、撮影の有無にかかわらず、楽屋が常設されているのです。スゴイ。役者に対する太秦の愛と歴史を感じました。

役者からも愛されている太秦

最上階にはトレーニングジムがあり、扉を開けるとベンチプレスやダンベルなどの器具がズラリと並んでいます。私も軽く力だめし。ベンチに横になりバーを上下していると――あれ? 誰かに見られている。

ふと壁に目をやると、高倉健さんの写真がいくつも飾られていました。上半身裸の健さん、スーツの健さん、撮影所内を歩く健さん。私を見ていたのは健さんでした。気がつくと、今までに挙げたことのない重さのバーを挙げていました。

後に聞いたところによると、トレーニングジム内の器具はすべて健さんが寄贈してくださったのだとか。ロビーの大型テレビは里見浩太朗さんが寄贈されたそうです。太秦は役者からも愛されていました。

撮影初日、スタッフに挨拶を済ませ、いざファーストカット。監督から演技指導をうけている最中も、撮影部や照明部、音声部の職人たちが機敏に動いています。ベテランが若手を厳しく指導した際は、現場の空気がピリッとします。誰一人笑っている人などいません。ワンカットごとが真剣勝負です。

しかし、そんなスタッフも撮影が終われば笑顔あふれる気さくな方々でした。このメリハリがいい。だから役者から愛されるのでしょう。

現場は厳しかったですが、衣装さんは母親のように優しかった。気温が高い日のロケでは、ワイシャツの背中にポケットを付けてそこに冷感剤を入れてくださったので、快適に撮影ができました。人を楽しませるために、真剣に仕事に取り組む。かっこ良すぎる職人たちへ会いに、もう一度太秦へ行きたいものです。

『FRIDAY』2026年8月7・14日合併号より

文・イラスト:石塚英彦

’62年、神奈川県生まれ。恵俊彰とのコンビ「ホンジャマカ」で活動、「元祖!でぶや」(テレ東系)などのバラエティに加え俳優や声優としても活躍。現在、「よじごじDays」(テレ東)の金曜MCとして出演のほか、YouTubeやInstagramにも注力している