細菌と古細菌はそれぞれ独立して無生物から生物に進化した可能性

「地球最初の生命がどのように誕生したのか」は科学上の大きな謎となっており、生命の起源についてさまざまな説が提唱されています。新たに、生命にとって必要不可欠な「代謝」の起源について探った研究により、生命の主要な系統である細菌と古細菌はそれぞれ独立して非生物から生物へと進化した可能性があると示されました。
Intermediate stages in the origin of metabolism at a phosphorylating hydrothermal vent | Science Advances
Two origins of life | EurekAlert!
https://www.eurekalert.org/news-releases/1138775
'Only One Conclusion': Radical Study Suggests Life on Earth Arose Twice : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/radical-study-suggests-life-on-earth-arose-from-non-living-matter-twice
一般的に生命は周囲の環境に反応し、エネルギーを取り込んで成長し、そして自己複製する存在であると考えられています。これら以外で生命に普遍的に備わっている要素のひとつに、摂取した物質から日々の活動に不可欠な分子を作り出す「代謝」があります。
生命は代謝を行うことで、摂取した物質を細胞を動かすエネルギーや体を構成する物質に変換しています。体内で代謝を行うには、化学反応の触媒として機能する酵素が必要ですが、酵素自体は化学反応の産物です。そのため、「最初の生命体は他の酵素の助けを借りずに、どのようにして酵素の生成を含む最初の代謝を開始したのか?」という疑問が生じます。
そこでドイツのデュッセルドルフ大学分子進化研究所のチームは、単体で生存・成長・繁殖できる「自由生活細胞」が誕生する以前の代謝に焦点を当て、生命の起源につながる研究を行いました。

初期の生命体は、生命の構成要素であるアミノ酸・RNA塩基・ビタミンなどを、初期の地球に存在していた水素・アンモニア・二酸化炭素などの化合物から代謝で作り出しました。代謝は420種類もの化学反応からなる複雑なものであり、一瞬にして生じたものではなく、捉えどころのない「中間的な集合状態」を経たと考えられています。
研究チームは、生命の主要な系統である細菌と古細菌のゲノムに含まれる、主要な代謝酵素のタンパク質構造を調査しました。そして、これらの代謝酵素を複雑さの順に並べるアルゴリズムを開発し、その酵素がどのような順序で進化してきたのかを判断し、大まかな進化のタイムラインを作成しました。
その結果、全生命体の最終共通祖先「LUCA」は必要な代謝酵素の半分しか持っておらず、残りの半分はLUCAが出現した環境中の金属によって触媒されていたことが判明。LUCAが存在した海底の熱水噴出孔にある金属は、代謝における驚くほど多くの酵素を置き換えることが可能だそうです。
研究チームによると、初期の生命体は「代謝反応を環境中の金属のみに依存する段階」「LUCAにおける環境中の金属と自身の酵素のハイブリッドで代謝を行う段階」「LUCAから細菌および古細菌に分岐する進化段階」「外部金属への依存が完全になくなり、単体で存在できる自由生活細胞」という、複数の段階を経ていたとのこと。
そして重要な点として、LUCAから自由生活細胞への進化は、「細菌と古細菌が分岐した後」に生じていたことがわかりました。つまり、細菌と古細菌は代謝を環境中の金属ではなく自分自身で担う方法を、それぞれ独立して生み出したというわけです。論文の筆頭著者であるナタリア・ムンジャヴァック氏は、「細菌と古細菌の祖先が同じ必須代謝反応を触媒するために、構造的に異なる酵素を独自に進化させた事例が見られます。こうした並行的な発明が、自由生活性の細菌と古細菌の独立した出現への道を開いた可能性があります」と述べました。

また、研究チームは代謝を促進する重要なエネルギー源であるアデノシン三リン酸(ATP)に関する重要な発見も報告しています。ATPは代謝を促進する重要なエネルギー源ですが、酵素によって作られる複雑な分子であるため、生命誕生以前の化学反応では利用できないと考えられていました。
今回の研究では、熱水噴出孔に存在するパラジウムという金属を触媒として亜リン酸塩(Phosphite)を有機化合物と反応させると水中で一晩のうちに代謝性リン酸化反応が起きることがわかりました。論文の共著者であるデュッセルドルフ大学のマノン・シュリッカー氏は、「亜リン酸とパラジウムがATPと酵素の代わりとなるのです。これは驚くべきことで、初期の進化をはるかに理解しやすくしてくれます」と述べています。
科学系メディアのScienceAlertは、「もし今回の発見がさらなる研究によって裏付けられれば、私たちが思い描く生命の木は更新が必要になるかもしれません。私たちはLUCAを生命の木の『幹』と考え、過去と現在のすべての生命体はそこから枝分かれしていると考えがちです。しかし、もしかしたら完全に別々の2本の幹が存在し、それらがまだ厳密には生命体として存在していなかった段階で分岐したのかもしれません」と主張しました。
