日本の今の危機状況をどう突破しますか?【 答える人 】元防衛大臣・森本 敏
両国にとって大きな焦点となっていた核開発問題については、イランの核濃縮物質をIAEA(国際原子力機関)の監督下、希釈することで合意しています。イランのウラン濃縮度は60%以上に達しており、このまま進めば短期間で核兵器開発に至る可能性があります。
そのため、米国はIAEAの協力を得て濃縮ウランを希釈し、濃縮度を20%まで引き下げる方針です。ただ、イランはIAEA査察官の受け入れを拒否する姿勢を示し始めており、おそらく国内に核開発を放棄することに反対する勢力が存在するのでしょう。そうなると、核濃縮物質の希釈をどこまで実際に進められるかが、今後の大きな鍵になります。
─ 世界経済に打撃を与えているホルムズ海峡のあり方については米国とイラン間でズレがあります。
森本 ホルムズ海峡の解放については、イランが合意したようにみえるものの、イスラム革命防衛隊は、自国領海内における同海峡の権益を他国に譲らないとの立場を維持すると考えられます。こうした中、依然として問題となっているのは、ホルムズ海峡の全面的な再開を待つ400隻以上の大型タンカーの多くが通航できず、ペルシャ湾外で待機していることです。この問題の行方は、今後の機雷掃海作業がどのように進展するかにかかっています。
イランは、機雷掃海が完了した後も、ホルムズ海峡の通航料支払い要求を取り下げない可能性があります。また、機雷掃海には協力せず、どこに機雷を敷設したかを明らかにしない可能性もあります。米国を中心に機雷掃海の手続きを進め、タンカーが安全に航行できるようになるまでには、まだ時間がかかると思われます。結局、それまではホルムズ海峡の安全な通航が確保されず、石油価格も高止まりすることが予想されます。加えて、現状では、日本が機雷掃海作業に参加することも困難な状況にあります。
─ 日本のエネルギーは中東依存が9割ですが、代替の調達先の多様化をさらに推し進める必要がありますね。
森本 米国や南米のブラジルなどが当面の調達先となる可能性はあります。ただ、こうした国々から原油を輸入する場合、現有の精製施設では十分に対応できず、新たな調達先の原油の性状に適した精製設備を整備する必要があります。こうしたインフラ整備には時間もコストもかかります。したがって、日本は石油・天然ガスに依存するエネルギー政策から脱却し、原子力や太陽光、風力、水力、バイオマスなどの再生可能エネルギーへの依存度を高めるという代替策を進めるべきです。現在、原子力の発電比率は1割程度ですが、2040年頃までに再生可能エネルギーを4~5割、原子力を2割とする見通しが立てば、原子力への依存度は現在の2倍になります。今回のイラン問題が日本のエネルギー自給に重大な影響を与えたわけではありませんが、今後は原子力発電所の再稼働も含め、実現的な取り組みを進める必要があります。

