●コンテンツサービスは海外の携帯電話にどの程度必要なのか?
iモードがコンテンツ利用に優れているからといっても、WAPのコンテンツで満足できるユーザーであれば、iモードを利用する必要性もないのだ。ニュースや天気予報などベーシックなサービスであれば、低機能のWAP対応機種でも十分利用することができるわけで、"あえてiモードでなければ"と思えるキラーコンテンツがなければ、"あえて機種の少ないiモード専用端末を選んで"iモードサービスを利用しようという利用者も増えないというわけだ。

そもそも、携帯電話でコンテンツを利用する必要性は、国によって大きな差異がある。

日本のように毎日長時間を通勤・通学に要する国であれば、電車内でゲームやメールに興じる利用者も多い。しかし、バイク通勤者の多い台湾では、バイクに乗りながら信号待ちの時間に携帯を取り出しコンテンツを見る、といった使い方をすることは考えにくいだろう。

また、香港ではバスに乗ればTVが備え付けられており、CMやミニ番組が常時放送されている。乗客を飽きさせないよう、番組はバス向けに専用のコンテンツまで流されており、携帯電話の狭い画面でコンテンツを見るよりもはるかに面白いのだ。さらに、日常の最新情報は毎日50ページ以上ある新聞が日刊情報誌の役割を果たしている上、週刊情報誌が何誌も発行されている。これらも携帯電話の画面を見るより情報量が多い上に情報も遅くなく、なにより割安なのだ。

香港で主力の交通機関の1つはバスだ。本数が多いため座れることから朝の利用はバス、帰りは地下鉄、と通勤ルートを変える利用者も多い。どのバスにも専用TVが設置され、面白いコンテンツを絶え間なく流している。そもそもコンテンツを携帯電話で利用する必要性はどの程度あるのだろうか。香港の街中のどこにでもある雑誌/新聞販売店。コンビニも加えると、どこでも手軽に情報誌を入手できる。


携帯電話のコンテンツよりも、旧来のメディアが安価で使い勝手がよければ、あえて携帯電話で情報収集する必要性も出てこないというわけだ。

一方、ゲームや音楽の利用にしても、PSPやiPodなど、専用機を持っている若者が多く、携帯電話よりも操作性や機能は格段に上だ。携帯電話ならばたしかにその場で音楽をダウンロードすることもできる。しかし自宅に戻ってからインターネット上で音楽を購入し、それをiPodなどに転送して利用したほうがライブラリ管理なども容易だ。パソコンの普及率、とくに利用率が高い国であれば、このようにパソコンを利用したほうが快適なことをあえて携帯電話で行うことは合理的とは考えにくいのだろう。

●切り札とならないiモード(Push)メール
iモードの特徴の利点といわれるPushメールも、海外ではすでにSMSが普及しているためメリットはそれほど高くはない。海外では携帯メールを使わないことから、日本の方が進んでいると考えている人もいるが、携帯電話の利用者同士間であれば、海外ではSMSの利用は日常的に行われている。

もちろん海外でも最近ではPushメールの必要性が高まってきてはいるが、Pushメールの大きなターゲットであるビジネスユーザーは、スケジュールなどもシンクロできる「BlackBerry」などのサービスを好む方向に動いている、

一方、法人以外のターゲットである若者層は、SMSの次はメールではなく常時仲間とコンタクトを取り合えるインスタントメッセージ(IM)への移行が始まっている。携帯電話でも、パソコンで利用するIMと同じアカウントを利用できるサービスが多いため、自宅ではパソコンで、外出先では携帯電話でIMを使って仲間と常時連絡が取り合えるわけだ。

ちなみに、パソコンではフリーメールアドレスの利用が増えており、iモードメールのような"キャリアの携帯電話専用メールアドレス"を別途取得するようなサービスは、今後は普及しにくいと考えられている。

■海外でiモードを普及させるには?

iモードにはコンテンツ利用に優れている利点はあるものの、それに魅力を感じない利用者にはメリットとしては感じられないのだ。特に携帯電話の利用方法は国によって大きく異なるため、日本のようにだれもが携帯コンテンツを常時利用するという使い方や環境が普及するが否かは未知数だ。

Vodafoneは、これまでのWAPコンテンツサービス"Vodafonelive!"に加え、新たにGoogleやYouTubeを利用できるMobile Internetサービスをイギリスで開始した。すでにHutchisonがヨーロッパを中心に開始している"X-series"と同等のサービスであり、世界最大手のキャリアが携帯専用コンテンツサービスに加え、インターネット上のコンテンツを携帯電話で利用するサービスを開始したことになる。

このように携帯電話で利用するコンテンツも、今後は携帯専用ではなくインターネット上のものを利用する動きが増えていくことが予想される。

海外のiモードを普及させるには、これら海外のトレンドを取り入れていくことも必要になるだろう。またiモードならではのキラーコンテンツの拡充も必要だ。あえてiモードを選びたくなるような、他にはないサービスを増やさなくてはWAPサービスとの差別化は今後ますます難しくなっていくだろう。

なによりも少なすぎる端末ラインナップの拡充は早急に対応する必要がある。せっかくいいサービスを提供しようにも、端末の数が少なければ利用者が選択肢に入れてくれることは難しいといえるだろう。たとえばスマートフォンプラットフォーム上でiモードを動かす、というような大胆な戦略があってこそ、海外でもドコモの反撃は目に見えるものとなるのかもしれない。


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山根康宏
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