ファンドの運用エンジンである「新興国ディスカバリー株式運用戦略」は、2015年9月末の運用開始以来、新興国株式インデックス(MSCIエマージング・マーケット・インデックス<トータルリターン・米ドルベース>)を累積で56.6%上回っており、その平均超過収益は過去10年でプラス2.11%(年率換算)になっている。ティー・ロウ・プライスは、当戦略も含めた新興国株式ファンドの全ファンドに関し、10年間のローリングリターンでインデックスを上回った割合が86%に達しており、業界平均の68%と比べても高い実績を残している。

運用チームは、「ディスカバリー(再発見)」に値する銘柄を発掘するために独自の投資ユニバースを持っている。一般的に新興国株式は高クオリティ銘柄か低クオリティ銘柄の二択しかないと捉えられがちで、投資は一握りの高クオリティ銘柄に集中するという傾向が強い。しかし、一般に低クオリティ銘柄と考えられている銘柄の中には、もともと市場平均並みの成長力を有し、伸び率の加速が期待される銘柄がある。そのような「見過ごされている銘柄」を発掘することで長期的に魅力的なリターンの獲得をめざしている。調査対象銘柄の選定にあたっては、報道機関や投資家の注目が集まる地域や業種とはあえて異なる領域に目を向けるという。

そして、何らかの理由によって株価が下落した銘柄について、売り圧力が一巡し株価が底打ちから横ばいに転じる局面を捉えて投資している。その時点で企業のファンダメンタルズに改善の兆しがあり、バリュエーションの魅力度が高いことなどもチェックする。投資後の対応としては、株価が上昇している場合は「市場の注目が集まっているか」「割高になったか」「投資仮説が変わったか」という点を検証し、いずれかが「Yes」になった場合は売却を検討することにしている。一方で、何らかの要因で2〜3年を経ても株価が上昇しない場合は、バリュートラップに陥っていると判断し売却する。

このようなユニークな投資判断によって、当運用戦略では20カ国を超える投資対象国の上場企業から50〜80銘柄程度に厳選したポートフォリオを組んでいる。2026年5月末時点のポートフォリオを新興国株インデックスと比較すると、国・地域別組入比率では、台湾、中国、韓国、インドなどをアンダーウエイトにし、ブラジル、タイ、香港、メキシコなどをオーバーウエイトにしている。新興国株式インデックスでは、台湾・韓国・中国の3カ国で合計70%程度を占めるが、同ファンドでは約55%を占めるに過ぎず、その他の国・地域に分散している。半導体株人気で株価上昇が目立った台湾や韓国がアンダーウエイトになっているのは逆張りの考え方を反映したものといえる。セクター別では、情報技術、生活必需品、コミュニケーション・サービスなどがアンダーウエイトで、素材、金融、エネルギーなどがオーバーウエイトだ。

組入れ上位銘柄の筆頭は「サムスン電子」だが、ファンドが直近で組み入れたのは2016年1−3月期のことで、当時はスマートフォン需要の鈍化や半導体メモリ市況の悪化などで同社に対する市場の評価が低下していた時期だった。この折に同社が進めていた販売チャネルの合理化によってコスト構造の改善余地があること、メモリ市況の低迷によって業界全体で供給キャパシティの見直しが進み過剰供給の解消が期待できる局面にあることなどを評価して投資を実行。現在は、特にAI関連の需要増加を受けて強みであるNAND型フラッシュメモリが好調で業績の改善傾向が続いているとみて投資を継続している。また、既に全売却した造船会社については、造船業界が供給過剰で不況に陥っていた2018年頃に投資を開始した。その後、新規受注が増加したことで造船業界が好況期に入り市場の注目も高まり、株価上昇で割高にもあり、かつ、再度供給過剰のリスクが高まってきたことで2025年7−9月期に全売却した。