記事のポイント
ワールドカップ決勝はアディダス支援チーム同士の対戦となり、存在感を高めた同社の関連売上は、予想を上回る17億1000万ドル(約2565億円)に達した。
ナイキはテレビとストリーミングに注力した一方、アディダスはソーシャルやオンライン動画を重視し、エンゲージメントと好感度で上回った。
ナイキは検索意向とサッカーキット販売を伸ばしたが、株価は5.8%下落。アディダスは4.7%上昇し、商業成果と市場評価でリードした。


サッカー・ワールドカップ北中米大会がついに閉幕し、大会期間中にオーディエンスの注目を独占しようとしていたブランドのマーケターたちは、これまでに用いたあらゆるチャネル、クリエイティブアセット、そして投じた1ドル1ドルの成果を分析し、自分たちの選択を売上の上積みへと結びつけようと躍起になっている。

決勝はアディダス勢対決 売上でも先行か



とはいえ、彼らの力ではどうにもならなかったこともある。アディダス(Adidas)とナイキ(Nike)は、大会に出場する26チームにスポンサーとして名を連ねてワールドカップに臨んだ。

しかし、ナイキが支援するイングランドとフランスが敗退したことで、決勝は両チームともアディダスがスポンサーを務める「オールストライプ」の一戦となり、またとない好機がアディダスに転がり込んだ

同ブランドはこの機会をとらえ、スポンサー契約を結ぶスター選手のラミン・ヤマルとリオネル・メッシをフィーチャーした「ラ・フィナル(La Final)」と題する動画を公開した。

「ナイキはこの夏もっとも話題を呼んだキャンペーンのひとつを生み出したが、大会を象徴する数々の名場面を支配したのはアディダスだった」と、スポーツマーケティング企業のホライズン・スポーツ・アンド・エクスペリエンシズ(Horizon Sports & Experiences)でシニアバイスプレジデントを務めるケリー・ブラッドリー氏は語る。

「自社のアスリート、チーム、プロダクトがスポーツ最大の舞台に織り込まれると、放送やソーシャルから小売にいたるまで、あらゆるタッチポイントが相乗効果を生みはじめる」。

こうした露出がもたらす無形の便益が、どのように売上へとつながるのかはまだ見えていない。ナイキの直近の四半期決算は6月末に発表されており、アディダスの次回発表は7月末まで待たねばならないため、いまはワールドカップの商業的インパクトについて初期の手がかりに頼るほかない。

ナイキCEOのエリオット・ヒル氏はアナリストに対し、大会の折り返し地点までに、すでに2022年大会の全期間を通じた販売数の2.5倍にのぼるサッカーキットを売り上げたと述べた。

しかしブルームバーグの報道によれば、アディダスがこの米国のライバルをわずかに上回るとみられている。同社のワールドカップ関連売上は17億1000万ドル(約2565億円)に達し、従来予想の11億ドル(約1650億円)を上回っている。

テレビはナイキ、ソーシャルはアディダス



さらに、広告出稿額とソーシャルリスニングの初期推計によれば、オレゴン州ユージーンに本拠を置くシューズメーカーであるナイキに出稿額では上回られたものの、アディダスは異なるメディア戦略をとり、大会中盤の時点でソーシャル上のリターンではより高い成果を上げたという。

本誌Digidayが入手した広告分析企業のアドクラリティ(AdClarity)のデータによれば、地上波テレビにおける支出はナイキがアディダスを上回った。両社ともテレビへの投資は、試合の多くが行われた6月にピークを迎えたが、ナイキの支出が推計2960万ドル(約44億4000万円)だったのに対し、アディダスは合計1990万ドル(約29億8500万円)だった。

広告分析企業のメディアレーダー(MediaRadar)によれば、各ブランドは地上波テレビとストリーミングの広告枠に、合計で少なくとも8億5700万ドル(約1285億5000万円)を投じた。

首位はバンク・オブ・アメリカ(Bank of America)で、支出額は2100万ドル(約31億5000万円)。ベライゾン(Verizon)、モデロ(Modelo)、ホーム・デポ(Home Depot)、ウェルズ・ファーゴ(Wells Fargo)も大きく支出し、大会を通じて米国の地上波広告費は2倍に膨らんだ。

アドクラリティのデータによると、両社の主力キャンペーンやその他のワールドカップ関連マーケティング施策を含めたメディア支出全体では、ナイキが勝った。

これは、アディダスがナイキよりも約1カ月早くワールドカップに向けたキャンペーンを開始したことが一因ではあるが、FIFAの公式スポンサーという立場も影響している。

その枠が精力的なテレビ・動画露出をもたらしたため、アディダスはよりターゲティングしやすい環境で、スター勢ぞろいの広告に火力を集中させる余裕があった。一方でナイキは、より幅広い施策に予算を分散させる道を選んだ。

これは7月17日の記事で指摘した傾向だが、大会全体を通じて当てはまった。

ナイキがストリーミングと従来型テレビ(リニアTV)に注力したのに対し、アディダスはインスタグラムやTikTokといった有料ソーシャルプラットフォーム、そしてYouTubeのようなオンライン動画に力を入れた。

検索と好感度、そして株価の明暗



話題性のあるブランド認知キャンペーンでも、購買意欲を喚起できるようだ。広告テクノロジー企業のヴァーヴ(Verve)によれば、ナイキのブランドキャンペーンは公開後4日間で、特定のサッカー選手の検索を上回る成果を上げ、米国のWeb利用者のあいだで検索意向が42%増加した。

検索インテリジェンス企業のキャプティファイ(Captify)のデータによれば、大会全体を通じて、アディダスもワールドカップ前の基準値を9%上回る、まずまずの検索増加を記録した。ダヴ・メン+ケアやベライゾンといったほかのスポンサーはさらに好調で、前者のダヴ・メン+ケアの場合、検索の伸びは8.49倍に達した。

ソーシャル分析企業のスプラウトソーシャル(Sprout Social)のソーシャルリスニングデータによれば、ブランドへの言及の絶対量では下回ったものの、キャンペーン素材に対するエンゲージメントではアディダスがナイキをわずかに上回った。

さらに重要なのは、そうした言及やエンゲージメントから得られた平均ポジティブ感情の割合が、アディダスの87%に対しナイキは82%だった点である。ドイツのブランドであるアディダスの施策のほうが、より強く刺さったようだ。

さらに、メディア分析企業のメルトウォーター(Meltwater)によれば、アディダスは公式スポンサーのなかでもっとも「一貫して目立った」ブランドであり、パートナーブランドに言及したソーシャル投稿のうち17.1%を占めた。これはマクドナルドの14.4%、コカ・コーラの10.7%を上回る数字だ。

アディダスのマーケターがそのエンゲージメントを収益へと転換できたのかどうかは、7月末に明らかになる。とはいえ現時点ではっきりしているのは、株式市場が両社の成績をどう評価しているかだ。

ナイキの株価は、直近の決算発表時に上昇したにもかかわらず、本稿執筆時点ではワールドカップ開幕時より5.8%低い。一方でアディダスは4.7%上昇している。

[原文:Nike versus Adidas: Which brand won the World Cup?]

Sam Bradley(翻訳、編集:藏西隆介)