フジテレビ内部はいま「優秀な人材が消えた」異常事態に…元経営陣に聞く”フジは復活できますか?”
役者同士のトラブルがお台場で勃発したのは偶然ではない。会議室で決めた「過剰なコンプラ重視」が、現場で事件を起こしているのだ――。
【前編記事】『結局“きっかけはフジテレビ”だった…『夫婦別姓刑事』ハラスメント騒動、真犯人は佐藤二朗でも橋本愛でもなかった』よりつづく。
赤字のシワ寄せ
フジ・メディア・ホールディングス(FMH)が発表した'26年3月期連結決算を見ると、「営業損失87億円」という巨額の赤字に転落している。通期での営業赤字は、'08年の持ち株会社移行後、初めてだ。
フジテレビ単体での営業損失は325億円にのぼり、土台だった広告収入が完全に抜けていることがわかる。「メディア・コンテンツ事業」が308億円の赤字であるのに対し、「都市開発・観光事業」が251億円の黒字を出して支えている状態だ。
当然、赤字のシワ寄せは現場に向かう。フジの番組制作費は274億円だが、日テレは約430億円だ(昨年度上半期)。つまり、日テレの約6割という低予算で番組を作らされていることになる。「かつての1話あたりの制作費が1000万円だとしたら、今は600万円というイメージ」(30代のフジテレビ局員)だという。
当然の話だが、カネがなければ人は去っていく。『夫婦別姓刑事』を立ち上げたプロデューサーだけでなく、ここ一年でフジからは優秀な人材が次々と退社している。
「『ホンマでっか!?TV』の総合演出や『IPPONグランプリ』の総合演出など、この一年で現場のやり手演出家は、先を争うように局を去ってしまいました。最近では、『FNS27時間テレビ』の演出を務めた若手エースなど、6月末に4人の局員が退社しています」(50代のフジテレビ局員)
アナウンサー陣の流出も壊滅的だ。渡邊渚を皮切りに、永島優美、藤本万梨乃、小澤陽子など、2年足らずで11人ものアナウンサーが退社する異常事態となっている。
「ハラスメントに無頓着な幹部が昇格」
この「人材不足と資金難」が、ドラマのキャスティングにも影響を及ぼしている。
「フジはギャラが安いうえにトラブル続きなので、主役級の俳優が簡単にはドラマに出てくれません。特に人気の若手女優は、旬の時期に出演する作品選びを慎重に行うため、評判の悪いフジを嫌がる。
そのため、オファーを受けてくれた若手女優に対してフジは頭が上がりません。裏を返せば、その女優と対等な関係で作品づくりができない不健全な状態になっているのです」(スポーツ紙デスク)
それほど現場は危機に瀕しているというのに、「週刊文春」が第一報を出した7月1日に、局が発表した人事異動は局員をさらに幻滅させた。
「中居氏の性加害トラブルでは、その発端である食事会のセッティングに関わった元編成幹部の行動が問題視されていた。しかし今回の人事で、その局員は現職に留まっていたのです。
そして、彼の『師匠筋』にあたる局員は、管理部門の局長になりました。かつてバラエティの現場で、労働時間を無視した働き方を主導していたことから、当時を知る人間は驚愕しています。管理部門では、他にも現場時代に、ハラスメントに無頓着だった幹部が昇格しているんです」(前出の30代局員)
元経営陣たちに直撃取材を行うと…
人事異動に対する局員の落胆は、それだけではない。社内で配布された「定期人事異動資料」には基本方針として「コーポレート部門を強化」「昇格判断においては、特に『人権尊重・コンプライアンス重視』の観点において厳密に審査」と記載されていたのだ。
「会社は人事や法務などのコーポレート部門に力を入れたと胸を張るばかりで、番組作りをする制作サイドの局員は置き去りにされているように感じます。
その一方で、清水賢治社長は『IP(知的財産)コンテンツを核としたい』と各メディアに発信している。地上波の放送収入だけでは経営が成り立たないのは重々承知しています。ただ、皆さんが有難がるIPを作るのは現場の人間なんですよ。にもかかわらず、経営陣は番組制作の現場を軽視して、コンプラばかり気にしているように思える。その姿勢が、今回の騒動に繋がったのではないでしょうか」(同前)
中居騒動を機に会社を去った、あの元経営陣は古巣の惨状をどう見ているのだろうか。本誌は直撃取材を行った。
自宅から現れた前社長の港浩一氏(74歳)に話を聞くと「お話しすることはありません。申し訳ない」と、質問には耳を傾けるも、同じ答えを繰り返すばかり。そこでフジの今後について問うと、「今の新しいチームが一生懸命やっていると思いますので。期待をしています」と回答。また、優秀な局員が次々と辞めていくことについては「それぞれ事情があり、個人個人があると思うので」と答えた。
元専務でカンテレの社長も務めていた大多亮氏(67歳)にもインタビューを試みた。同氏は「お答えすることはないです」と話す一方、「後輩たちの現状についてはどう思いますか」と聞くと、突如として振り返り「後輩に関しては、応援したい気持ちはあります」と視線を合わせて話した。
フジは復活できるのか…?
そしてフジテレビ元取締役副会長の遠藤龍之介氏(70歳)は、20分にわたって取材に応じてくれた。
――エース級の社員が局外に流出している現状について。
「コンプライアンスとクリエイティブの融和点が難しいと感じています。コンプライアンスを守ったものを作らなければいけない中で、『じゃあ何ができるんだ』という課題を突きつけられている。現場も色々なことを考えられているのかな、と思っています」
――今の経営陣に対してはどんな感想を抱いているのか。
「モノを作っている会社というのは、ある程度アクセルを踏まなければいけない。同時にブレーキも踏まなければいけません。アクセルとブレーキを同時に踏みながら、会社にとってもお客様にとっても快適な速度を探し求めてほしいなと考えております」
――フジは復活できるのか。
「我々が'80〜'00年代に成功したような手法では難しい。IPとか複合的な形でビジネスを拡大していくしかない」
今のフジに魅力を感じない局員が増えている。その結果、人材流出は止まらず、トラブルが起きるという「悪循環」に陥ってしまった。フジの7月第2週の週間平均視聴率(世帯・ゴールデン帯)は、テレビ東京を下回り、民放5位。在りし日のテレビ界の花形局が、復活する日は来るのだろうか。
【こちらも読む】『絶対に怒らせてはいけない織田裕二が佐藤二朗騒動でフジに怒り心頭か「大切な『踊る』に傷がついた」』
「週刊現代」2026年8月3日号より

